aftersun
aftersunを観た。
観ながらびっくりしてしまった。
何も起きないのだから。
これだけ期待されている映画ということは、
きっと涙してしまうようなイベントが起こるんだろう。
出てくるのが父娘だけということは、きっと家庭に課題があるのかもしれない。
…と、勝手に妄想を広げに広げた結果、びっくりした。
ソフィがプールや海に入るシーンになれば、
溺れたり 波に攫われるのではないかと どきどきして
ソフィと新しいひととの出会いがあれば、
何か( いい方にもわるい方にも )発展するのではと どきどきして
ソフィが夜道を1人歩けば、
わるい人間が出てくるのではないかと どきどきして。
でも全部のどきどき予想は、全部外れて、ただ過ぎた。
そこにあったのは、ただ、父娘のある夏の記憶。
「思ってたのと違うかも」と、考えていた矢先
空港での別れのシーン。
理由はよくわからないけど、離れて暮らしている父娘が、夏のある時間をトルコで楽しく過ごして、
その時間が終わっていく瞬間
ソフィが、キャビンアテンダントに付き添われて奥に奥に進んでいく姿に、昔の自分を見た。
まだ7歳の私が、父の故郷へひとりで旅をしたときのことを。
楽しみだった、もちろん
帰る日だって分かっている
それでも、遠くなる家族の見送る姿に、
心臓が潰れそうになった
まだその感覚を言葉にできなくて、
ただ、心配はさせたくないから
楽しそうに見えるように、手を大きく振っていたこと。
涙が溢れないように、ツンとした鼻の奥を無視したこと。
当時のわたしが戻ってきて、そのまま涙になった
思えば、映画の中では父の顔がはっきりとしない。
そして、私のどきどき予想のように、ソフィの姿は少し私たちに不安をくれる。
そのおかげもあって、観ている側は、父であるカラムの追体験をすることになるようだ。
それなのに、知らぬ間に、私の思い出の隣で寄り添っていた。
誰にでもある思い出ではないかもしれない。
それでも、きっと、ひとつの記憶を呼び起こしてくれる、そんな映画。
2023.6
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