さくら
わし、桜すっきゃねん。ごっつすっきゃねん。
なんでか言うたらな、綺麗からやねん。
花を好きな理由なんてそんなもんでいいんですよ。
花を好きな理由って、なんとなく叙情的で厭世的でないといけない感じがしますが、「綺麗だから」でいいんですよほんとに。
せっかく花自身が綺麗に咲いているのに、見た奴の身勝手なセンチメンタルで加工しないでほしいですよね。
僕は綺麗だから花が好きなんですが、桜においては特にベタで、やはり散り際が好きなんですね。
散ってる時が一番綺麗なので。
先日、お花見を楽しむ5、6人の大学生グループを見かけました。
「お花見を楽しむ5、6人の大学生」という情報と、「性格が良いとは言えない若手芸人がわざわざnoteに書き起こしている」という事象から、勝手に質の悪い宴会を想像されたかと思いますが、そんなことはありません。
それ偏見ですよ。
認識を改めてください。
性格が悪いのは僕ではなくあなたです。
馬鹿騒ぎはおろか、ご家庭からそれぞれの"お上品"を持ち寄り、誰に迷惑をかけるでもなく、清き美しい青春に、静かに桜を添えられていました。
僕は感心したんです。
言ってしまえば「大学生だから」で許されるであろう粗相でさえも、彼等にとって「してはいけないこと」として懐に仕舞われているご様子に、この国の未来は明るいなと思ったほど、感心したんです。
「お花見会」が方便ではない現場を初めて見たもので、信じがたすぎて粗を探した程です。
清いなぁ清いなぁ。
奥のベンチに目をやると、おそらくそのグループと同年代の男が、缶チューハイを片手に独りで桜を見上げています。
僕には、そこに散る桜の方が美しく見えました。
塩で甘味が増すスイカのように、哀愁をもって輝きを増す花弁。
「ひとりじゃないよ」と伝えるように、命を震わせるソメイヨシノ。
手前にある、教科書のような青春とのコントラストが、僕の魂に数年後の春を投影したわけです。
麗しいなぁ麗しいなぁ。
などと感慨に耽っていると、ベンチに座っていた男がすくりと立ち上がり、大学生グループの方に合流したんですね。
みんなで来たのに、ひとりでスカしてるだけの奴でした。
なんやアイツ。
みんなと楽しくせぇや。
異端がかっこいいと思ってるやん。
「俺はお前らとは違う」やないねん。
「俺はお前らとは違う」ってみんな思うから、お前もみんなと一緒やねん。
お前に感じ取れる花の良さなんか無いやろ。
一丁前に見上げてんなよ。
まぁアレやけどな。
気持ちは分かるけどな。
大きく裏切られて、大きく共感した。
そんな出来事でした。
認識を改めないとな。