起きてる時に見た夢

元彼とラーメンを食べに行った。
願いに願ったあの約束を叶いに行った。

彼とのデートで着たかったカーディガンを脱いで、今できる精一杯の頑張ったメイクを落として、友達と練習してやっと巻けるようになった巻き髪を洗い流して、彼に見せたかったカラコンを取った。

鏡に映った自分はまるで別人で。
今日のあの時間は夢だったんじゃないかと思う。

今日はあいにくの雨。
でも逆に雨でよかった。
ひとつの傘に2人で入って自然と距離が近くなった。
いつも下がってしまう両まつ毛も下がらず、メイクもそこまで落ちず、雨なのに巻きも取れずで今日だけは神様が味方してくれたような気がする。

あの日々に戻ったようだった。
いや、それ以上に楽しかった。

でも恋人と友達の境界線がわからなくなった。
友達ってどこまでしていい?
グレーゾーンだらけすぎる。
わからなくなっていたところに友達からLINE。
"都合のいい関係になるなよ"
"彼の二番手。彼が寂しい時だけかまう関係。恋人みたいなことしてるけど付き合ってない状態。"
ほんとにこのまんま返信が来た。
ウィキペディアかよ、と思わず笑った。
そこで現実に引き戻された。
そうだった、この人もう彼氏じゃないんだった。

周りから見たらきっとカップルに見えただろう。
あの近さで楽しそうに笑い合う男女。
本当は違うのに。

こうやって二人で出かけられるのも時間制限付き。
先輩と少しでもいい方向に進めば私はお払い箱。
そんなのクソすぎて、あまりにも酷で、その後あまり上手く笑えなかった。


これでも恋人じゃない、友達なんだと言い聞かせるように自分なりに変化を作った。

初めてネイルチップをつけて彼と会った。
彼には相手にケガさせるかもしれないから今までつけなかったと言ったが一番の理由は違う。
なんとなく爪が長いと手を繋ぎにくいかなと思って今までネイルチップをつけて会わなかった。
もう手なんか繋げないから今日はつけてみた。
これがほんとの理由。

言葉遣いもあんまり意識しなかった。
あの頃よりテキトーでわがままな素振りも見せた。
もう友達なんだからいいだろうと思ってそのままのほぼ素を出した。
カッコつかないのに変にカッコつけて気遣いまくったあの頃より断然楽しくて楽だった。
もっとラフにいけばよかったな。

"かわいい"と言われて本当は心臓がバクバク、泣き出しそうなくらい嬉しかった。
今までは"可愛くないよ"と素直に照れた。
けど今日は"ありがとう"とだけ言って軽くあしらった。
だってきっと犬を見てかわいーと言ってるような感覚で言ってると思ったから。
一番は先輩でしょ?どうせその可愛いは二番以降。
そんな可愛いはいらない。

あまりに近い距離に顔が真っ赤になりそうだった。
電車に乗る時、傘をさす時、エスカレーター・エレベーターに乗る時。
一瞬キスされるんじゃないかと思うくらい近い時があった。
何も顔に出ていませんように。
もう恋人じゃないんだから、そんなことされるはずがないのに。
こっちだけ恥ずかしがってバカみたい。

ばいばいする時もすぐに別れた。
別れが惜しくて、ずっと隣にいたくて仕方なかった。
それは今も同じ。
でも違う、もう恋人じゃない。
だからすぐに別れて振り向かなかった。
振り向いたら背中を追っかけそうな気がしたから。

今の小さな違いが、大きな違いになって、本当に何も思わなくなりますように。

ふとした瞬間に彼を見ると彼も私を見ていた。
そんなに何度も見つめてこないで。
勘違いしそうになるから。
戻れるんじゃないかと無駄な期待をするから。


友達からのLINEで一気に現実に引き戻された私はそのまま彼と帰りの電車に乗った。
寝ないとか言いながら秒で寝てしまった彼を見つめながら悶々と考えてしまった。
未練?情?
もうわからなくなってしまった。
頭を撫でたい、そう何度も願った。
降りる駅に着く直前で我慢していたのに撫でてしまった。
何度も触れたかった髪。
涙を堪えるなんて無理だった。
こっそりとしか撫でられない関係が苦しかった。
泣いたことが、頭を撫でたことが、どうかバレていませんように。


寝る前に書き殴ってそのまま寝落ちた。
起きてやっぱ夢かと思った。
でも久しぶりに履いたヒールで歩き回った代償の激痛と机に置きっぱの荷物が夢じゃないと言った。
朝からまた泣いた。
最近涙腺が弱くて困る。

いいなと思ったら応援しよう!