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ディグ・モードvol.99「チェンペン(CHENPENG)」

チェンペン(CHENPENG)は、2015年に中国出身デザイナーのペン・チェン(Peng Chen)がロンドンで設立したファッションブランド。「ワンサイズ ファッション」というコンセプトに基づいた、性別や体型を問わない作品が特徴。優れたデザインには思想や生命力が重要だと考えるデザイナーは、コレクションを通じてさまざまなストーリーを伝えている。


演劇をきっかけに衣装デザインに興味を持つ

(Photography via Fucking Young!

陶磁器の産地として古くから有名な中国の景徳鎮で生まれたチェンは、大学で演劇サークルに入部し、まずメイクに興味を持った。その後、彼の興味は演劇の衣装デザインに移り、ファッションデザインとメイクに共通点があること、そしてデザイナーは色の使い方について創造的に考える必要があることに気づいた。

そこで、チェンは中国の大学を卒業した後ロンドン芸術大学に留学し、メンズウェア ファッション デザイン テクノロジーの修士号を取得した。彼は卒業コレクションを準備していたとき、プラスサイズやオーバーサイズのオートノミーの分析に多くの時間を費やした。その結果、ワンサイズのパファージャケットのコレクションを完成させた。

世間のダウンジャケットに対する固定観念を変えて、それを別の形で表現したいと考えたチェンは、クリスチャン ディオール、ハロッズ、ギャレス ピューなどの国際的なブランドや小売店で働いた後、ロンドンで自身の名を冠したブランドを設立。2019年のロンドン ファッション ウィークでデビューし、同年にH&Mアワードのファイナリストにも選出された。

性別や体型のないファッション平等主義

2018年秋冬コレクション(Photography via The New York Times

ブランドは「ファッション平等主義(ワンサイズファッション)」を提唱しており、サイズ、性別、肌の色、人種などの区別を曖昧にし、平等を目指している。つまり、体型の異なる人がチェンペンの同じドレス着ることで、それぞれ違った美しさを見せることができることを意味する。

「伝統的に、ハイファッションではヒップとウエストを強調した背が高くてほっそりとした体格が好まれます。しかし、チェンペンを着ている女性は、チェンペンを着ているほかの人と同じように包まれます。ある意味、ユニフォームです。私の作品には性別や体型がありません」と彼は『ODDA Magazine』のインタビューで語っている。

リサーチの結果、象徴的なシルエットが誕生

(Photography via TTT Magazine

ブランドの特徴であるユニークなシルエットは、デザイナーによるリサーチの結果として生まれるものだ。その始まりは、彼が留学中に仲の良い友人に会い、いつも週末にファッションアイテムを探していたころに遡る。友人の体はかなり大きく、チェンの体はかなりスリムだったため、ふたりともフィット感がありファッション性の高い服を見つけるのが難しかった。

そこで、彼はボディサイズの限界を超えられるものをデザインすることにした。そして、実験を重ねた結果、グースダウンジャケットは人体の脂肪の分布を表現するうえで最適な素材であることも判明した。そうして、チェンのデザインにおける象徴的なシルエットは形成されていった。

優れたデザインには思想や生命力が重要

2021年秋冬コレクション(Photography by Leslie Zhang)

チェンは、優れたデザインや作品には思想や生命力が必要であり、コレクションを通じてさまざまなストーリーを伝え、一般の人々にインスピレーションを与え、ファッションの発展に貢献したいと考えている。その方法は、平等主義をベースに面白くてわかりやすい視点を見つけて、自身の気持ちを届けることだ。

たとえば、『The New Land』と名付けられた2021年秋冬コレクションは、太平洋に浮かぶプラスチックごみの島が着想源となった。2017年、米国の非営利団体であるPlastic Oceans Foundationはプラスチックの誕生以来、プラスチック製品の90%がリサイクルされず自然環境に直接流入しており、年間800万トンのプラスチックが海に流れ出ていると指摘した。

チェン・ペン(Courtesy of CHENPENG)

『The New Land』コレクションは、地球環境に取り返しのつかないダメージを与えた後、人類はこの新しい環境に適応しなければならないことを表現している。海洋微生物細胞、油浮き、海藻、波などの要素を抽出し、素材にはPET(プラスチック粒子から作られた環境に優しい糸)が多く用いられた。

また、水やエネルギー資源の過剰な消費を抑えるため、リサイクルグースダウンや環境に優しいデニムを使用。このコレクションは「ファッション平等主義」を継承しており、人間と自然の共存、生態学的バランスの達成を呼びかけ、ファッションと持続可能な開発への理解を促している。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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