ディグ・モードvol.93「ミンジュ キム(MINJU KIM)」
ミンジュ キム(MINJU KIM)は、2015年に韓国出身デザイナーのキム・ミンジュ(Kim Minju)が設立したソウル拠点のファッションブランド。長年K-POPスターの衣装を手掛けてきた彼女は、2020年初めにNetflixのファッションデザインコンペ番組で初代チャンピオンに輝いた。移り変わるトレンドの中で、ブランドとそれが表すものを守り続けることがデザイナーの目標。
おしゃれとは程遠かった学生時代
韓国光州市で生まれ育ったミンジュは、幼いときから絵を描くのが好きで将来は漫画家になりたいと思っていた。10代の頃は美術教師になることを夢見てニュージーランドに留学したが、卒業後は両親の勧めによりソウルのサムスン芸術デザイン研究所(SADI)でファッションを学び始めた。それがアパレルのキャリアがスタートしたときだった。
当時、おしゃれとは程遠かった彼女は、学校でおしゃれな服を着ているクラスメイトをうらやましく思っており、ファッションが大好きだと自分に自信が持てるまでに長い時間がかかった。「私はファッションデザイナーになるために生まれてきた人間ではありませんでした」とミンジュは『The Korea Times』で語っている。
その後、彼女はベルギーに渡り、アントワープ王立芸術アカデミーでファッションの勉強を続けた。そこでデザイナー兼教授のウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)をはじめとする著名なファッション界の人物たちに囲まれて、デザイナーであることの喜びやファッションへの愛を学んだ。
彼女が3年生のとき担当教師だったウォルターは、ミンジュに彼のようなデザイナーになるきっかけを与えた。「ウォルターは私にとってファッションの父のような存在です。彼は私が自身の作品をつくる方法や、アートとファッションの適切なバランスを見つけるのを助けてくれました」とミンジュは『Hypebae』で語っている。
K-POPアイドルの衣装は新しい挑戦
彼女が学校で習得したアートやデザインをファッションに取り入れる方法は、自身のブランド設立時にも活かされている。ミンジュのデザインは、パステル調の色合いや遊び心あるパターンが特徴のひとつだ。彼女は本や手紙、友人、夢に至るまで、身の回りのあらゆるものからインスピレーションを受けており、コレクションは個人的な日記だと説明している。
デザイナーはいつもコレクションのブレインストーミングで、シーズンのコンセプトを説明するイラストを描くことから始める。次に、さまざまなテクニックを使用してオリジナルの生地を生産する。それがブランドの特徴的なスタイルとなり、他のレーベルとの差別化を可能にしている。
デザイナーはコレクションの発表に加えて、防弾少年団(BTS)やレッド・ベルベット(Red Velvet)などのK-POPグループのステージ衣装を手がけてきた。たとえば、BTSの『DNA』や『I Need You』のワールドツアー衣装をデザインし、Red Velvetの『One of These Nights』のミュージックビデオで衣装を担当した。
ミンジュにとってステージ衣装は普段制作する服とは全く異なり、新しいことへの挑戦だった。それはK-POPグループがステージで見せるほんの一部に過ぎないが、彼らが自身の作品を着てステージに立って踊っているのを見ると、素晴らしいシナジーが生み出されると彼女は説明している。
Netflixのコンペ番組で優勝し知名度アップ
2020年、ミンジュはNetflixのファッションデザインコンペ番組『ネクスト・イン・ファッション(Next in Fashion)』で初代優勝に輝いた。参加の経緯は、彼女の妹にNetflixから電話がかかってきた時点にさかのぼる。彼らは世界中から才能のあるデザイナーを集めており、韓国外での知名度が上がっていたミンジュは、自国でも有名なデザイナーになるためコンペに参加した。
Netflixは韓国で大変人気のストリーミング サービスであることが番組に参加するきっかけになったが、彼女は優勝できるとは思ってもおらず、挑戦中は何も考えられず非常に怖かったと振り返っている。最後の課題は3日で10着の衣服を制作する必要があり、それは彼女にとって大きな挑戦だったものの、結果的に自身で誇りに思えるコレクションを完成させた。
最終コンテストで10点の評価を得て熾烈なレースを勝ち抜いたミンジュは、高級ファッションブランドを取り扱うオンラインショップNet-a-Porterで自身のコレクションをリリースするチャンスとともに、25万ドルの賞金を受け取った。
ブランドを守り続けることが新たな目標
2015年にブランド運営をスタートして以来、4番目に発表したコレクションは購入者が1名だけだったときなど、ミンジュは辞めたいと思ったことが何度もある。しかし、彼女はファッションの教育者になるという究極の夢を持っていて、10回目のコレクションまでは何でもやると自分に約束した。それがデザイナーを突き動かし続けた原動力だ。
現在、コレクションは10回目をはるかに過ぎているが、ミンジュはすぐにコレクション制作を止めるつもりはない。彼女の新たな目標はブランドを継続することだ。デザイナーにとって、一貫してコレクションを発表しつつ、自身のアイデンティティを維持することは困難だが、彼女は自分に正直であり、自分の好きなことをしっかりやるように努めている。
「トレンドは移り変わり、世界は急速に変化しますが、私はミンジュ キムのブランドとそれが表すものを守りたいと思っています」とデザイナーは『Korea JoongAng Daily』で語っている。
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