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ディグ・モードvol.75「ルイス デ ハビエル(LUIS DE JAVIER)」

ルイス デ ハビエル(LUIS DE JAVIER)は、2020年2月にロンドン ファッション ウィークでデビューした、スペイン出身デザイナーのルイス・デ・ハビエル(Luis De Javier)が設立したファッションブランド。クィアネス、ファッション、クラブシーンが交差する場所で作品づくりをおこなうデザイナーは、LGBTQ+コミュニティ全体を中心に据えてエンパワメントしている。

ファッションに触れた場所はゲイタウン

(Photography by Jack Bridgland)

ルイスは、バルセロナから約40分ほどの海沿いにある小さな町に生まれ、保守的な家庭で育った。彼が「スペインのゲイタウン」と呼んでいるその町は、自身が初めてファッションに触れた場所だ。小さなころから常にクリエイティブだったルイスは、音楽番組で流れる2000年代初頭のR&Bのミュージック ビデオをいつも眺めながら大きくなった。

19歳のとき、彼はファッション デザインを学ぶためにバルセロナに移った。家賃の支払いに苦労したため、キャンパスの近くで祖母と暮らした。クラスには既に裁縫のコースを受講していたか、両親がデザイナーまたはアーティストの生徒が多く、ルイスは成績を上げるのが大変だったと振り返っている。

(Photography via SHOWstudio)

祖母と一緒に暮らしていたとき、バルセロナのアンダーグラウンド テクノ シーンに飛び込んだ彼は、ミニスカートを履き化粧をして出かけるようになった。祖母は混乱しルイスのことを心配したが、「今まで社会が教えてくれたルールに従う必要はないことに気づいたのはその時でした」と彼は『THE FACE』で語っている。

卒業後すぐ、デザイナーはロンドンに引っ越し、東ロンドンのクラブ ナイトに没頭した。そこで彼が「親しい友人サークル」と呼んでいる人々に出会い、ルイスは自由を感じた。

作品に政治的メッセージを込めて

2020年秋冬コレクション(Courtesy of Jacob Sztor Photography)

2020年2月に開催されたショーは、パンデミック以前に彼がよく参加していたクラブ ナイトと同じほど多様だった。これはブランドにとって重要な声明である。彼の服は普通を再現するのではなく、オルタナティブを受け入れることを目的としている。「私の服は大胆になりたい人、何も気にしない人のためものです」とデザイナーは『THE FACE』で語っている。

ファッションを勉強し始めたときからずっと、コミュニティにインスピレーションを受けてきたルイスは、自身の服がセックスに関するものと同じくらい社会的および政治的なメッセージに関するものだと指摘する。

(Photography by Jack Bridgland)

「私は常にすべての作品で政治的なメッセージを発信し、自分自身と自分のコミュニティを代表したいと考えています。アンダーグラウンド シーン出身の場合は特に重要なことだと思います。自分の経験を世に出して、実際に人々に感じてもらうのはあなた次第です」と『METAL Magazine』で語っている。

そこには、夜間がいかに危険になったかを体験したルイスと彼の友人の背景がある。ナイトシーンに生きる彼らが最も輝く時間帯が、突然ただの標的にされた瞬間になった。それを取り戻すことが主な出発点となり、そこから女性、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々、LGBTQ+コミュニティ全体を中心に据え、エンパワメントしたいと彼は考えた。

(Photography by Jack Bridgland)

「私は人々に力を与えたいと思っていますが、私の頭の中やコミュニティで何が起こっているか、私が代表したい人々に何が起こっているのかをみんなに見てもらいたいのです」とデザイナーは『METAL Magazine』で語っている。

ルイスが望むことは、全員を快適にすることだ。彼は体に夢中で、そこにさまざまな形を与えるカットを見つけて、誰もが彼の作品を着て力を得られるようにしたいと思っている。その意味で、国境をなくすことがデザイナーの目標だ。

ブランドのDNAを注入したプレタポルテに挑戦

(Photography via Rain Magazine

ルイスは英国の高級小売店であるセルフリッジズ(Selfridges & Co)向けの初のプレタポルテ コレクションを発表し、2022年9月27日からオックスフォード ストリートの旗艦店とオンラインで販売した。

遊び心のあるセックス ポジティブなコレクションは、ビーガン レザー、テーラリング、恥ずかしがらないセクシュアリティというブランドの特徴を象徴したものだ。ジャケット、コルセット、ミニ ドレス、パンツのシリーズがブラック、ホワイト、レッドのシグネチャー カラーで提供され、印象的なイエローとヌードカラーのアイテムも導入された。

(Photography via Rain Magazine

ブランドの精神とメッセージに忠実でありながら、既製服を作ることは新たな挑戦だった。自身のコミュニティから絶え間なくインスピレーションを受けているデザイナーは、当然のことながら、これらの服を作る原動力となっている人々に服を着てもらいたいと願っている。

「一日の終わりに私に喜びをもたらしてくれるのは、実際にそれらの人々に服を着せ、美しく自由に感じさせることです。このコレクションは、ブランドのDNAを取り入れ、それを非常に簡単で着用しやすいアイテムに変換することを目的としていました」とデザイナーは『Rain Magazine』で語っている。

Pornhubの支援でNYFWデビュー

2023年秋冬コレクション(Photography by Julio Feroz/ INDIGITAL.TV)

2023年2月、アダルト エンターテイメント企業ポルノハブ(Pornhub)のサポートによって、ルイス デ ハビエルは初めてニューヨーク ファッションウィークでショーを開催した。ショーの最前列には、アレックス・クライン(Alex Klein)を含むポルノハブの代表者が座った。

同社はルイスのデザインを称賛し、「性的表現の自由と多様性という私たちの共通の価値観を具現化しており、この挑発的な新しいコレクション全体で強調しています」と声明で述べている。彼らはまた、今後のPornhubアワードの公式デザイナーとしてルイスを指名した。

ルイス・デ・ハビエル(Photography via SHOWstudio

バルセロナのクィアなナイトライフ シーンでデザインの感性を形成したルイスは、ナイトライフの先駆者であるニューヨークに心から歓迎された。そのときについて「誰もが長年語り続けてきたアメリカンドリームを手に入れようという感じでした」とデザイナーは『PAPER』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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