パリ

パリコレに招待して頂きまして。

いえいえ。

そんなそんな。

全然普通のパリコレですよ。

それで行ったんですよパリに。

初めての海外旅行。

ピカピカのパスポートで。

ちょっと恥ずかしいんですよ、ピカピカのパスポート。

ピカピカが喜ばれるのってランドセルと水回りだけですから。

パリってめっちゃ遠いんですよ。

機内のモニターでフライトマップを開いてみたんです。

離陸地点から着陸地点までの航路を画面内に収めようとしてマップを縮小していったら、繋がった時の映像が地球そのもので、月視点ぐらい遠かったんです。

ちっちゃい声で「不可能やん」って言いました。

飛行機で14時間ですよ。

2回ご飯出てくるんです。

しっかり寝たりするんです。

移動の中に"生活"があるんです。

でも"喫煙"はないんです。

気が狂いますよ。

そんぐらい遠いんです。

不可能と思われたフライトもなんやかんや可能でして。

いろんなものに怯えながらArtistspokenスタッフと合流しまして、その日から3日間は正直ただの観光でした。

なんとなくパリっぽい店で食事をとりながら、ヴェルサイユだの、ルーヴルだの、"V"の発音を大切にしている施設に赴きました。

もちろん感動もありましたが、インターネットのせいで想像にも天井がありましたので、「そうだよな感」は否めなかったです。


そして迎えたパリコレクション。

そこで見たものや感じたことは、いくつかのお笑いの現場でお話ししましたが、その際の僕のスタンスに関しては全て嘘だと思って頂いて結構です。

本当は、相当に、感銘を受けました。

まさに異世界。

服飾に関してほぼ無知である自分が、その現場に存在していいものかを考える程に、間違えても水を差せない空気感。

粛々と、それでいて華やかに進んで行く時間。

それらを外連味たっぷりの布に包まった芸人風情が、偉そうに眺めている状況。

あまりにもなんそれ。

内容に関して僕なりに感じたことを言語化することも可能ですが、これでも僕は、他所の畑で行われた催しに対して持論を用いて如何だったかを語る程、厚顔無恥な人間ではございません。

お笑いルポライターじゃないので。


とにかく感動的でございました。


終わってからバイヤーの方とお話する機会がありまして、「ファッションとお笑いをもっと交わらせたい」と言う旨の話をして頂き、芸人として意見を求められました。

僕は正直に「難しい」と返しました。

そこで見たものや感じたことは、いくつかのお笑いの現場でお話ししましたが、その際の僕のスタンスに関しては全て嘘だと思って頂いて結構です。

先程述べたコレがソレです。


芸人の仕事は"人を笑わせること"ですよね。

そうなんですが、もう少し具体的に言うと、「求められたモノを提供すること」そして、「空気を悪くしないこと」なんですね。

僕は、芸人にとって最も必要なスキルが、「空気を読む力」だと思っています。

例え自分の考えと違っていたとしても、多数派と同じ反応をしたり、現場によっては敢えて少数派ぶることで対立構造を生み、話題を盛り上げたり。

とにかく環境に馴染むこと。その上で迷惑がかからない程度に異質であること。

それが芸人の仕事なんだと思います。


これらのマインドと、ファッションやアートとの食い合わせが非常に悪い。


次の流行を作り、先駆けるのがファッションであるのだとすれば、「環境に馴染む」ということは完全に対義ですよね。


僕は時折、仕事として絵を描くことがあります。

そんな中強く思うのですが、"求められていること"の想定内で描くのなら、AIでいいんです。

仮に受け手が理解できないとしても、作者の感性を重んじるのがアートやファッションなんです。

ソレに共感した者だけが楽しめる国なんです。

ソレで完結していいんです。

アートやファッションは、どこまでいってもオナニーなんです。

そのオナニーが、運良くなのか、想定通りなのか、"トレンド"になるんです。

その"トレンド"に理解を示せない人間の心に寄り添い、オブラートを剥がして伝え、共感で笑いに変えるのが芸人の仕事なんです。

芸人はザコいので、関わるもの全てに対して、身内中でマジョリティでないといけないんです。

僕は個人的に、この双方の法律に折衷が無いと感じました。

元来アートなんてのは、伝わる奴にだけ伝わればいい分野なんですが、それが大衆に浸透し、いざ自分の領域に足を踏み入れられると、芸人として、結果的に作者の心を削る為の営みを余儀なくされるわけです。

本当は「凄い」と言いたいんです。

しかし、「凄い」ではウケないんです。

ではどうすべきか。

空気を読んで、多数っぽい方と同じ意見で大きく喋るんです。

一見汚ねぇですが、トロッコ問題みたいなもんで。

どっちが正解という話でもないんですな。

だからファッションとお笑いの融合は難しいし、それが許されるのはもう少し未来の話なんだと思います。

あと一歩な気はするんですけどね。

次にパリに伺う時には、何か答えを見つけていたいと思います。

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京極風斗
四字熟語でお礼します。