「感想」の書き方
Q.二次創作の作家さんに感想を送る時、いつも不安になります。失礼なことを書いてしまわないか、解釈違いだと思われないか、文章が下手なのではないか、とにかく色々なことが気になります。ゴリラとして最低限の礼節を身につけたいのですが、どうすれば良いでしょうか。
A.感想を送って、どうなったら貴方は満足ですか?
まずは目的を定めよう。小説だろうが感想だろうがダイエットだろうが、目的をきちんと定めなければ永遠に貴方にゴールは訪れない。
貴方は、その感想を書いて「どんな未来になったら」満足なのだろうか。
相手が返事をくれたら?
作者の人が喜んでくれたら?
自分の気持ちが伝わったら?
何をゴールと思うかによって、やるべきことは変わってしまう。そして、「同人活動」という趣味の活動をしている作家さんに感想を送るということは、自分もまた「同人活動」に参加する「一般参加者」であるということだ。まずはその自覚を持って感想を書くという活動にあたってみよう。
「お返事が欲しい!」
早速ジャングルの大自然の厳しさをお伝えしなくてはならないのだが、感想を送っても返事が来るとは限らない。何故なら、同人とは「趣味の活動」だからだ。ましてインターネット上だけでのやり取りともなれば、趣味を優先していられる人ばかりではない。人類の皆様には会社や学校や家庭といった、自分の生活と命を支える基盤があり、そちらの活動で一大事が起きれば「趣味」が後回しになるのは致し方ないことである。特別な事情がなくとも、趣味の活動での交流をあまり求めていない方や、膨大な量の感想を頂くので少数のお便りを選んでお返事をするという感想石油王な方もいらっしゃる。世の中には様々なアニマルがいて、「同人活動」に懸ける情熱もスタンスも人によって違う。だから貴方がどんなに真心を込めて情熱的にその作品を読んだとしても、相手が同じくらいの情熱を持って活動しているとは限らない。
感想にお返事が欲しい、もらえないなら感想なんて送りたくない、というならそれもまた貴方の選択だ。それを誰も責めはしないし、見返りを求めるのは人類の当たり前の行動のひとつである。そのことに貴方自身が罪悪感を感じるのなら、それは貴方の心の中の問題だ。見返りを求めてしまう自分のことを、貴方自身が一番嫌っているのだ。それについてはゴリラのサポート対象外の問題なので、じっくり心の中のご自分と向き合って頂きたい。
「喜んでほしい」というのも同様に難しい目的だ。
相手が本当に喜んでくれているのか、社交辞令なのか、それは誰にも分からない。「喜んでくれたように見える」だけなのかを判定することは、他人には出来ないのだ。貴方が本当に嬉しそうだと思っても、別の人は嘘だと言うかもしれない。貴方が嘘くさいと思っても、別の人は間違いなく本心だと言うかもしれない。心の中は、本人にしか分からない。だから、確実に絶対喜んでほしい! と言うのなら、それはもう嘘発見器を持って本人に会いに行くしかないだろう。
それはさすがに無理だろ、と思った方も大勢いるだろう。そう、普通は無理だ。だから、喜んでくれたかどうかというのは相手の反応から勝手に推測するしかないのである。その勝手な推測で満足出来るのなら、それは健全な心の動きだ。もし疑心暗鬼に陥ってしまい、「喜んでくれたかどうか分かりもしないのに感想なんて送りたくない」というなら、それでもちっとも構わない。そんな自分が嫌だと仰るなら、それはやはりゴリラのサポート対象外の問題である。
自分の気持ちが伝わったら、という目的も、結局は推測するしかない。相手に伝わったかどうかを判別する手段はないからだ。
ここまで読んできて、人類の皆様にもなんとなく分かったことだろう。
ジャングルでは、見返りは約束されていない。
この激しく厳しい大自然の中で、努力した分だけの報酬が貰えるという確約はどこにも存在しない。努力すれば確実に数字になって見えるのは、ゲームのレベリングくらいのものである。そして、それは貴方が好きな作品をつくった作家さんも同じだ。
作家さんは、感想を書くよりも更に長い時間と、専門的な技術と知識を費やして、作品を作っている。仕事や学業の合間を縫って、少しでも時間を作り、体力も気力も消費して必死で作品を作っている。作品づくりのために機材を買う必要のあることだってある。けれど見返りがあるとは限らない。誰にも見てもらえないかもしれないし、誰も反応してくれないかもしれない。時には心無い言葉をぶつけられるかもしれないという恐怖もある。プロの作家であれば、「原稿料」という報酬がある。しかし「同人創作」にはない。同人は趣味だ。趣味とはあくまで好きでやっていることであって、本人がやりたいからやるものでしかない。そして同人活動をしているのは大抵の場合、創作以外の仕事ややるべきことを持つ、ごく普通の人だ。
作家さんは、貴方と同じ、ただの人間だ。
悩みもするし、苦しむし、怖いと感じる。傷付くし、悲しむし、痛みも感じる。
何か特別な力を持っている訳でも、すごく心が強い訳でもない。中にはそういう人もいるかもしれないが、大抵の場合は貴方と同じごく普通の人が、趣味で、好きなものを作品にして発表しているだけだ。
だから、貴方がもし同人作品に感想を送りたいと思ったのなら。作者さんだって「もしかしたら見てもらえないかも、感想もこないかも、見返りなんてひとつもないかも」と思いながらも発表したということを、忘れてはならない。たとえ感想に返事が貰えなくても、喜んでくれたのか本当には分からなくても、それは作者さんも同じだ。このジャングルで、見返りを約束された者など一人もいない。それでも、貴方は感想を送りたいと思うだろうか。
見返りがなくても送りたい
返事がなくても何もなくても送りたい、とにかく感想を言いたい! 送ること自体が目的だ! と言うのなら、貴方は既に立派なジャングルのアニマルである。文明を脱ぎ捨て、是非「感想を送る」という「同人活動」に参加してほしい。その衝動は、作者の方が「作品をつくりたい!」と思った時と何ら変わりない、原始の雄叫びである。雄叫びが連鎖し森を震わせることで、作者さんだけでなく森の仲間が大勢活気付くこともあるかもしれない。パッションを心の中だけで終わらせず誰かに伝えることは、ジャングルにおいて尊いおこないである。「感想を送った」という事実だけで、既に貴方は「同人活動」に参加しているのだ。それは素晴らしいことだとゴリラは思う。
しかし、作品を作り出す側の方であっても「感想が届いたら嬉しい」「一つだけでも感想が貰えたら幸せだ」という気持ちがまったくない訳ではない。ジャングルでは狩りに出ても必ず獲物が獲れるとは限らないので、見返りを求めすぎるのは危険なことだ。だからこそ、苦労した末に獲物を手に入れた時の喜びはやはり素晴らしいものである。当然、感想を送る側の方にも「お返事が来たら嬉しいな」「作者さんが喜んでくれたらいいな」という期待はあることだろう。それを全て捨てろとは、ゴリラには言えない。希望を持つことはアニマルの生命力の源でもあるからだ。という訳で、「どうやったら作者さんが喜んでくれる確率がアップするのか、お返事を書きやすい感想になるのか」ということを解説してみよう。ゴリラが推奨出来るのはあくまで「希望を持つ」ことであって、「絶対に見返りがある」と保証するものではない。人類の皆様にはどうかご理解頂きたい。
さて、ここからは初めて感想を送るゴリラの皆さんや、感想を送ったことはあるけどもっとステップアップしてみたい、というゴリラの方に向けて、「感想の実例」をご紹介していこう。
完全ROMゴリラ
まずは今回ご協力くださるゴリラの方を一人、紹介させて頂きたい。
レイニーゴリラさんは、完全なROM専のゴリラである。SNSでも基本的にはあまり会話をせず、いわゆる「壁打ち」といわれるような、自分の感情を一人で吐き出すことを得意とするゴリラだ。しかし、そんなレイニーゴリラさんも感極まって好きな作品に感想を送ることが時折あるという。
今回は、その貴重な感想の例文をご提供頂いた。早速ご覧頂こう。なお作例はあくまで例のため、伏字などでプライバシーに配慮している。あらかじめご了承頂きたい。
いつも素敵な作品をありがとうございます。今回は新作のABの第一話について感想を言いたくて、送らせて頂きます。
まずCとB兄弟のなんて事のないやり取りひとつひとつにお互いを大切に思っているのだなと言うことが伝わってきてふわっと優しい気持ちになりました。この兄弟2人だけの間がとても愛しくて好きです。
Bくんがバイクの鍵を取り出した時ははっっっっ何そんなそんなかっこいい要素をまた一つ増やして!?強い強いよ(?)Bくん!と夜の高速とか走ってる姿を勝手に想像して盛り上がりました。大学受験がさしたることでもないというさらっと優秀なBくんの描写も大変気持ちが昂りました。そしてそこからの兄さんを後ろに乗せるのが至極当然で兄さんの役に立つのが喜びなBくんですよ。本当そういうところ!君の心にはいつだって兄さんが居るんだよ知ってたよ。永遠にブラコン。
この仲良し兄弟の中にやってくるD...。ここでばかりは(Bくんにとっては常に)お邪魔虫であるDへのBくんの舌打ち、笑いました。Bくんだ。Cくん大好き同士がばちばちやってるの最高です。かかってきた電話に苛立ちを隠さない声で出るBくんがまたBくんで対兄さん以外には負の感情を隠さないところがありますよね。相手がAだからと言うのもあるんですが。
お家から電話してくるAの様子と話してることを想像して二人が可愛いなぁと思いました。その後の遅れるとうるさい奴発言もはぁAB、ABですねありがとうございます。
玄関でBを出迎えるAには改めてBくんと一緒に暮らしているという事実が胸に刺さりAは生きてるんだよなぁそしてこれからBくんと一緒に生きていくんだよなぁという感動に打ち震えました。Aは生きてる。生きてるんですよね...霊だけど...。
肩に乗ってお話しするA、肩に乗るのが許されてる関係なんですよねABだ。どんどん語彙が死んでいってて申し訳ないんですけどABですね。好きです。
疑われていると言葉で目で向けられるAは中々辛いだろうなぁと。でもどうあってもAは悪霊であることは変わらないので信じてはいるけど疑うこともしておかなくてはいけないBにも同じように辛い気持ちがある。相手を思ってるからこそ。胸痛い場面ではありますが何かあったら自分の役目と決めているBくんにAへの想いを感じられて好きな場面です。Bくんの想いは重い。
そしてあの完全に気持ちの針が振り切れて壊れたので文章にするのを放棄してしまうのですが
CD、無理、好き
Cくんの想いが!Dへの想いがー!うわーあああんありがとうございます...ひとつひとつ大切なこれからもずっとCくんを満たすであろう思い出の数々、本編の2人の今までが浮かんできてこちらまで満たされた気持ちになりました...。
これは以前にもお伝えしたかと思うのですが、××さんの書くDが好きで好きで今回の洗濯機中古で買うDも笑いながら勿体ぶった風に説明するDもDで。好き。
Cくんの成長はいくら読んでも感慨深いものがあります。成長した大人になったというDにDだからですよと恋人のことだからと真っ直ぐにいうCくんかっこいいやら可愛いやらで無理です...受け止めきれない。溢れちゃう。DもDですよ...なんだ相思相愛ですね知ってる...お互いがお互いのこといいヤツって思ってる。知ってる...。ありがとうございます。ごちそうさまでした。
私は××さんの作品自体は勿論、作品世界で生きているキャラクターのことが大好きで大切に思っていることが伝わってくる文章が大好きです。連載の1話目、それぞれのキャラクターの距離感間合いが心地よく何より相手を想い合ってるんだなとわかる描写がたまらなく良くて幸せな気持ちになりました。続きも楽しみにしております。
最後になりますが拙い感想(殆ど叫びで申し訳ない)をここまで読んで頂きありがとうございました。いつも素敵なおはなしを読ませて頂くだけの私ですがこれからもかげながら応援しています。
レイニーゴリラさんは、ご自分で言う通り感想を言葉にすることにはあまり慣れていない。感想初心者さん、という訳だ。だがこの感想は、作品の中で自分が好きだと感じた場所を具体的に書いておられるので、作者から見れば「そこを好きだと思ってもらえたのか!」ということが分かりやすい。言葉の巧拙ではなく、気持ちを伝えることが大切だということがよく分かる、素晴らしい感想である。これは「具体性」というもので、語彙や日本語の文法などよりも時には重要な要素である。どんなに語彙が少なくとも、「自分の作品のどこを見て、どう思ったのか」ということを伝えてくれる感想は「具体的」で、作者にとっては嬉しいものなのだ。具体性のない感想は、極端な場合、他の作者さんと間違えて送っても気付かれないような「テンプレ」になってしまうこともある。勿論テンプレ感想でも感想がないよりは嬉しいという作者さんもおられる。しかし貴方がその作品を読んで好きだと思った気持ちは、他の作品では代えられないもののはずだ。せっかくこの世にたった一つの作品と出会ったのだから、その作品にしかない良さを言葉に表してみよう。それこそが「感想」である。
感想初心者さんの場合、まずは自分がその作品を読んでどこが好きだと思ったのか、ということを箇条書きにしてみよう。大好きな作品を見返しながら、自分の好きなものを書き連ねる。これだけのことでも、ゴリラにとっては楽しい時間だ。
更にそれを、箇条書きから文章にしてみよう。言葉は拙くても構わない。「どの部分で」「どう感じたのか」ということが書いてあれば素晴らしい。レイニーゴリラさんは沢山の「好きな場所」を挙げているが、一つだけでも、二つや三つでも構わない。レイニーゴリラさんのように沢山あったっていい。
感想部分を書き終えたら、冒頭には「挨拶」を入れよう。初めて感想を送る相手ならば、「はじめまして。いつも作品を拝見しています」「はじめまして。○○という作品で××さんの作品を知ったのですが、とても好きです」などの言葉を入れると良いだろう。
そして感想部分の終わりには「シメの挨拶」を入れるとぐっと礼儀正しく、気持ちも伝わりやすく見える。「これからも作品を楽しみにしています、頑張ってください」「あなたのかく○○が好きです、続きを待っています!」など、作者さんにこれからも活動していってほしい、という気持ちを伝えると良いだろう。
感想苦手ゴリラ
次のゲストゴリラをご紹介しよう。
バナナに目がないゴリラさんは、ご自身が「言葉」を使った創作活動をしていらっしゃる。しかし、感想を書くのは苦手なのだという。どんなに文章を書いて創作をしていても、創作と感想を送るのはまた別物なのだそうだ。感想を書くのが苦手ゆえ、バナナゴリラさんは主に匿名メッセージツールなどで、短い一言感想を送ることが多いらしい。
では、バナナゴリラさんが実際に送ったことのある感想をご覧頂こう。
・〇〇さんの今回の作品には、ずっと置いていかれる側だったAが今度は自分が置いて行く側に立ったときの切なさが込められていて、すごく心に沁みました。「〇〇〇〇」という最後の言葉が本当に好きです。
・なんて穏やかな〇〇の景色…! 最後に「そういえばこの子たちは〇〇ではなかったんだな」とつきつけてくるギャップがたまりませんでした。
・モチーフの選び方やとまどいの描写が全部好きです!
バナナゴリラさんは「具体性」のある感想を書かれている。好きな場所を一つ伝えてもらえるだけでも、作者は有難く思うものだ。また、このような「一言感想」は挨拶を省略することも多く、感想初心者さんでも送りやすく感じるだろう。作者の方も軽い気持ちでお返事がしやすく、SNSなどでは気軽にやり取りが出来るという利点もある。インターネットを使いこなすゴリラのスマートな感想である。しかしバナナゴリラさんにもお悩みはあるそうだ。そのお悩みとは、「感想が尻切れトンボになってしまう、言いたいことを伝えられている自信がない」というものだ。実に普遍的な悩みであり、共感する方も多いことだろう。何故感想が尻切れトンボになってしまうのか、早速解説していこう。
作例の中に「キャラクターのギャップがたまらない!」という旨の感想がある。これを例として解説しよう。
まず、この一言感想は「たまりませんでした」で終わる。しかしこれでは「感想」を言うための前準備しか終わっていない。食前酒だけ出して、サラダもない有様である。尻切れトンボだと感じるのも当然だろう。
では、この尻切れ感をなくすにはどうしたら良いだろうか。修正例を見てみよう。
最後に「そういえばこの子たちは○○ではなかったんだな」とつきつけてくるギャップがたまりませんでした。原作では、この子たちは○○のように見える時が多くて、私はそこが好きです。でも、時々○○ではないということに気付かされる瞬間、なんとも言えず寂しいような、胸が締め付けられるような切なさを感じることがあります。原作ではあまり見えない部分なのですが、こうして××さんの作品の中で○○ではないとはっきりかかれた彼らの姿を見て、より強く切なさを感じました。こんな気持ちにさせられる作品をつくってくださって、ありがとうございます。
この感想であれば、尻切れ感は完全に払拭されていることだろう。いわゆる「感想っぽい」文章だと感じる人も多いのではないか。
ここで重要なのは、「何故ギャップがたまらなかったのか」という自問自答である。「何故」を自分に追究することは、<貴方がその小説で「書きたいもの」とは何だろうか?>でも重要な行為として紹介させて頂いた。小説を書くのと同じように、自分が心の中で感じたことを言葉にする、ということは感想においても大切なことである。
何故その作品のギャップが「たまらない」と思ったのか。原作にもギャップがあるからなのか、原作では見えない部分だからこそ二次創作で見られてたまらなかったのか、それとも自分がギャップのあるキャラに目がないゴリラだからなのか。感じたことは貴方にしか分からないし、その気持ちは貴方にしかない。似たような気持ちになる人がいたとしても、まったく同じ気持ちではない。だからその気持ちを、自分に問い詰めて正直に書くといいだろう。
しかし詳細に自分の気持ちを書くということは、文章を書き慣れていない方であれば難しく感じることもあるだろう。あるいは、作者の方と解釈が違っていて、伝えたら不快にさせてしまうかも、と心配になることもあるだろう。読む方が解釈違いだと不快になったらどうしよう……という気持ちは作者にもある。作者の方はそこで勇気を出してくださったのだから、感想を送る貴方にもどうか勇気を振り絞ってほしい。「ワンランク上の感想」「感想っぽい感想」を送りたいのなら、アニマルとして精一杯頑張ってみよう。
だが、どうしても怖い、不安だ、というのであれば無理をすることはない。どんなアニマルも生まれたての時はガクガク震えながら立ち上がるものである。走ることを身上とするウマでさえ、生まれてからしっかりと走り出すまでには三十分はかかるという。感想が苦手な方は、まずはバナナゴリラさんのように、「一言感想」を送るところから始めると良いだろう。ステップアップしたくなったら、いつかその時、ゴリラの言葉を思い出してくれればいい。ジャングルはいつも貴方の近くにあるのだから。
ROMだけど感想送りまくりゴリラ
次のゲストゴリラをご紹介しよう。
ビーンズゴリラさんは、少しだけ創作にチャレンジしたことはあるが、基本的にはROMと呼ばれるいわゆる「読み専」のゴリラである。しかしビーンズゴリラさんは、ROMながらかなりの数の作家さんに感想を送っているらしい。感想を送る際は緊張もするが、好きな作品に感想を送ることは人生の楽しみなのだそうだ。
「ROMでも感想は書ける! みんな推し作品に感想送ろう!!」
と力強くハジけるビーンズゴリラさんが、普段送っている感想の例文をご覧頂こう。
はじめまして、ビーンズゴリラと申します。
××様が書かれていた連載作品を全て拝見しました。最高でした本当にありがとうございます...!
○○のゲーム内での設定がきっちりと作品に落とし込まれていて、なおかつそこから○○が何を思っていたか、何を求めていたか、などがお話の中で丁寧に描写されていて本当にすごいと思いました。
主人公や○○の感情の機微、周りの状況などがすごく細かく丁寧に描写されていてお話の中に引き込まれ、見つけたらすぐに読んでしまいました...
主人公が作品内で○○への支援魔術を詠唱していた時、詠唱もあそこまできっちりと作り込まれていて感動しました...!○○の技名にも含まれている『△△』という言葉を見つけた時、顔のにやけと感謝が止まりませんでした。
○○は新密度が上がっていくにつれて分かっていく素の顔が本当に大好きで、そんなところが丁寧に描かれている××様の作品が読めて本当に幸せです。
主人公が、自分がそこで出会った○○のことをどれだけ信頼しているかも綺麗に描かれていて、二人がそれぞれ何を思っているかがよく分かって最高に尊かったです...!!ありがとうございます!!
語彙力があまりなく、まとまらない文章ですみません...
改めて、最高に尊い作品をありがとうございました!これからも陰ながら応援しております...!
ビーンズゴリラさんは、作中のどの部分が好きかという「具体性」のある感想を書かれている。更に自分がどんな気持ちになったのかだけでなく、何故その気持ちになったのかという理由も原作の感想と併せて書いている。これが先程解説した「『何故』を自分に追究すること」である。このような感想であれば、作者の方も「自分の作品のここを気に入ってもらえたんだな」と喜び、大好きな原作について共通の話題でお返事がしやすいことだろう。
更にもうひとつ、重要なテクニックを解説しよう。
ビーンズゴリラさんの感想には「見つけたらすぐに読んでしまいました」という一文がある。これは作者にとっては非常に嬉しい一文だ。自分の作品と読者が出会った時のファーストインプレッション、その時の行動というのは、作者にとっては気になる部分だ。人間は第一印象が大切、などという言葉もある。やはり初めて出会った瞬間というのは特別なもので、それは人間であれ作品であれその一瞬だけの、二度とはないきらめきだ。そのきらめきをしっかりと言葉にして伝えれば、作品に対する思いは格段に伝わりやすくなるだろう。感想ゴリラを目指す皆さんには是非参考にして頂きたい。
更に、ビーンズゴリラさんは今回のコラム掲載にあたって、「ROMだけど感想を書く」ということについてコメントを寄せてくださった。ビーンズゴリラさんの有り余るパワーが皆さんにも届くよう、コメントを全文掲載しておく。
感想を書く時は、『この作品を生み出してくださった神に絶対感謝を伝えなきゃ!!』ていう感謝の気持ちが毎回一番大きいです。「貴方が書(描)いてくださらなかったら、こんなに素晴らしい推しcpと出会えなかったかもしれないんです!作品を書(描)いて、しかもそれを公表してくださり本当にありがとうございます...!!」という、溢れ出す感謝の念を伝えたくて仕方がなくなってしまうことが多いんです。
なるべく具体的に「貴方の作品のここが大好きです!」と感想に書くのもそんなエゴの延長線上で、私が神々にただお伝えしたいだけなんです。推しカプでこんなシーンが見たかったんです!書いてくれてありがとう!!の気持ちが抑えきれなくなるんですね。
あと大変正直な事を言うと「この感想が神のエネルギーへと変わって、もう一本推しカプ書(描)いてくださらないかな...」という打算もほんの少しあります。だって最高の作品だと約束されている神が書(描)いてくださった推しカプ、いくらでも拝見したくないですか!?私は拝見したい。
でもあくまで打算部分はおまけ程度なので、大体「感謝:打算=9:1」くらいの割合です。圧倒的感謝です。御作品様を生み出してくださる神々、いつも本当にありがとうございます。私達ROM専は貴方方のお陰で生き永らえています。
次に我流感想の書き方コーナーですが、こちらは飛ばしていただいて全然問題ないです。ゴリラさんがもっとためになる解説を載せてくださるはずなので、皆様そちらを参考に感想を書こう!
私はまず最初に作品を拝見して、特にお伝えしたい「ここ好きポイント」をいくつか絞ります。後はその「ここ好きポイント」を、何故好きだと思ったのかひたすら考えてます。
「好き」の理由を上手く表現できなくても、一先ずその時感じたことをモニョモニョ状態のままメモに書いています。そして後は何回も枕を叩きながら作品を楽しみつつ理由を深掘りしたり、「尊い 類語」みたいにモニョっとした感情に近い言葉で検索をかけ、そこから当てはまる言葉を探しながら感想を書いています。
ここまで色々書きましたが、相手を傷付けるようなことを書いていない限り、感想は別に短くても、拙くても良いと私は思っています。それよりどれだけ短くても、拙くても良いから、まずは軽率に相手の方に貴方の「好き!」を伝えてほしいと何より思います。貴方の感じたそのプラスの感情を、相手の方にも伝えてほしい。そうやってプラスの感情をみんなで伝播させていけたら、いつか素敵なものに繋がっていくんじゃないかなって私は思います。
最後に、以前ゴリラが「感想」というものについて書いた記事を紹介させて頂きたい。基本的な「感想の書き方」はここで説明しているので、こちらの記事からの抜粋を掲載しておこう。
「創作と感想とゴリラダンス」
1.挨拶
挨拶は大切だ。ゴリラも挨拶をする。文字数が少なく制限されている感想フォームなら仕方ないが、そうでない場合は「はじめまして」「いつも読んでいます」などの言葉を冒頭に入れると分かりやすい。
2.作品を知ったきっかけ
どこの投稿サイトの検索から、知人のオタクの紹介で、SNSのカプ名検索から、などの「知ったきっかけ」を書くと、作者さんは「なるほど、じゃあ次もここに投稿しようかな」「次もカプ名入れとこうかな」などと参考にしやすいものである。
3.どの作品のどこがどういう風に好きか
これは当たり前のことのようだが、ここが一番オリジナリティの出る場所である。貴方が好きだと思ったその感性、心、センスは、絶対に他人とは被らない。同じ作品を読んでも思うことは違うのが霊長類だ、だからこそ創作は面白い。
「どこが」「どういう風に」好きなのか、ということを説明するのは、実は難しい。それこそが小学校の読書感想文の難しさだからだ。やろうとしてもできず、「全部好き……」と彼氏の模範解答のような感想になってしまう人も多いかと思われる。しかし、だからこそ、頑張ってここを書くと作者さんには喜んでもらえるものなのである。もちろんゴリラの話なので、書けなくてもちっとも構わない。
4.応援
最後に「これからも応援しています」などの言葉を添えると見栄えが良いし、作者さんも嬉しいものである。
この3について、それが知りてえんだよ!! という人類の方はいらっしゃるだろうか。もしいるのなら、貴方は小説を書く才能の種を持っている。是非その心を鍛えて小説にチャレンジしてほしいのだが、ゴリラの野望はここでは置いておく。
そう、それは「文章で何かを表現する」という技術の基本であり、極意でもあるのだ。自分がどう思ったのか、何を感じたのか、ということを深く掘り下げて言葉にして綴る。その言葉が、読んでくれた人に同じ感情や感覚を呼び起こす。これこそが文章の楽しさのひとつである。
同人誌の感想という行為にあたって具体的にどうすれば良いかということを、ゴリラ目線で書いておく。参考になれば幸いである。
・まず、自分が一番好きなシーンを読み返してみるといいだろう。何度も読み返し、「むり……好き……」という気持ちを高めてみると良い。
・気持ちが高まったら、「今どんな気持ち?」と自分に質問してみるのだ。ものすごい幸せで泣きそう、とか。切なくて悲しくて胸がビッグバン、とか。いろんな気持ちがあると思う。それをメモする。
・次は、「どうしてその気持ちになるの?」と質問する。ここが難しい、という人も多いと思うが、頑張ってほしい。なるもんはなる、で終わると文章にするのが困難だからだ。たとえば前半で書かれた伏線がそのシーンで回収されて気持ちが良かった、のかもしれない。それまでハラハラしながら見守ってきた推しカプがようやく付き合うシーンだから、かもしれない。キャラがずっと悩んでいたことが解決されて幸せそうにしているから自分も幸せ、なのかもしれない。そんな感じで理由を見付けたら、これもメモする。
・メモしたものを見返して、そのまま他人に見せられるような言葉ならば感想文を書きにレッツゴーだ。しかし大抵はゴリラ語だったり、さすがにこれを作者さんに送るのは……というものだったりする。そこで辞書の出番だ。紙の辞書でもいいし、webの辞書でもいい。たとえばメモした中に「幸せで泣く」という言葉があるなら、「幸せ 泣く 例文」などと検索してみるのだ。「やばい」とメモしてあるなら「やばい 意味」「やばい 類語」などもいいだろう。検索して、いい感じに自分の気持ちにぴったりくる言葉を見付けたら、それを使って感想文を書くのである。最初はどれを選んでいいか分からないかもしれないが、何度も同じことをすれば慣れていく。いつかは辞書を見ずとも、ぴったりの言葉を選べるようになるはずだ。
終わりに
いかがだっただろうか。今回はジャングルのゴリラの皆さんが普段書いているありのままの感想を、彼らのご厚意によって掲載させて頂くことが出来た。三人のゴリラの皆さん、ありがとう。
三人はそれぞれに感想の書き方も、送るスタンスも、送るのに使うツールも違う。文章を書くということ自体に対する慣れの度合いも違うし、知っている言葉の種類も広さも違う。だが、これらの感想を送って嫌がられたこと、作者さんと険悪になったことは、誰一人としてないそうだ。
感想を送る側になれば、ゴリラとて緊張する。作者さんは沢山の感想を貰っているだろうから迷惑なんじゃないか、自分の言葉では上手く伝えられないんじゃないか、この作家さんの気持ちに反することを書いてしまっていたらどうしよう、そんな風に不安になることはゴリラにも沢山ある。しかし、そこで「怖いから送るのやめよう」と弱気になって、もし作者さんが「読者さんに不快に思われてたらどうしよう、反応がないから分からない……こんな作品、かいても意味ないのかな……」と作品をつくることをやめてしまったら、ゴリラは死ぬほど悲しい。そんな事態になるくらいなら、ゴリラが恥をかくぐらいのことは屁でもない。もし感想を送ることで、たとえ返事がなくとも、作者さんが「良かった、この作品を好きな人がいるんだ、またかこう」と思ってくれるなら、こんなに嬉しいことはない。
ゴリラも実際に好きな作家さんに感想を送って、お返事を頂いたことがある。お返事の言葉は温かく優しく、そしてその後更新された作品はいつもと変わらず素晴らしかった。自分の送った感想が力になったかどうか、本当のことはゴリラには分からない。けれどその作家さんの更新を追い続けられること、新刊を手に入れられること、そして時々は感想を送って、温かいお返事を頂けること。それら全てが、楽しい「同人活動」だと感じる。どうか皆さんも、この「同人活動」に参加する「一般参加者」となって、楽しみを共有してみて頂きたい。見返りがあるかどうかは誰にも分からないが、見返りがないからこそ伝えられるものというのも、世の中には確実に存在する。この楽しみを一人でも多くのゴリラが知ってくだされば、ゴリラは嬉しく思うのだ。
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