indigo la End「風詠む季節」歌詞考察
『風詠む季節』はピアノをメインにしたしっとりめの曲調なので、一瞬、しんみり系バラードのようにも聴こえますが、歌詞に着目してみると、たまらないほど幸せな男女の瞬間を捉えているように思えます。今回は、イントロからわたしの心を掴んで離さない大好きなこの曲を、自分なりに考察していきます!
『風詠む季節』は、とある恋人のお話です。便宜上、2人の登場人物を “彼”・“彼女”と書いていきます。
この曲は一貫して“彼”目線です。手紙を書いたあの日とは、彼が彼女に気持ちを伝えるため、初めて想いを綴った日のこと。彼が彼女へ手紙を渡したことにより、ふたりは親密な関係になったのでしょう。
今日がくるなんて思ってなかった、とありますが、この曲ではそんな今日のことが以降も大切に紡がれてゆきます。
これまで長い交際をあまり経験してこなかった彼ですが、君=彼女は、どんな季節も綺麗にすり抜けていきました。
わたしはこの男女を思うと、“不器用だけど仲良しなふたり”が頭に浮かびます。想いを素直に伝えることは苦手だけれど、お互いふざけるのだけは得意で、一緒にいると楽しくてたまらない、そんなふたりです。居心地の良いふたりは、当たり前のように長い時間をともに過ごし、たくさんの季節を重ねてきました。
いつかのふたりの仲睦まじいやり取りが浮かびます。ねえ私のどこが好きなの?とふざけて聞かれたときに、んー横顔。と即答してしまい、もう!中身は?!と肩をぶっ叩かれる…みたいな。(完全にわたしの妄想すぎる)
きっと彼が彼女の横顔を好きなのは本当のことなのですが、それ以上にそんなとこ(冗談に必死になる姿)も好きなのです。もう超大好きなのです!!
ですがロマンティックが似合うふたりではないので、彼はそんな気恥ずかしいセリフを言えるわけもなく、風に渡した=心の中で気持ちを呟いて、想いを風に託しました。
そんな過去の回想があり、サビでは今日のことが歌われます。
もう離さないなんてかっこつけたようなことは言わないけど離れないでね。
これだけ長く一緒にいるふたりですから、彼らの間にはなにかしらの亀裂が入ったり、一度は心が離れてしまった時期もあったのかもしれません。ですが、いつもより真面目な彼は、今日、彼女に大切な想いを伝えようと試みます。
1番の冒頭では、手紙と直接的に書かれていたのに対し、2番ではアナログな想いの伝え方へと変わっています。ここでわたしは時の流れを感じました。初めて手紙を書いたあの日(過去)に対して今日は、手紙=完全なアナログとなった現在なのです。
繰り返しのサビ。選ぶ権利は僕にないとか冗談も言わないでね、という歌詞からも、2人が普段どれほど仲良く戯れ合っているのかがうかがえます。
1番の歌詞で、彼が声に出せなかった言葉を風と表現していたように、この風も彼の想いをあらわしています。
(彼女の)心の隙間に吹き込んだ僕の風
=手紙に託した彼の想い
彼はあの日と同じように、自分の気持ちを音(声)のない手紙にのせて、目の前にいる彼女に渡しました。
そして彼女が手紙を詠みます。彼女の心の隙間に彼の言葉(風)が吹き込まれていく瞬間です。
それはきっと、婚約ないし、これからもずっと一緒にいようと永遠を誓う約束なのではないでしょうか。
彼はきっと、彼女なら頷いてくれるだろうと信じてこの手紙を書きました。でも、想像通りのはずなのに涙が止まらなくなった。
彼は嬉しくて涙が止まりません。そしてまた、彼女も嬉し涙を流します。
キラリと光る溢れた温度=彼女の涙
彼が彼女の頬に手を当てて、その涙を掬い上げる姿が想像できます。
いつもはそんな言葉、言わないはずの僕(彼)は、「もう離さない」と、まっすぐに彼女へ伝えます。今日は変だな、幸せだなと、今この瞬間の幸福を噛み締めながら、いつもより真面目で良かったと思うのです。
繰り返し挿入されるこの歌詞からも、ふたりの強固な愛が感じられますね。
風=彼の想い
がこの曲ではポイントです。
『風詠む季節』が示す季節とは、彼の想いを彼女が詠んで受け止めた、ふたりの新たな始まりの季節だと思いました。幾度も季節を重ねたふたりは、風詠む季節を経て、永遠を誓い合ったのではないでしょうか。
結婚式の定番になるような曲調では全くないところが、indigo la Endらしくて大好きです。わたしはこの曲を夏や秋の涼しめな夜、冬の朝によく聴いています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました(⸝ᵕᴗᵕ⸝⸝)