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uranus_xii_jp
友情小説|男性同士
息を殺し、生きてきた。暗闇なんか吹き飛ばすくらい。
題:「おまえに捧げる」
十紋の、こころの奥底に眠っている、感情をノートに書きなぐっていた。十紋が、一心不乱に描く、その様子を、道生は、見守っていた。十紋の、ノートには、ただただ「辛い」、「苦しい」、「助けて」、「生きたい」、と、たくさんの文字を連ねていた。十紋の、こころのなかは、複雑で出来ており、ゆっくりと足音を立てずに、道生は、そっと、十紋の、右肩をチョンチョンとさすった。十紋は「?え、何?」と、云った感覚で、道生を、見つめた。道生は、ただ「助けにきた」と、十紋に、伝えた。十紋は、苦笑いしながら「え?別に来てほしいって、言ってないけど」と。道生は、「十紋は、ひとりじゃないよ」と、十紋の、書きなぐっているノートに使う、ボールペンを引き抜いて「十紋!ハッキリ言わせて貰うよ。十紋のことを、心配してるひとが、直ぐ傍に居るよ」と、十紋に、伝えた瞬間「俺からも、ひとつ。おまえのことも、心配してるよ?あの子」道生は、あっけらかんとしながら、お互いに笑いあった。ふたりは「(ああ、なるほどね)」と、顔を見合わせながら、笑った。十紋も、道生も、ひとりじゃなく、そっと、道端には、小さな花が咲いていた。生きてきたのは、おまえのため。
〆 富士喜想介 作 12月3日(火)