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友情小説|男性同士

息を殺し、生きてきた。暗闇なんか吹き飛ばすくらい。

題:「おまえに捧げる」

十紋ジュウジの、こころの奥底に眠っている、感情をノートに書きなぐっていた。十紋ジュウジが、一心不乱に描く、その様子を、道生ミチタカは、見守っていた。十紋ジュウジの、ノートには、ただただ「辛い」、「苦しい」、「助けて」、「生きたい」、と、たくさんの文字を連ねていた。十紋ジュウジの、こころのなかは、複雑で出来ており、ゆっくりと足音を立てずに、道生ミチタカは、そっと、十紋ジュウジの、右肩をチョンチョンとさすった。十紋ジュウジは「?え、何?」と、云った感覚で、道生ミチタカを、見つめた。道生ミチタカは、ただ「助けにきた」と、十紋ジュウジに、伝えた。十紋ジュウジは、苦笑いしながら「え?別に来てほしいって、言ってないけど」と。道生ミチタカは、「十紋ジュウジは、ひとりじゃないよ」と、十紋ジュウジの、書きなぐっているノートに使う、ボールペンを引き抜いて「十紋ジュウジ!ハッキリ言わせて貰うよ。十紋ジュウジのことを、心配してるひとが、直ぐ傍に居るよ」と、十紋ジュウジに、伝えた瞬間「俺からも、ひとつ。おまえのことも、心配してるよ?あの子」道生ミチタカは、あっけらかんとしながら、お互いに笑いあった。ふたりは「(ああ、なるほどね)」と、顔を見合わせながら、笑った。十紋ジュウジも、道生ミチタカも、ひとりじゃなく、そっと、道端には、小さな花が咲いていた。生きてきたのは、おまえのため。

富士喜想介フジキソウスケ 作 12月3日(火)

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