眠れない門出
半年以上あった期間が一瞬にして過ぎ去った。あと114日からカウントし始めた食事記録もあっという間にあと1日となった。体重はほとんど変わらなかったので、ただ食事の写真を撮る毎日が過ぎて行った。
ようやくプロポーズしてもらった後すぐに入籍日を決めた。そこから逆算して行って、各所挨拶、両家顔合わせ。決めた入籍日当日も仕事が忙しく、時間外受付に婚姻届を提出した。この間約3ヶ月。
そして、結婚式場を決めてから今日までが約半年。大人になると、毎日が一瞬で終わってしまうことを痛感しているが、これほどまでに時間が過ぎ去るのを早く感じることは、後にも先にもないだろうな。
門出の日だね。そう声をかけてもらって楽しみ半分緊張半分で前夜からなかなか寝付けない。もう12時を回っている。目を腫らしてはいけないとわかっているのに、母への手紙だけ書き直そうか、とスマホのメモに打ち込み始めたら涙が止まらなくなった。
もうキリがないから本を読もう、と「世界の適切な保存」を手に取る。前夜、なかなか眠れなかったこと、適切に保存できたらいいのに、と永井玲衣になりきる。入念にケアをしてきたにもかかわらず、前日になって背中にでっかいニキビができてしまったことはできることなら削除してほしい。
今日までたくさんのことを頑張ってきた。結婚式のテーマからクロスの色まで考えることは大小様々。自分への投資。髪は生まれてから一番長く伸ばしたし、やったことのない塩分制限もした。DIYグッズについてはもっとできることや、こだわりたいところもあったかもしれないが、そういうのには目を瞑って、自分の後悔しない範囲で準備してきたつもりだ。
明日はよろしくお願いします、と友人や親族に連絡をした。自分が主役である式に来てもらうなんて恐れ多いと感じていたけれど、いい式になるといいね、楽しんでね、と言ってもらうとこの人たちに来てもらえることが何より嬉しい。
そんなことも考えながら眠りについたが、やはり深く眠れなかった。時計は4時27分。途中で眠くなるわけにもいかないが、新幹線の移動中に寝ればいいかと体を起こした。
そんな朝である。あいにくの天気のようだが門出の日。入籍済みだけど、そう言ってくれた人がいたから。
溢れる思いを手紙に込め切ることはできなかったが、なんとか自分の力で読み終えたい。そんなことを考えていると、もう式が終わる頃になっているんだろう。
先のことを考えるほど、時はあっという間にすぎる。先のことを考えていなくても、時はイタズラにすぎていく。儚い。
限られた時を、大切に過ごしたい。
思いをここに書き残し、結婚式を終えてから4日が経った。もうとうの昔のことのように感じる。
父母弟、祖父祖母叔父叔母従兄弟たち。
そして数少ない友人たち。
いい式だったね、と声をかけてくれた人がたくさんいた。これ以上嬉しいことはない。
余韻に浸りながら日常へとじわりじんわり戻っていく。