Autochess 与えられた選択肢とその意味
前書き
先日Autochessの世界大会であるAutochess Rivals の日本予選に
ルークからクイーン923ポイントまで155試合 勝率35% 上位3位率71% 平均順位2.7の日本順位6位で通過し出場することができた。
私事の都合から今シーズンは多くの時間をオートチェスの割くことができず、
予選通過者32人の中で自分が確認する範囲では試合数が最も少なく、一桁通過者の半分以下の試合数というランクマッチのポイントで予選進出を競う上で周りに大きな不利を背負う形となってしまった。
その中で32人中6位のポイントで予選を通過することが出来たのはDota Autochessの頃から「パッチ毎に変わらないAutochessの普遍的な技術」を積み上げてきたこと、
様々な種類のゲームやパッチを競技的にする上で「効率の良い技術の学び方」を身につけることで移り変わるパッチに適応できたことが理由だと考えている。
本稿では「パッチ毎に変わらないAutochessの普遍的な技術」その中でも「与えられた選択肢とその意味」について触れていく。
Autochessにおいてプレイヤーには様々な選択肢が与えられ、駒購入、売却、経験値の購入や配置などそれぞれの選択が複雑に絡み合い試合の結果に結びついている。
「与えられた選択肢とその意味」はボトムアップでゲームを考えていく上で最も根底にあるものであり、
これを理解すればAutochessをプレイしていく上では勿論、
観て学び楽しむ上でも大きな力となるだろう。
あなたがよりAutochessに上達や楽しさを感じることができるようになる、その助けになれば幸いだ。
本論
Autochessでプレイヤーに与えられるリソースは大別してヘルス、ゴールド、駒、装備、時間の5つがある。
第一にこのゲームの目標は「ゴールドで駒を入手し、入手した駒と装備を用いて可能な限り長時間自分のヘルスを守る」ということであり、
これらの操作および判断を与えられた時間内で行うことになる。
本稿のタイトルにもある「与えられた選択肢とその意味」について触れる前にそれぞれのリソースについて説明する。
また「与えられたリソースとその意味」は読者と認識の齟齬が生まれないように作られた項目であり、基本的な知識をしっかりと持った方であれば読み飛ばしても構わない。
与えられたリソースとその意味
ヘルス
①0になると敗北しその段階で順位が確定する。
その為他のリソースは全てヘルスを可能な限り長時間守ることを目標として使われる。
あくまでもゲームを通して長時間守るのが目的であり、短期的にヘルスを守ることが長期的に守ることにつながっていない場面も多く存在する。
ゴールド
①ゴールドを用いて駒や経験値の購入、ショップの更新を行い構成を強化することができる。
それによって長時間ヘルスを守ることを目標とするゲームなので、如何に上手くゴールドを作るかはゲームの焦点となってくる。
②10Gにつき1Gの利息を得ることができる。
ゲーム序盤のゴールドの方が価値が高くなり終盤や利息の上限である50Gを超えてのゴールドは価値が下がる。
③プレイヤーとの戦闘での勝利時に1G、連勝連敗数に応じてラウンド毎に 3~5で1G 6~8で2G 9以上で3G貰える。
その為ゴールドを使った行動によって構成を強くすることが逆にゴールドの増加に繋がっている場合もある。
駒
①ゴールドを用いて購入することができる。
②購入した駒を配置して戦闘を行い、その結果によってヘルスの減少、ラウンド勝利報酬、連勝連敗ボーナス、モブラウンドでの装備ドロップ等が決定する。
③売却時のゴールドは初期では購入時と同じだが、ランクアップ後は☆2で購入時のゴールド+2 ☆3で購入時のゴールド+3となる。
装備
①駒に装備することで構成を強化することができる。
装備と駒や構成に相性があり、所有している装備によって同じ構成であっても強さが変わる為、行くべき構成の優先順位が変わることがある。
また特定の構成に対して相性が良いような装備も存在し、駒や構成の価値は周囲の装備によっても多少変動する。
時間
①全ての操作に使われる。
②操作をする為に必要な情報を得る為であったり、現在の状況でどの選択が良いかを思考する際に使われる。
時間が足りないと最適な形でリソースを使うことができず、このゲームは基本的に全ての行動を完璧にこなす為の時間が足りていないので時間をどのように配分するかを考える必要がある。
本論の最初で「ゴールドで駒を入手し、入手した駒と装備を用いて可能な限り長時間自分のヘルスを守る」と書いたようにそれぞれのリソースは別のリソースへと行動の過程を経て交換することができる。
その行動がプレイヤーに与えられた選択肢であり、プレイヤーのあらゆる行動はリソースを使用して行われるものであるからそれぞれのリソースの意味についてしっかり把握しておくことは「与えられた選択肢とその意味」を理解する上でも肝要であると言える。
それでは事前に必要な知識を共有した上で本稿のタイトルになっている「与えられた選択肢とその意味」の項目に入る。
この項目はリソースを使ったプレイヤーに与えられる行動の選択肢とその行動によるリスクとリターンについて触れた項目である。
もし理解が難しいところがあればこの「与えられたリソースとその意味」の項目に立ち返ると良いだろう。
恐らくあなたの力になってくれるはずだ。
与えられた選択肢とその意味
駒の購入
リターン
①購入した駒を盤面に出して戦力を強化することができる。
→ヘルスを守ったり、ラウンドを勝利することによってゴールドやモブラウンドであれば装備を得ることができる。
②勝てる状況を作るための受けができる。
→その駒を使用することで構成が強化できる状態になった場合に所持していると構成が強くなる。
わかりやすい例だと☆1駒のリーチや目指す構成の核となる駒など。
リスク
①ゴールドを失い、利息も減少する。
→ランクアップしなければ売却時に購入時と同じだけのゴールドが帰ってくるが、
駒を抱えるとその分利息で得るゴールドが減るため、駒を購入する際は“駒購入”によるリターンと利息で失うゴールドを天秤にかけることになる。
また利息で失うゴールドは短期的に失うゴールドではなく試合全体で失うゴールドで考える。
利息で得たゴールドが更に利息を増やしてくれるというのは常に意識しなければならない。
駒の売却
リターン
①ゴールドが増えて利息が貰える。
→ショップの更新や経験値の購入に使えるゴールドが増加し、長期的に見た際に勝てる状況を作ることに繋がる場合がある。
リスク
①受けが狭まり流れる構成の決定が遅くなる場合がある。
→構成の決定が遅くなれば使わない可能性のある駒を抱えることになり逆に利息が減る場合もある。
②勝てる状況になるのが遅れる場合がある。
→売った駒を使用する状況になった場合に、売ってから使用する状況になるまでにその駒を所持できていないと構成が弱くなる。
③盤面に出して戦力になる駒まで売ってしまうと戦力が下がり、
“駒の購入”のリターンの項目にある戦力を強化することによる恩恵が減る可能性がある。
また売る駒毎のリスクの大きさは基本的には“駒の購入”のリターンに書いてある項目を満たすことができるような駒であればあるほど大きくなりパッチ毎に大きく変動する。
ショップの更新
リターン
①ショップを更新することで駒を購入するチャンスが与えられ、“駒の購入”のリターンを享受できる可能性がある。
リターンが発生する確率はレベル毎の駒排出率と、駒全体のプールからどれだけ求めている駒が排出されているかに依存する。
リスク
①ゴールドが減り、利息で得るゴールドや経験値の購入に回せるゴールドが減る。
→多くのゴールドを使うと利息がなくなる関係でそこから構成を強化するのが困難になる。
また利息で失うゴールドは短期的に失うゴールドではなく試合全体で失うゴールドで考える。
②多くのゴールドを一気に使う際に操作量や思考量などが増え時間を大きく使う。
経験値の購入によるレベルの上昇
リターン
①配置可能な駒の数が増える。
→戦力の強化に繋がりヘルスを守ったり、ラウンドを勝利することによってゴールドやモブラウンドであれば装備を得ることができる。
②高コスト駒の排出率が上がる。
→求めている駒が高コストである場合レベルを上げてからショップの更新をした方が更新回数が減っても求めている駒を入手しやすい場合がある。
リスク
①ゴールドが減り、利息で得るゴールドやショップの更新の回数が減る。
②低コスト駒の排出率が下がる。
→求めている駒が低コストである場合レベルを上げることによって求めている駒が排出される確率が下ってしまう。
駒の配置
リターン
①どこに攻撃するかされるか、どこにスキルを打つか打たれるか、どの駒を出すか出さないかを決定できる。
→適切な配置にすることでラウンドを勝利する確率を上げたり、ヘルスを多く守ったり、連敗ボーナスを狙うことでゴールドを作ったりすることができる。
リスク
①全ての行動に時間を消費するが、どのような配置にするか思考する時間、駒を移動する時間、周りの所持駒と構成および装備を見る時間と配置は他の行動に比べて多くの時間を使用することになる。
→他の行動をする必要があるときに配置にまで手が回らない、逆に配置を変えなければならない状況で他の行動にまで手が回らないことがある。
装備の付与
リターン
①装備することで駒の能力を上げることができる。
→戦力の強化に繋がりヘルスを守ったり、ラウンドを勝利することによってゴールドやモブラウンドであれば装備を得ることができる。
リスク
①別の駒に装備を付け替えるためには駒を売らなければならない。
→その為装備を付ける際はその駒を売ることができるか、装備を理想的な駒に付与できるまで温存した際の最終的な構成の強さ、装備を付けた際の現状の構成の強さを考えた上で装備を付けなければならない。
装備の合成
リターン
①装備が強化される。
→戦力の強化に繋がりヘルスを守ったり、ラウンドを勝利することによってゴールドやモブラウンドであれば装備を得ることができる。
リスク
①別の合成先に合成できなくなる。
→合成した状態でしか装備をもたせられないので装備を分けて持たせることができなくなる。
合成してもステータスが変わらないような装備は装備の合成先が減るのでユニットの装備枠が足りているのであれば合成しないほうが良い。
また合成すると戻せない上に特定の構成に対して強い装備や特定の駒との組み合わせが強い装備が多いので、
合成する際は自分の手持ちや周囲を考えた上で合成することになる。
Autochessではこれらのプレイヤーに与えられた選択肢をリスクとリターンを考えた上で選択していくことになる。
これらの選択と操作を適切に行いプレイヤーが生存している時間を最大化することがプレイヤーに与えられた課題であり、プレイヤーがゲームに影響を与えることができる限界となる。
後書き
本稿ではこのゲームの最も根底にある「与えられた選択肢とその意味」 について書いた。
これは積む前の積み木のようなものでこれだけではどのように積み上げればよいのかわからないと思う。
ただこの「与えられた選択肢とその意味」を理解していなければ決して積み木を正しい形で積むことはできないし、
一見しただけでは理解できないような高い技術を持ったプレイヤーの巧みなプレイもこの上に成り立っている。
この積み木をどのように積み上げていくかについては今後別の記事でも触れる予定だ。
そして本稿を読み終えた人には次のステップとして自分で選択肢のリスク・リターンについて考えながら、ゲームをプレイしたり、高い技術を持ったプレイヤーの配信を視聴することをおすすめする。
行動の意味を知った上で行うプレイや配信の視聴は今までとは全く違った面白いものに見えるだろう。
正しい形でこの知識を使うことができればあなたの上達は格段に早くなるはずだ。
感想や改善点などがあればTwitterやnoteでコメントして貰えると次の記事への励みになる。
また質問があれば 配信で訊いて貰えればよい解答が貰えるだろう。
あなたがAutochessをより楽しむことができれば幸いだ。