ディグ・モードvol.45「フィダン ノブルゾバ(FIDAN NOVRUZOVA)」
フィダン ノブルゾバ(FIDAN NOVRUZOVA)は、2020年にモルドバ拠点のデザイナー、フィダン・ノブルゾバ(Fidan Novruzova)が設立したファッション ブランド。シグネチャーであるスクエア トゥのブーツがセレブに愛用され、注目を集めた。現代的なデザインと伝統的な職人技を融合させながら、ノスタルジアにモダンをもたらす作品を製作している。
シューズで注目を集め、ブランド設立
アゼルバイジャン人の両親のもとに生まれ、モルドバの首都キシナウで育ったフィダンは、物心ついたときからファッションに興味があり、その道に進むことを決心したのは17歳のときだった。ファッション業界の分野を学ぶ5日間のワークショップに参加する機会があり、彼女にとって最も挑戦的であるファッション デザインに最も魅了された。
フィダンはセントラル セント マーチンズ(Central Saint Martins以下、CSM)に進み、ファッション デザインとマーケティングの学位を取得。卒業コレクションで発表したスクエア トゥのシューズが注目を集め、靴をどこで購入できるか知りたいというリクエストが彼女のもとに多数寄せられた。
そこでフィダンは、卒業直後の2020年10月にモルドバの自宅で自身の名を冠したブランドを設立。シューズ カプセルコレクションでデビューを果たした。シューズはブランドのシグネチャになり、これまでベラ・ハディッド(Bella Hadid)やケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)、歌手のセヴダリザ(Sevdaliza)やセレステ(Celeste)などに愛用されている。
最初にブーツのサンプルを製作して以来、デザイナーはステンレス スチール製の新しいヒールやレザーのベースを追加し、さまざまな身長に合わせてシャフトの長さを変更することで、さらに改良を重ねている。
現代的なデザインと伝統的な職人技の融合
モルドバでブランドを立ち上げたことは、フィダンにとって地元で生産する可能性を探るきっかけとなり、熟練した職人とのコラボレーションにつながった。サンプリングと生産の両方で、彼女はオーダーメイドの靴製造を専門とする家族経営の工場と協働している。
靴の特徴であるシワやウェルト ステッチ、染色に至るまで、すべて熟練した職人による手作業だ。フィダンの靴は現代的なデザインと伝統的な職人技が融合されている。「多くの人が靴のブランドだと思っていますが、そう考えるのには十分な理由があります」とデザイナーは『i-D』のインタビューで語っている。
靴のデザインは、60〜70年代における靴の履き方にインスパイアされていると彼女は説明する。当時は1足の靴を何年にもわたって履き続け、次の世代に受け継いでいくことさえあった。これがシワの由来であり、当時の靴が非常に高品質であったからこそ可能だった時間による変化をデザインで再現しているのだ。
モダン ノスタルジアを再定義する
フィダンの美学は、過去からアイデアを取り入れて、自身のバックグラウンドを参照しながら自己流でリミックスし、現代的に感じるようにすることだ。デザインを通して各作品のクオリティやストーリーに焦点を当て、そこにモルドバの職人技が含まれていることがブランドにとって重要である。
そして、現代の懐かしさに新しい意味を与えることも大事な要素だ。デザイナーは定番のシルエットやプロポーションを誇張したり、いじったりすることを好み、作品に実験的なシルエットやカッティングを施している。「私のモットーは常に『モダン ノスタルジアの概念を再定義する』であり、それは今も変わっていません」と彼女は 英国版『VOGUE』で語っている。