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心の話

私が住む家には今私を含め3人の人間がいる。
静かで冷たいと言われる男。頑固で怒りっぽく優しい女。そして私。

今から話す話なんて、どんどんスルーしてほしい。
たかが心の話なんだから。

はじめに。

私の中には渦がある。それはとんでもなく昔から、私がそれを産み出したか、または、外からやってきたものなのかわからない。
どでかい渦。たぶんそこには、自分が知るべき自分の核があると思うけれど、見えづらい。

そんな渦も時たま誰かに話したくなる。
しかし世間にはなかなか話の聞き上手な人間はいないもんだなと、がっかりもしていた。もちろん、自分のことを聞き上手とは思わないけれど、ただ聞いて、意見を控え、せめて共感し合うこと、そのくらいはできる方だと思う。
しかし、世間とは、誰よりも早く、自分の思いや意見を言わなければ二番煎じやバカだと思われてしまうものでもあるとは最近感じる。

まあ、そんな「世間」から遠ざかってしまえば、そんなもの大したことではないのだが。


そして、渦、渦、渦。私の渦。

静かで冷たい男は渦のことを知っている。しかし絶対にそれについては言わない。その男の経験則から、その話を誰にしても無駄なのだと知っているので口にすることすらしないと心に誓っているのだ。

優しい女はお喋りだ。まっすぐに自分の意見をのべる、ある時は頑固な女だ。彼女は、何も言わない者は何も考えてすらいないとつい最近まで思っていた。彼女は自分が正しいと思ったら最後、絶対に貫き通す頑固さがある。彼女には渦がなんなのか理論的にしか理解しない。しかしそれでも知ろうと努力さえしてくれる。


日常として起こる茶番劇。

脳が疲れて、「渦」にのみこまれてしまうとずっと暗い気持ちでいなくてはいけなくなるみたいだ。鬱みたいな状態。身体すら辛いようになる。それは言葉にできない体験である。


優しい頑固者は、それでも言葉を探してくれようとする。この問題の正解も見つけてしまおうとする。
私の暗い鬱状態は分かりやすくて、そしてとても心配もするが、ごく稀に思うようにいかないと怒る。結局、冷たい男と話せ、と私を切り捨てるフリをする。

静かで冷たい男は、そこには正解などないから、うーんうーんと唸っていろ、と私に言った。なにもできないとうだうだ呟いていることがむしろ正解かもしらんと。
この男は鋼の精神で誰にたいしても無関心でいることができるのだ。


さて、眠る。眠るだけ、眠る。そうすれば、朝にはまた元通り。



でも私もそろそろ腹を括らねばならない。
いつかこの家の3人は3人とも死ぬ。
それまでに、この渦の核を掴む必要がある。
助けて、助けて、助けてと夜にはまだ怯える。
また茶番を繰り返してしまう。


そうして話を聞くのが嫌になった男が麻雀しに穴倉へ帰る途中で言うた。



書け。書き続けろ。本を書くんだ。
描け。描き続けろ。絵を作るんだ。
読め。読み続けろ。本から学べ。


だから、


さよならさよなら

寂しい寂しい

苦しい苦しい

怖い怖い


あ、みえた、みえた。

みえた?

これを書いてるとなにがあるっていうんだ?


でも、何故か書いてるの今。

盲目に。




誓う。


絶対にいつか、核を掴んでその時は、世にも美しい世界を描くんだ。芯の芯からまっとうな頭で。


さて、今夜はこの辺で。
まるで、よくわからない遠山ハルでした。
おやすみなさい。





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