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如月の月隠り

たまたま仕事を早く切り上げられて帰宅して

息子たちを風呂に入れ、さあこれから家族4人で晩飯を食べようかとしていたとき

弟からの突然の電話

滅多に来ない電話の相手に少し嫌な予感がよぎる

『お父さんが倒れた』

『結構、やばいかも』

『今から手術で...成功しても意識は戻らない可能性が高い』

そう言われた僕はとりあえず電話を切り

これからの時間のフライトを調べた

時間がまだ18時を過ぎたあたりだったので家から空港まで1時間弱、最終のフライトに急げば間に合うタイミングだったので急いでチケットを取る

流行りのウイルスのおかげで空席があってよかった

オレは本当に運がいい

とにかく必要最低限の荷物をリュックに詰めて家族に後を任せて1人で家を飛び出した

「大丈夫。大丈夫。」

自分に言い聞かせながら電車に揺られる

その時間の羽田行きの電車はガラガラで周りに人も少なかった

父ももちろん心配だったが1番の心配は母だった

メンタルが本当に弱い母は父方の祖父が他界した際も直後に寝込んでしまうほどショックを受けやすい性格だ

長年連れ添った父がこのような状況に陥り、1番ショックを受け、パニックになり動揺を隠せないのが母だ

幸い冷静な弟がそばにいてくれていたので心強かった

そうこう考えているうちに羽田に着く

フライトの時間も迫っていたので急ぎ足で保安検査場を抜ける

ゆっくりする間もなく機内に乗り込み

手帳に『大丈夫。大丈夫。大丈夫。』

とりあえず書き込んだ

那覇空港に着くと弟夫婦の迎えの車に乗り病院へ直行した

1言えば10わかってくれる弟で本当に素晴らしい

ICUに入ると変わり果てた姿の父がいた

手術を終え、頭だけでなく顔じゅうに包帯でぐるぐる巻きの父

顔は腫れ上がり、たくさんの管で繋がれてまるで別人のようだった

顔を覗き込んだ時に感じたことを率直に伝えると

『死んでる』

これが僕が再会して初めに抱いた感情だった

たくさんの情報が同時に脳内に飛んでくる

僕の脳内で蜂がぐるぐるぐるぐる飛び回っているかのようだ

ICUにある父と繋がる機械たちの音がBGMに鳴り響く

どう声をかけていいのかわからない

なぜなら父はもうすでに死んでいると思ったから

その後主治医の方から説明を受けた

脳内出血により脳全体に血が広がり脳が腫れ上がってしまっていたこと

手術によってその血液を取り除いたが脳の腫れはおさまらないこと

いわゆる意識は戻らず『脳死』状態だということ

心臓は自発的に動いているが人工呼吸器による呼吸をしていること

血圧も昇圧剤により安定させていること

父は人工透析をしていたのでこの状態で透析は出来ないのでゆくゆくは心臓に負担もかかり近い将来止まるであろうこと

隣で説明を聞く母にはあまりにも理解しがたく重すぎるカウンターパンチだったのと冷静でいなければいけないと思う自分の心とは逆に身体は素直で動揺を隠しきれなかった

人はこういう時も身体が熱くなることを知った

上着を脱ぎ、深く息を吸い、吐いた

もう一度頭をクリアにして説明の続きを聞いた

今後の処置についての説明そもそも

延命処置を取るか

心臓マッサージ

電気ショック

どちらもきっと父は望まない

僕も望まない

そもそも父はもう死んでるのだから

心臓は自発的に動いてるけど

脳死に関しては様々な議論があるけれど

脳死はもう『生かされてる』状態に近い気がする

受け入れたくないけど受け入れなければいけない

人生にはそんな時が幾度とある

僕も37年間生きてきた人間なのである程度の経験は重ねてきたけれど親を失うということは初めてだったので簡単に受け入れることは難しかったんだと思う

実際未だに受け入れられているのか謎である

いや、受け入れられてないんだと思う

受け入れたくないんだと思う

きっと母はその何百倍、何千倍、何万倍もそうなんだと思う

その証拠に母は父が亡くなって2ヶ月が経つ今も父の遺影と共にドライブをしている

2人で。

母の中で父はしっかりと生きている

それがきっと夫婦という絆なんだと思う

人の死は2回あると言われているけどまさにその言葉通り

僕らの中にしっかりと父は生きている

きっと今までよりもずっと近くにいる

おそらく父の想いや考えていることは母よりも僕が1番わかってるんじゃないかって思う

血で繋がってるってそういうことなんだと思う

だから母の辛さも父よりも僕の方がわかってるんじゃないかな

そして本当は母のそばにいてあげられるのがベストだとも思うけど

それができないので代わりにそれをやってくれている弟と弟のお嫁さんにも本当に感謝しています。

ありがとう。

そして妻の千絵と2人の息子、桐真と遥斗がそばにいてくれて僕は本当に心強いです。

ありがとう。

そして、改めてですが父の葬儀に来てくださった方々、来れなかったけど父の死を悲しんでくれた方々、僕ら家族を支えてくれた方々に感謝を申し上げます。

本当にありがとうございました。

これからもよろしくお願いいたします。

全ての人にたくさんのHappyが訪れますように。

          2021.2.28〜5.5     TAKA

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