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【実際に見た夢の記録】理不尽な孤独-01-
夢を見た。
最悪の気分だ。嫌な夢だった。
夢に出てきた人物は、わたしがかつて全身全霊の愛を注いでも構わないと強く感じた唯一の男だった。
そう強く想える相手は、もしかしたら今後一切現れないかもな、なんて当時は思ったほどだ。
彼とはたくさんの思い出がある。
こんなに長い時間を過ごして、ひとりの時間が欲しいとは一切思わなかった。ずっと一緒に居たかった。彼も常時そう言ってくれた。
そんな彼は突然、わたしの目の前から姿を消した。
絶望的な失踪だった。
しかし、そこまで大げさにする必要はない。
わたしにだって好きな男の1人や2人、他にも出来るはずだろう。
しかし実際のところ、あの男がわたしの唯一無二になってしまっている。
時間は朝の8:50。スマホの充電は60パーセント。
部屋はエアコンがよく効いていて、あんな夢さえ見ていなければ爽やかな目覚めだったと思う。
気だるい気持ちに比例して重くなった右手に、型の古いスマホが収まっている。
わたしは夢の中で、クイーンサイズ程の大きいベッドに仰向けになっていた。
人の気配を感じる。
首だけを横に向けると、見知らぬ女が同じく仰向けで眠っていた。
(誰?)
不思議に見つめていると、ゆっくりとその女に影がかかる。
その影の元を辿ると、馴染みのある男が女を組み敷いていた。
滑らかで透き通る白肌。すべてを委ねたくなる逞しい体躯。そして僅かに幼さの残る、整った顔。
わたしはそのすべてに見慣れていた。
(あいつだ。懐かしいな)
夢であれど久方ぶりに会えたことに喜びを感じた。
5年程、経ったのかな。
呑気に思い出に浸っていると、彼はその女と営みをはじめた。
女はまだ眠っている。彼はそんな彼女を真っすぐに見つめている。
システマチックに行われるその行為に、わたしは特段嫌な気持ちは覚えていなかった。
だってキスをするわけでもなければ、愛の言葉を囁き合っているわけでもない。
わたしは無条件に、次は自分の番だと信じていた。
眠っている彼女とは違い、わたしは目が覚めている。
あの時のようにまた、わたしたちは愛し合える。
「○○、」
彼の手がわたしに触れた。
どうやら女との営みは終わったらしい。
わたしの名前を呼ぶ声が優しい。耳のすぐ近くに彼の呼吸を感じる。
(やっと、わたしに触れてくれた。)
心穏やかになった刹那、シーンは一変した。
【 続く 】