『そのようにはしないことになりました』という写真集について ①概要


はじめに

本アカウントでは、存在しないものについて取り上げております。
そのため、今回紹介する『そのようにはしないことになりました』は存在しない写真集であります点ご了承ください。

『そのようにはしないことになりました』 概要

 まず、写真集『そのようにはしないことになりました』(以下、本作)の概要について見ていきたい。本作は、些か特殊な経緯を経て出版された写真集となる。その経緯を含め、筆者が知り得た限りの情報を本項にて記していこう。

作者

 本作の作者は、堀浅ほりあさ 三屋敷みつやしき氏である。堀浅氏は所謂写真家と言った専門家ではない(と思われる)。本作は、堀浅氏が自身のSNSアカウントに投稿した画像を中心に構成されている。堀浅氏の投稿によると、それ以外の(要するに撮り下ろし)も用意されていたようだが。


趣旨

 堀浅氏の投稿は現在でも確認できるのだが、それらには一定のモチーフやテーマがあることがわかる。実際、堀浅氏の投稿が注目を集めたのは、そのテーマ性のためでもある。

 例えば、2022年5月12日、堀浅氏が最初に投稿した画像を見てみよう。
まず目につくのは鮮やかな花束だろうか。画面全体が白を基調としているために、その赤が際立って映える。
 そしてそれを抱く人の肌はやはり白く、微笑むように瞳を閉じている。その人は、白いオーガンジーを肩から腰に掛けて重ねているのみであり、殆ど裸体と言って差し支えない。
 また、被写体は淡い光に照らされており、それが言いようのない神秘性を醸し出している。

 本投稿は、有名なアーティスト複数名が拡散したことを皮切りに、特にインターネット上における堀浅氏の知名度を一気に高めた。

 その他にも、白い花が大胆に散らされた小川の写真や、そよぐカーテンの向こうに立つ向日葵の影が差す室内の写真など、堀浅氏の優れた作品というのは枚挙にいとまがない。

 また、幾つかの写真では人間が被写体となっているが、そのいずれも、被写体の顔が映っておらず、性別の判断の付かないようなものばかりである。その不可思議なモデルの持つ謎めいた雰囲気もまた、堀浅氏の作品の完成度に寄与していると言える。

経緯

 先に述べたように、本作が出版されるに至った経緯はやや特殊なものである。それは何も、彼がインターネットにて知名度を獲得したから、という話ではない。今の時代、そういった経緯から出版に至った作品などは珍しくもない。
 恐らくは、多くの読者の記憶にも新しいであろう。2023年12月18日、堀浅氏は自身のSNSを更新し、件の投稿を行った。本文は短く「そのようにはしないことになりました」とだけ書かれている。以降、堀浅氏はSNSを更新しておらず、出版に携わっていた企業の公式SNSでも、堀浅氏が音信不通となった旨が公表されていた。

 さて、2023年12月18日の投稿には、一枚の画像が添付されていた。それは堀浅氏のものとは思えないような、異様とも言える雰囲気に包まれた作品。一見して、ただ一面黒いだけの画像に見えるそこには、確かに薄らと何かの輪郭がある。それをなぞれば、朧気ながら全体像が見えてきて――。

 その画像は、現在も堀浅氏のSNSアカウントから確認できる。

 その後、堀浅氏のファンの殆どは、堀浅氏の写真集が発表されることはないだろうと諦めていた時だ。2023年12月31日、出版社は堀浅氏の写真集について、タイトルを『そのようにはしないことになりました』に改めて、当初のスケジュール通りに発売する、と発表した。それ以外の説明は何もなかった。

 2024年1月30日現在、堀浅氏のSNSは更新されていない。

おわりに

 今回は、写真集『そのようにはしないことになりました』について、その概要をまとめた。次回は、堀浅氏の最後の投稿はなにを意味していたのか、正体不明のモデルは一体誰なのか、筆者の得た情報と、それに基づいた考察をまとめていくこととする。


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