ディグ・モードvol.76「ディオティマ(DIOTIMA)」
ディオティマ(DIOTIMA)は、2021年にレイチェル・スコット(Rachel Scott)が設立したニューヨークを拠点とするウィメンズウェア ブランド。それはイタリアの大手ブランドで経験を培ったデザイナーの継続的で進化する試みであり、ジャマイカの職人とのコラボレーションに根ざしている。
ジャマイカと自身の仕事を繋げるために
ジャマイカのキングストンで生まれたレイチェルは、現在フォトグラファーの夫と一緒にニューヨークのブルックリンに住んでいる。パンデミックの最中に自宅で立ち上げたディオティマについて、「私はファッション業界で15年間働いてきましたが、これは常に目標でした」と彼女は『Wallpaper』で語っている。
2000年代初めにジャマイカを離れた彼女は、ニューヨークのコルゲート大学で芸術とフランス哲学を学んだ。大学生のとき、70年代にジャマイカのファッション業界に携わっていた家族の友人のサポートにより、VOGUE U.S.でインターンシップを経験。その際、彼から「あなたはこの素晴らしい機会を利用してジャマイカに戻ってこなければいけません」と言われた。
ジャマイカの若者が機会や教育などの理由で国を離れ、二度と戻ってこないという状況が続いており、優れた能力を持っていても地元の産業やコミュニティに貢献したり、参加したりすることはないという事実を知ったレイチェルは、それ以来、素晴らしい職人技があるジャマイカと自分の仕事を結びつける方法について考え始めた。
イタリアの大手ブランドで経験を培う
ミラノのIstituto Marangoniでファッション デザインの修士号を取得し、イタリアのファッション ブランドであるコスチューム ナショナル(CoSTUME NATIONAL)でキャリアをスタートさせた際も、彼女は自身の仕事をジャマイカと繋げる方法について考えを巡らせていた。彼女はイタリアで大手ファッション ブランドの厳しさを学び、クラフトに対する敬意を感じ取った。
その後、ジェイ メンデル(J.Mendel)で働くために渡米。エリザベス アンド ジェームス(Elizabeth and James)で働いた後、現在は2015年から勤めているレイチェル コーミー(Rachel Comey)でデザイン担当VP(副社長)をしている。
パンデミックの最中にブランド誕生
2020年3月、パンデミックによりサプライ チェーン全体が停止し、世界中の人々が家にいることを余儀なくされた。それはファッション界がどのように運営されているかを考える機会となり、レイチェルは何かをしなければならないと感じた。
パンデミックの間、彼女は二度ジャマイカに戻った。かぎ針編み職人が観光産業向けの工芸品を作っていることを知っていたレイチェルは、自身ができることとして、かぎ針編みの作品づくりを考えついた。現在、彼女はキングストンで 12名の女性と働いており、その中には職業訓練中の若い女性も含まれている。
ジャマイカで製造されていないものは、レイチェルがニューヨークで製造している。彼女はニューヨークから多くのインスピレーションを得ており、服の製造にとどまらず、コラボレーションなどの新しいつながりを生み出している。
重要な知識を持っている素晴らしい人々と関係を築いてきたデザイナーは、コラボレーションの機会をより多く求めていた。「パンデミックのさなかに何かを始めるというのはクレイジーに聞こえるかもしれませんが、今こそそれをするべき時だと思ったのです」と彼女は『Harper's BAZAAR』で語っている。そうして、2021年4月にディオティマは誕生した。
ブランドは誰かのために作るプロジェクトの一部
ブランド名は、シンポジウムでソクラテスに愛とは何かを説明した人物にちなんで名付けられた。そこにはデザイナーの哲学に対する愛が込められており、レイチェルのプロとしての経験と、ジャマイカにつながるものを作りたいという長年の願望の集大成である。
「それは私がまだ知らない、もしくはまだ存在していない誰かのために何かを作るプロジェクトの一部です。私はこの可能性を生み出したいと思っています」と彼女は『FASHIONISTA』のインタビューで語っている。
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