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創刊号試し読みー「夜を牽く男」旦部辰徳

1月14日文学フリマ京都で販売します「第九会議室 創刊号」の、
掲載作品の試し読みコーナーです。
今回は一番短い掌編から。

旦部辰徳 著者紹介(本文抜粋)

<未完成の美学>の信奉者。
好きなもの:羽化せざる蝶、花咲き難き梅、待宵月、反故原稿、人間。
※写真提供も著者です。

「夜を牽く男」本文抜粋

フードの合間から除く顔貌は、年配の男性のものだった。たっぷりとした白髪まじりの髭。両頬に刻まれた深い皴の数々は、砂紋のようだった。ギラギラとしたガラス玉のような目が、その合間につじつま合わせのように埋め込まれていた。黒衣は襤褸切れに近く、所々穴が空いて肌が露出していた。丈は中途半端に短く、くるぶしがそっくり剥き出しになっていた。男の木靴の足裏が見えた。ほどなく、背中しか見えなくなった。

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