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Abde

〜モロッコの新時代を担うカタルーニャ育ちの9番〜

Profile 

Name: Abdellah Raihani Ennaou
Japanese notation: アブデラフ・ライハニ・エンナウ
Category: Juvenil A
Country: 🇲🇦/🇪🇸
National team: Morocco U-20
Position: CF
Date of birth: 2004/2/3 (19)
Foot: Right
Height: 187cm

バルセロナで生まれ育ったU-20モロッコ代表FWアブデラフ・ライハニ。

FIFAワールドカップカタール2022で、アフリカ勢史上初となるベスト4進出を果たしたモロッコ。かつて支配されていたポルトガルや、領土問題を抱えるスペインといった因縁のある強豪国を薙ぎ倒したことには、世界中のモロッコ人コミュニティーが歓喜したことだろう。リオネル・メッシが悲願のワールドカップを掲げるも、キリアン・エンバペが決勝でハットトリックという離れ業をやってのけ、新時代の到来を予感させる大会でもあった。モロッコの躍進もその一つだった。登録メンバー26人中半数以上の14人が、ヨーロッパで生まれ育った選手だったのだ。そしてアトレティコのカンテラにも、この波に乗るであろう、ティーンエージャーが何人かいる。その1人が、一貫して世代別モロッコ代表を選択している、アブデラフ・ライハニだ。「アブデ」の愛称で親しまれる187cmの長身FWは、アフリカンらしい身体能力と、スペイン産のテクニックを併せ持つハイブリッドなプレイヤーだ。

生い立ち

2017年10月に独立宣言を出すなど、スペインからの独立運動が盛んなことで有名なカタルーニャ州。アブデ・ライハニは、ローマ史上最強の敵と語り継がれるハンニバル・バルカを輩出したカルタゴの名家、バルカ家に由来する州都バルセロナでモロッコ人の両親の下に生まれた。
初期キャリアは不明だが、15歳だった2019年に現在はテルセーラ・ディビシオン(スペイン5部)に所属している、UEサン・アンドレウのカンテラからカタルーニャ州でトップクラスの育成力を誇る、CFダムのカンテラに移籍した。16歳でスペインのユース年代で最高の舞台であるDH3に飛び級でデビューし、U-17モロッコ代表の一員として、U-17アフリカネーションズカップに出場するなど、目覚ましい活躍を見せ頭角を表した。バルセロナ生まれのためスペインを代表する権利も持っているが、両親の母国であるモロッコの世代別代表を選択している。17歳までバルセロナで育ったアブデは2021年9月にアトレティコ・マドリーに移籍。主に同い年の選手で構成されるマドリレーニョ・フベニールAに登録された。

187cmのサイズとスペイン仕込みのテクニックが融合したライハニ。「アブデ」の愛称を持つ。

ベンチからの下剋上

加入1年目の2021/2022シーズンはアブデにとって辛い時間だっただろう。2世代飛び級にもかかわらずU-20モロッコ代表の常連だったが、アトレティコではベンチが定位置だった。トップチームのトレーニングに度々参加しており、クラブの評価の高さは伺えたが、出場機会も少なく、1年間の全公式戦出場時間は約10試合半の950分だった。それでも母国凱旋となったモハメド6世トーナメントでは、決勝で退場となったものの、3試合連続ゴールを記録し、3G1Aの活躍でチームを優勝に導いた。2022年4月に行われたU-19スペイン代表とのフレンドリーマッチでは、途中出場ながら自ら獲得したPKを蹴り込み、6月〜7月にかけて行われた地中海競技大会でも2ゴールを挙げ、フランスやスペインを押し退け、優勝したモロッコの立役者となるなど、代表の舞台では、クラブでの鬱憤を晴らすかのような活躍で、才能の片鱗を見せていた。

2022/2023シーズン、無事フベニールAに昇格したアブデだったが、前年飛び級でフベニールAでプレーしたU-19スペイン代表の9番マルコス・デニアと同じく、飛び級でプレーし、クラブ史上初のUEFAユースリーグ準決勝進出に貢献したU-18スペイン代表FWサリム・エル・ジェバリの壁は高く、U-19スペイン代表FWアドリアン・ニーニョや、2世代飛び級でフベニールAに昇格した「NEXTフェルナンド・トーレス」と謳われるU-17スペイン代表FWパコ・エステバンといった、強力なライバルとの競争が待ち受け、出場機会は限られると思われていた。しかし、サリムが怪我で出遅れた上に、インテリオールにコンバートされ、マルコス・デニアが不調に陥った影響で回ってきたワンチャンスをものにした。UEFAユースリーグGS第1戦FCポルト戦で、デニアとの交代でピッチに立つと惜しくも得点には至らなかったが、出色の活躍を披露した。すると、3日後に行われたDH5ヘタフェ戦では値千金の決勝点をマーク。以降はニーニョの相棒に定着した。DH5では、17ゴールを挙げ得点ランキングで3位につけ、UEFAユースリーグでも6試合3G2Aの活躍を披露しており、ニーニョとヨーロッパ最強のコンビを形成している。
2023年3月1日には、UEFAユースリーグベスト16ヘンク戦で開始早々にPKを獲得し、決勝点となった2点目も奪うなどMVP級の活躍を披露。エスタディオ・メトロポリターノデビューを華々しく飾った。
一夜明けた3月2日には、先に契約延長が発表されていたニーニョに続いて2027年までの長期契約を締結したことを発表。マンチェスター・U、アーセナル、ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズといったプレミアクラブからオファーが届いていたが、アトレティコでの成功を夢見るアブデは全て拒否した。

1年目は不遇だったが、今年は充実した時間を過ごしている。

バルセロナで生まれ育ったアトラスの獅子

187cmの大型FWであるアブデは、懐の深いポストプレーや身長を活かしたヘディングも武器の一つだが、前を向いてプレーした時が1番脅威になるだろう。最大の長所は、その長身からは想像できない高度なテクニックを駆使したドリブル突破だ。サイドに流れて仕掛けることも、強引に中央を突破するドリブルもすることができる。スペイン育ちらしい足元の技術はドリブルだけでなく、ループなどのバリエーション豊かなシュートや、広い視野から放たれるスルーパスなどでも垣間見ることができる。また、ダイビングヘッドやジャンピングボレーなど、驚異的な身体能力が生み出すダイナミックなプレーも持ち味の一つだ。

バルセロナで生まれ育ち、スペインの教育を受けたモロッコ人が、もう1人のヨーロッパ産選手としてモロッコ代表に名を連ねる日はそう遠くないだろう。
スペイン産のテクニックとアフリカンらしい身体能力が融合した近代的なストライカーは4年後、「アトラスの獅子」の最前線に君臨していても不思議ではない。
我慢の時を耐え、待ち望んだチャンスを掴み取ったストライカーの進化は止まらない。

世代別代表では一貫してモロッコを選択している。「アトラスの獅子」期待のストライカーだ。

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