見出し画像

ディグ・モードvol.92「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」

クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)は、2012年に英国出身デザイナーのクレイグ・グリーン(Craig Green)が設立したメンズウェア ブランド。最初はファッションに興味がなかったが、学生時代に見たショーのエネルギーに惹きつけられて以来、そのコミュニティの感覚を好んでいる彼は、とくにホラー映画を着想源としながら、ダークネスを作品に落とし込んでいる。


当初ファッションには興味がなかった

2023年春夏コレクション(Photography by Paul Phung)

配管工の父親と看護師の母親のもとに生まれたクレイグは、家具などの物づくりをする人たちに囲まれて育った。彼自身も幼いときから物づくりをしており、最も初期の作品は5歳のころ母に助けてもらいながら作った張り子の滝だ。

クレイグは物づくりが自身の得意なことのように感じたため、美大に行くか何らかの形で芸術を勉強したいと考えた。最初は美術史を学ぶために大学に進もうとしたものの、友人にイギリスで一番良い学校だと勧められたセントラル セント マーチンズ(Central Saint Martins以下、CSM)に進学した。

CSMのファウンデーションコースではさまざまな分野に挑戦することができ、彼はファッションコースを受講している友人グループに出会った。そして、そこに存在する大きなエネルギーにかなり惹きつけられた。そこで学ぶ人たちは朝一番に来て夜は最後に帰っていく人たちで、よくみんなで一緒に出かけ、コミュニティの感覚があったとクレイグは説明する。

2020年秋冬コレクション バックステージ(Photography by Greg Vedrenne)

それまでクレイグはファッションの知識が全くなく、彼の家族もファッションにあまり興味を持っていなかった。「ファッション業界で働くことは私が計画していたことではありませんでした。若い頃は興味がありませんでした。何か創造的なことをしたいと思っていたのですが、すべての道が私をそこに導いてくれました」と彼は『The Guardian』で語っている。

ファウンデーションコースで体感したコミュニティの感覚に魅了されたことで、クレイグはファッションの世界に足を踏み入れて行った。

アウトサイダーのデザイナーから学ぶ

2023年春夏コレクション(Photography by Paul Phung)

学士号を取得するため、彼はCSMのファッション プリント科に応募した。服作りは苦手でも、せめてプリントくらいはできるのではないかと考えたからだ。在学中、クレイグはウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ヘンリック・ヴィブスコフ、ベルンハルト・ウィルヘルムといったデザイナーの存在を知り、彼らからファッションではなんでもあり得ることを教わった。

それらのデザイナーはクレイグにとってある意味アウトサイダーのようで、ファッションに出身は関係ないことを示す存在だった。例えばアレキサンダー・マックイーンはファッションの外から来て、自身の人生からインスピレーションを引き出す方法を持っていた人だと彼は説明している。

当時のロンドンはウィメンズウェアに重点を置いていたため、クレイグはハイファッションがすべて女性のものだと思っていた。よって最初はウィメンズウェアをやろうとしていたが、彼は3年目にメンズウェアへと徐々にシフトしていった。それはクレイグがダイレクトに共感できるものだったため、彼にとって理にかなったことだった。

コミュニティの感覚が大好き

2019年春夏コレクション バックステージ(Photography by Giacomo Cabrini)

彼がファッションやショーに感情的なつながりを持つことができると気づいたのは、学士号を取得したときだ。他の学生から予備チケットをもらい、ガレス ピュー(GARETH PUGH)のショーにこっそり入った。ショーを見たクレイグは、人々が服を着て音楽に合わせて列をなして歩くだけで、それほど多くのエネルギーを生み出せることに興奮したと説明する。

「私がファッションで好きなのは、それがチーム活動であるということです。ひとりではできません。チームが必要で、人々と協力し、人々の周りにいる必要があります。私はアトリエ、チーム、そしてファッションショーの制作におけるコミュニティの感覚が大好きです」と彼は『AnOther Magazine』のインタビューで語っている。

カルチャー、ホラー映画が着想源

2019年秋冬コレクション(Photography by Cleo Glover)

クレイグはカルチャーからインスピレーションを得ており、映画をよく観ている。とくにホラー映画全般が好きな彼の修士号コレクションは、1995年に公開された米国のホラー映画『光る眼(Village of the Damned)』が着想源となった。

ダークネスは、デザイナーにとって常に興味深いものであり、観る映画を選ぶ際、まずホラーセクション全体をすべての選択肢がなくなるまで検討し、それからスリラーに移り、最後に見るのはロマンチックコメディだと彼は説明する。

クレイグ・グリーン(Courtesy of Tom Jamieson)

ホラー映画に惹きつけられている彼は、作業をしているときも怖さを感じることを好んでいる。アトリエでは、あまりにも親しみやすい服を作る場合、どうやって暗くするか、ある意味恐ろしい感じにするかという議論が起こる。

クレイグが惹かれているのは、人々が何を恐ろしいと感じるのかということだ。現実ほど恐ろしいものはないという考えも気に入っており、それは人生における絶え間ない緊張のようなものである。「私は現実、ファンタジー、ホラーの間の相互作用が好きですが、同時にそれを親しみやすくしています」と彼は『HIGHSNOBIETY』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

いつも読んでくださってありがとうございます☺︎いただいたサポートは、記事のクオリティ向上に活用させていただきます。応援よろしくお願いします❦