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USCMA 日本語受験についての考察
英語試験のみであったCMA資格試験が、6月より日本語にて受験可能になるニュースが発表されました。このメッセージとしては「この機会を利用して、会計専門家がキャリアアップを図り組織にさらなる洞察と利益をもたらす事を望んでいる」という事です。発表元記事:
https://asiapac.imanet.org/press-releases/2025/february/cma-exam-to-be-translated-into-japanese-language
日本語で受験できる事でどのような変化が起きるのでしょうか。
・これから受験しようという方
・既に勉強を開始している方
・既に資格を取得している方
それぞれ感じる事があるかと思います。これらの変化に対してどのように
向き合っていく事が大切なのか、個人的な意見にはなりますが記載してみました。この記事は考察を多く含みますので、この点はご注意ください。
導入背景考察
日本が魅力的な市場であるため、言語の壁を除き、入り口を広げる事でこの専門的資格の認知度を高めて、結果として会員を増やす事が一つの背景であると推察しています。
他言語を取り入れる事は、必ずしもBenefitだけではなく、Limitationも作り出す事になります(後述します)。しかしながら日本市場における潜在力 (キャリアアップを目指す専門家の数や、ファイナンス組織の強化に対する需要)が評価されて決定がされたのではないでしょうか。
まず日本においてのCMAホルダーが少ないのは、そもそも国際試験であり
英語の壁が立ちはだかっている事と、そもそも資格の存在が知られていないという点にあると思います。本資格を最も生かせるFP&A組織が企業に浸透していない事が理由にあげられると思います。逆に非常に浸透しているのは、外資系企業におけるヘルスケア、IT、消費財、ラグジュアリー、自動車産業であり、これらは求人案件で確認ができます。
国内企業においてもこの国際資格に注目している、あるいは管理会計業務を強化・国際化する需要が高まっているのかもしれません。そうであれば、この動きに納得がいきます。
導入によるBenefit考察
日本人にとって日本語で受験が叶う点は、受験者視点において非常に魅力的なニュースです。このニュースを皮切りに、今後資格学校は日本語教材の開発やPRに力を入れるでしょうし、結果として勉強時間の短縮が図れたり、合格率も上がる事が想定されます。なにより英語が苦手と感じている方が受験を始めてみようというきっかけになるので、国際会計のアイデアが広まり、また受験者は一定程度増える事が予測されます。
個人的には、CMA試験においてこれまでは難解な英語を限られた間で読み解く必要があったのでとくに"倫理 (Professional Ethics)"を代表する非計算問題の読解と回答選択に大きな障壁がありました。これが取り除かれるというのは大きく合格率を引き上げる要素に繋がると思います。私はCMA試験を2回落としていますが、この非計算問題の読解力が主な原因でした。なお計算問題はほぼ"パターン"が決まっているので言語の壁は非計算問題に比べると障壁にはなりません。
このように、協会にとってもこれから受験をスタートしようという方にとってもメリットがありWin-Winのように見えます。しかし本当にそうなのでしょうか?続いてLimitationを考えてみたいと思います。
導入によるLimitation考察
本資格は「英語力と国際会計力の証明」の2つが魅力として掲げられてきており、資格学校においてもPR材料になっていました。この内の一つが取り払われるとなると、その魅力が半減したように感じる可能性があります。特に既に資格を取得している方、英語教材で勉強中の方にとっては驚きのニュースであったのではないでしょうか。この点は今後、資格学校と協会によるマーケティング強化によってブランディングの維持あるいは強化が行われる事が想定されます。
しかしながら、本質的な事はCMA資格を実践に生かせるかどうかです。例えば日本語だけで勉強し合格した場合、英語受験と比較すると以下のような変化が予見されます。
・英語力が鍛えられない
英語受験は辛いですが、この試験を通じて英語が鍛えられた事は間違いなく英語であるからこそ、英語講義 (Becker CMA講義)を全て受講する機会が得られ結果として読解力とリスニング力が向上するきっかけになりました。これが失われるあるいは弱まるとすると、大きな機会損失になります。
・共通言語を日本語主軸で覚えてしまう
日本語に頼りすぎてしまうと、資格取得後に英語話者とのコミュニケーションがスムーズに行かない可能性があります。例えばLearning Curveという言葉を学習曲線という言葉を主軸に覚えてしまうと、実践において英語表現(相手が分かる共通言語)がスムーズに出てこない可能性があります。
その他考察事項
・本当に受験者が増えるのか問題
言語の壁が取り払われ、今後認知度が高まったとしても、はたして本当に受験者が増えるのでしょうか。そもそも内資企業においてはFP&A組織が広く浸透しておらず、この資格に魅力を感じる方がどれだけいるのかという点が最も大きいチャレンジになると考えています。
加えてコストが安価ではない点もあげられます。年間維持費も含め高額な受費用が存在し続ける限り、大きな壁は残っています。この為、安価ではなく国際言語もいらないが「高いブランド力」を高める印象づくりが重要になると思われます。そして今後のFP&A組織成熟が進む事もこの問題を解決に導く重要な要素の一つでしょう。
・転職市場における評価
そもそもCMA資格は日本においてあまり知られていないので、日本語試験の受験が可能になったからといって評価が落ちるという事は無いように思います。引き続き募集要件ではCPAが固いところでしょうし、CMAの記載案件は劇的には増えないと考えています。
この為、CMA資格の希少性は一定程度維持されるでしょう。
またそもそも社内の従業員も知らない資格なので「なんかすごそうな資格」
というイメージも当然維持されるでしょう。
・資格取得後のCPEは英語受講が主体となる可能性
既にCPA/CMA資格を取得している方であればご存じのように、CPEとして受講するものは海外のものが多く単位習得には英語での受講を要するという点は、これから日本語受験する方も知っておいた方が良い情報です。日本語に頼りすぎていると、これらの習得が困難になり資格を維持する事が難しくなります。
・既に英語教材で勉強中の受講生の方針
このニュースを見て一番驚いている方は現在勉強中の方であると思います。このような大きな変化はモチベーション維持だけでなく、当然効率性や合格率にも今後影響がでますので、最適な方針を見つめ直す必要があります。
結びに
このように、BenefitとLimitationの二つの観点から考える事はまさにCMAから学んだアイデアであり、包括的に考えて慎重に考察を行う事は大切だと思います。2025/2時点での私の個人的なお勧めは、勉強も受験も日本語で受けるが、専門用語は必ず英語で覚えておくという事です。
具体的にどうやったらこれができるかというと、今後資格の学校が力を入れるであろう日本語教材を勉強し資格に合格したら、Becker CMA講義やCPE講座を英語で振り返って勉強するというものです。
また、本資格のブランディングや希少性を維持するという部分では日本語試験・英語試験どちらで合格したのかという点が見える化・差別化できるようであれば既存の英語試験で合格した方や勉強中の方も納得感が出るのではないでしょうか。
ぜひ皆さんの意見もコメント欄で聞かせてください。
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