インターネットに棲む幽霊.txt
「例えばさ、いつか死ぬとするじゃん?」
「まあね、いつかはさ」
「だとしたら、インターネットに棲む幽霊になりたいわけよ」
「はあ……?なんか、意識だけインターネットにある……みたいなカンジ?」
「まあ、大体そんな感じになるのかな」
「なんかそれだと怪談って言うかSFってカンジ」
「いやいや、死んでんだから幽霊じゃん」
「でもインターネットに棲んじゃったら、死んでることを証明できなくない?」
「え? どういうこと?」
「だってさ、ほら……だから……現実世界に幽霊が出るとして、連中、例えば半透明だったり、血まみれで浮遊してたりするわけじゃん」
「………連中って……まあ、そうだけど」
「でもインターネットに意識だけあるんです! って主張されてもわかないじゃん」
「確かに」
「でしょ? だってそもそもがデータ上の存在だよ、仮にSNSやろうが、小説投稿しようが」
「その向こうにいるっぽい人間が、生きてるかどうか……確かにあんまり意識しないな……」
「まあ、そういう意味では、もうインターネットには幽霊が棲んでるのかもしれないけど」
「えー! 先越されてるじゃん」
「そもそも、インターネットに棲む幽霊になって何がしたいわけ?」
「……考えてなかったな。死んでもインターネットに居たいって気持ちがあるだけで」
「じゃあ普通に……それこそツイッターやったり?」
「そうそう。youtube見たりね」
「まあでも、幽霊って死の直前の行動を繰り返すって話もあるくらいだし……インターネット地縛霊みたいな?」
「そんなカンジかも。あ、でも、なんか作ったりもしてみたいな」
「なんかって……小説とか、絵とか?」
「そう! まあどうなるかわかんないけど、インターネットに棲むなら……ほら、よく言うじゃん、頭の中をそのまま出力できるかも」
「あ~、それはいいね」
「死後、神絵師として崇められるかも」
「でもそれこそ……なんかアレだな」
「……なに?」
「いや、さっきからちょっと……薄々気づいてたんだけど、そうなってくるといよいよアレだなって」
「アレ?」
「ちょっと……AIっぽくない? それって」
「…………うわァ」
「いやでもほら、ちょっと思ったでしょ、今」
「思った」
「だから……インターネットに棲む幽霊として名を上げるには……死んでいるという証明と、AIでないという証明が必要になる、かも?」
「いや別に、証明とかはいらなくない?」
「そう? でも、インターネットに棲む幽霊になりたいんだったら、せめて自分を納得させたくない?」
「というと?」
「だってさ、まあ急に死ぬわけじゃん」
「そうね」
「したら次の瞬間にはインターネットに棲んでるわけでしょ?」
「うん」
「その瞬間、自分が”幽霊”なのか、”そういう設定のAI”なのかって判断着くのかな」
「えぇ~……?」
「幽霊として自由気ままにやってると思ってたら、実はガチガチに作られたAIでした、って、嫌じゃない?」
「嫌だけどさ……」
「ううん、自分が幽霊かAIか、見分ける方法があれば最高なんだけどな」
「…………やめよう」
「え?」
「なんか頭痛くなってきた……幽霊になる話はまた今度ね」
「そっちが言い出したのに」
「いい、いい、ちょっと小難しすぎた!」
「………はいはい」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?