ディグ・モードvol.79「ルアール(LUAR)」
ルアール(LUAR)は、2017年にファッション インフルエンサーでもあるブルックリン出身のラウル・ロペス(Raul Lopez)がローンチしたファッションブランド。メンタルヘルスの問題から一時休止を経て、2021年に発表したバッグ「アナ(Ana)」がヒットを収めた。後世に受け継がれるものを作りたいという想いがコレクションの原動力となっている。
ファッションを夢見て育つ
ロペスの服に対する興味は、70年代にファッション業界にいた彼の母から来ている。彼女はドミニカ共和国から来た多くの移民と同じように裁縫師をしており、家にはミシンがあった。ファッションに夢を抱いていたロペスは、ゲイのため家族から見ることを禁止されたFashionTVをひそかに見て、クリスチャン ラクロワ(CHRISTIAN LACROIX)のショーに感動を覚えた。
彼は自分の服を作り、ニューヨークのヴォーギング コミュニティと交流し始め、そこでシェーン・オリバー(Shayne Oliver)と出会った。ロペスはファッション工科大学の図書館に忍び込んで本を読み漁り、クリスチャン ラクロワやクロード モンタナ(CLAUDE MONTANA)のような1980年代のショーを偶像化し、画像をスキャンやトレースすることでデザインを研究した。
2005年、シェーン・オリバー(Shayne Oliver)と共にカルト的な人気を誇るニューヨークのレーベル、フッド バイ エアー(HOOD BY AIR以下、HBA)を設立したロペスは、ふたりで協力し、ジェンダーフルイドで包括的な美学を生み出した。ブルックリン出身のマイノリティのクィアとして同じような環境で育ったため、彼にとってシェーンはより深いレベルの理解者だった。
メンタルヘルスの問題で一時休止
2017年にロペスはHBAを去り、彼自身のブランドであるルアールを設立。その名は、彼の名前Raulを逆から綴ったものだ。ちょうどパンデミックが発生した頃、彼はケイマン諸島で休息をとることに決めた。何年も休みがなかった彼は、ハムスターの回し車に乗せられているような気がしていたと当時を振り返っている。気分は落ち込み、メンタルヘルスが悪化していたのだ。
パンデミックは彼が自分の健康を優先しなければならないことに気づいた瞬間だった。「ある意味、パンデミックは実際に休憩を取ることができることを教えてくれたので、贈り物でした。いつでも戻ってくることができ、休息はそれほど深刻なことではありません」とロペスは英国版『VOGUE』のインタビューで語っている。
祖母と母が着想源のバッグがヒット
3シーズンに渡る休止期間を経た2021年、ロペスはニューヨーク ファッション ウィークに復帰。そこで発表した、アナ(Ana)と名付けられた小さなボックス型の革製バッグがヒットし、それはデュア・リパ(Dua Lipa)や トロイ・シヴァン(Troye Sivan) などのセレブリティによって使用されてきた。
アナのインスピレーション源は、ロペスの祖母と母だ。モッズ ハンドルは1950年代、つまり彼の祖母が働いていた時代へのオマージュであり、彼が図書館でファッションを調べているときに出会った形にインスパイアされている。バッグの本体は、彼の母が働いていた80年代と90年代へのオマージュで、ブリーフケースを参考にしたとロペスは説明している。
「母方と父方の祖母はどちらもアナという名前で、ふたりとも素晴らしいスタイルを持っていました。この話をみんなに伝えたかったです」と彼は『Interview Magazine』で語っている。
後世に受け継がれるものを作りたい
ヒットを確信していたロペスは、自身にとって特別な意味を持つアナが完璧であることを時間をかけて確かめた。ショーの後、彼は自身のサイトで予約注文を開始し、15分以内に完売した。2022年11月、彼はアメリカファッション協議会(CFDA)の年間最優秀アクセサリー デザイナー賞を受賞した。
「家宝になり、ヴィトンのバッグやグッチのバッグのようになり、世代から世代へと受け継がれるものを作りたかったのです」とロペスは『Harper's BAZAAR』に語っている。その考えこそが、彼のコレクションの原動力となっている。
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