ディグ・モードvol.64「パスカル(PASKAL)」
パスカル(PASKAL)は、建築学科を卒業したジュリー・パスカル(Julie Paskal)が2013年にウクライナのキエフで設立したブランド。建築から着想を得た、繊細なシルエットとミニマルな形を特徴とする。デザイナーはウクライナ戦争から逃れるために家族と一緒にドイツへ移り、そこで困難に負けず服を作り届けている。
3年ぶりにランウェイに復帰
オデッサで生まれ育ち、キエフで建築を学んだジュリーは、ファッション、音楽、ビデオ クリップ、アートを制作するアーティストだ。彼女にとってファッションとは服を生産することではなく、時間的、社会的、歴史的な文脈や、外界と相互作用する独自の方法を提案することを意味する。ジュリーは自身のスタイルをナチュラル、快適、シックという3つの言葉で表す。
ジュリーはもともとウクライナのキエフにブランドの拠点を置いていたが、ウクライナ戦争から逃れるため家族と一緒にドイツに移り、そこで現在も仕事を続けている。2023年2月、パスカルはロンドン ファッション ウィークにて、「Out of Cocoon」と題した2023年秋冬コレクションで3年ぶりにランウェイにカムバックを果たした。
人生がいかに貴重か
「Out of the Cocoon」コレクションは、生命の美しさと儚さのメタファーとして、蝶がモチーフとなった。それはデザイナーにとって特別なシンボルであり、簡単なプロセスではない変容の縮図である。
「ほとんどの場合、それは非常に残忍ですが、自然で活力に満ちています。儚さの側面は、私たちの世界の独自性を見て大切にしたいという衝動を呼び起こします。空気のような生き物である蝶は、小さな羽ばたきで世界を変えることができます。そして、次の変化のサイクルが始まります」とジュリーは英国版『marie claire』で語っている。
このコレクションの主なメッセージは、人生そのものがいかに貴重かということであり、スローダウンしてより深いレベルを見ることや、永遠と有限性、独創性、循環性との間にある緊張を理解することについて提起している。デザイナーはこれらの対立の先に生まれる生命の美しさ、人生がどれほど貴重で美しいかについて理解してほしいと願っているのだ。
コレクションで戦争に抵抗
3年ぶりに復帰したランウェイは、ウクライナ ファッション ウィークがブリティッシュ ファッション カウンシルおよびロンドン ファッション ウィークと提携して開催した、積極性、機知、セクシュアリティのテーマからインスピレーションを得た共同ショーケースでおこなわれた。
ジュリーはロンドン ファッション ウィークで自分の作品を紹介できることに感謝し、誇りに思っていると説明している。創造に努めるデザイナーにとって、コレクションを作成することは戦争に対する抵抗を意味する。
「今日、私たちはこれまで以上に創造性を必要としています。ロンドン ファッション ウィークのランウェイでのファッション ショーは、私たちの意志の表れでした。それは私たちの強さと回復力の実現です。これは、すべてのウクライナ人の勇気の反映です」とデザイナーは『hypebae』のインタビューで語っている。
彼女は仕事を続け、創造し続けながら、ウクライナの勝利を待ち望んでいる。ジュリーにとってウクライナの戦争は自由と未来のためであり、安心して子育てできることが彼女の願いだ。
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