キミはだれ?
今でもよく覚えている。最初に蹴つまずいた日のことを。
それはちょっとした夜間の仕事だった。
疲労から行動と思考がちぐはぐになって、同僚だった韓国人から「お前は幼稚園児だ、バカだ」といった罵りを受けた。
その時、わたしこの仕事を愛してないってわかった。
帰ってから布団の中でだれにも気づかれないように泣いた。
それから夢も希望も無くなって、ただひたすら用水路沿いを歩いてた。本当にただ毎日毎日雨でも雪が降っても歩いた。
絵を描く意欲なんてまるで無くなってた。
あれから7年くらいはたったかな?
少しはましになったかな?
色んな声が染みついてる。幼稚園児、バカ、家事をしろ、常識がない、本当はそれじゃいけない、それじゃ子供みたいでしょう、そんな歳になってまで、と。
呪いのようだった。
最近やっと呪いは解けて逃げ切れたと思ってた。
でも恋人がわたしにたずねた。
きみはだれ?
何度も何度も。
最初は意味がわからなかった。何度も何度も自分の名前を叫んだ。
それが批難の言葉であることがようやくわかった時、今までの点と点が繋がった。
それはそれは悲しかった。
そろそろ年貢の納め時?
違う。
わたしはわたしの小さな声に従う。
できるはずだ、と。もうわたしは大丈夫だと。
わたしの生き方からは他人を納得させる答えなんて、だせない。
そんなこと意味がない。
そんな夜の結論でした。
遠山ハルでした。