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夏風邪の悪夢
【ゴホッゴホッ!!】
現在、8月X日、日差しが照りつけ、溶けてしまいそうに暑い中、俺は夏風邪を引いてしまった。
ピピピピ!!ピピピピ!!
アキ)38.2…ちょっと熱ありますね…
ロイト)真叶が風邪なんて…珍しいこともあるもんだね。
真叶)自分でもびっくりだよ、ケホッ、ケホッ
ロイト)とりあえず、今は安静にしておくのが1番だね…
アキ)ですね…
ロイト)アキちゃんは風邪移ったら大変だから、タオルの替えと、お粥つくっといてほしいな。
それが終わったら、学校行っておいで。
アキ)わかりました!!
アキはそういうと俺の頭に置いてあったタオルを素早く回収し、そそくさに部屋を出て行った。
真叶)…にしてもごめんね。事務所まで遠かったから居候させてもらっちゃって。
ロイト)風邪で倒れられるよりよっぽどマシだよ。
真叶)にしても良いねえ…和風な感じの家って。風鈴の音が心地良いなあ…
ロイト)お気に召したのなら良かった。
僕もご飯食べたら少しだけ薬局行ってくるね。
真叶)わかった、ゴホッありがとう。
ロイト)それで家に帰って、また、仕事に行ってくるよ。今日は帰り遅くなりそうだけど大丈夫かな?
真叶)大丈夫!!ただの夏風邪だよ!!
そういって俺はロイトのほうに向けてピースを向けた。
ロイト)調子に乗るなっ
ロイトは俺のおでこにパシっとデコピンをした。
アキ)真叶さん!!お粥できましたよ!!
真叶)ありがとう、!ここに置いといてくれると嬉しいな。
アキ)あーんしてあげましょうか?♡
真叶)早く学校に行ってきなさい!!
アキ)はーい…
アキは不貞腐れながら学校に行く支度をし始めた。
ロイト)そうだ、アキちゃん何時ぐらいに帰ってくる?
アキ)うーん、今日遅くなっちゃうかも…18時半ぐらいだと思います!!
ロイト)それなら僕と同じぐらいか。
それじゃあ真叶、大人しくしてるんだよ。
真叶)はーい
そういって2人は玄関から出て行ってしまった。
…
…
…
うーん…暇だなぁ…
やることないし、ちょっとスマホでYauTubeでも見ておこう。
…
…
真叶)(ハハッなにこれ面白い笑)
ロイト)ただいまってなにYauTube見てんだよ…安静にしててよ…
真叶)ごめんごめん暇で暇で…
ロイト)もう…あ!あとここにポ〇リとホットレモン。好きな方飲んで。あと、じゃが〇こと冷えピタと薬。
真叶)ほんとにありがとう!!
ロイト)それじゃあ俺そろそろ仕事行ってくるね。
真叶)はーい行ってらっしゃいー
そういって俺はロイトを見送った。
…やることがない…どうしようものか…
(とりあえず、じゃが〇こを食べようかな。)
俺はじゃがりこの二をあけて、YauTubeをまた立ち上げた。
ゴホッゴホッ
さっきより頭も痛いし、咳もひどい。
少し視界もぼやけて意識が朦朧としてきた。
(流石に寝ようかな)
そう思い俺は静かに眠りについた
…
…
…
_____________________________________________
真叶)あれ…俺寝てたんだっけ…
目を覚ますと、もう日は暮れていた。
そして障子のほうに目をやると、人影が2つ。
真叶)…ロイトとアキ!!帰ってきてんだ!!
俺は体をすくっと起き上がらせ、2人が部屋に入ってくるのを待った。
…なにか様子がおかしい。
真叶)2人ともなんでそこにずっと突っ立ってるのさ。俺もう元気だから部屋入っても大丈夫だよ?
ロイト、アキ)…
2人は入ってくる素振りすら、話そうとする素振りすらも見せなかった。
真叶)はあ、もう!!なんなの2人とも!!
俺は立ち上がり、2人のもとへ向かった。
そして、障子に手をかけ、それを開けようとした。
その時あることが脳裏によぎった。
(なんで、2人とも家にいたのに、電気の1つもついていないんだ?)
帰ってきたら電気の1つはつけるだろう。
なのに、ここから見た感じどこの部屋にも電気はついていない。
しかもこの部屋はリビングに1番近い部屋、
電気がついていたら障子から光がもれてここまで電気がついていることがわかるはず…
それに、人が2人いてこの異様な静けさ…
俺は【この障子を開けてはいけない】と確信した。
それじゃあ、そこにいる2人は誰なんだ!!
訳のわからない不気味さに耐えられず、俺は部屋の電気をつけようと後ろを振り返った。
真叶)…は?
そこはさっき俺がいた部屋ではなく、あたり一面雪景色だった。
見知らぬ土地、見知らぬ景色。
真叶)えさっっっっっっっむ!!!
俺はもう一度ロイトとアキのほうを振り返る。
だがそこに先ほどの障子と影はなく、同様の雪景色が広がっていた。
(なんだよこれ。どうしよう…)
と思っていると、なにかに服の裾をくいっと引っ張られた。
引っ張られたほうに目をやると、小さな子どもが1人。
(俺にそっくりだな…)
そして、多分俺であろう人物が俺と反対方向を指さした。
そこには一軒屋がぽつんと建っていた。
北欧風にありそうな、一軒屋。外が暗い分、家の中の光がよく目立つ。
真叶)…
訳がわからないが今になればどうでもいい話。とりあえず寒いからあの家で暖をとらしてもらおう。
俺は少し駆け足で家のほうに向かった。
コンコンコン
ドアを叩いてみるが、応答がない。
真叶)すみませーん!!誰かいますか?
問いかけてみても応答はない。
なんかもう全てがどうでもよくなり、俺はその家に入ってみることにした。
…
…
…
家の中には誰もいない。
暖炉の火がパチパチと音をたて、古時計がカチッカチッと音が鳴っている。
そして机の上にはココアと、ホットミルク。
なんだか懐かしい気分だ。
俺は着ていた上着を椅子にかけ、部屋の中をぐるりと見て回ることにした。
暖炉の上には、くるみ割り人形や小さな赤い箱のプレゼント、赤いソックスなどが飾り付けられている。
古びた本棚の中には本がぎっしり、
どれも見たことないばかりの本だ。
(いつか読んでみたいなあ。)
玄関付近にはでかめの分厚いコートが三着と、マフラーがかかっていた。
部屋の隅には小さな丸い机の上に置かれた太い黒縁のメガネと、ラジオ。机にもたれかけられているヴァイオリン。
そして隣の物入れには黒電話が1つ。
真叶)ちょっとメガネかけてみちゃおう!!
黒縁のメガネをかけてみる。あまり度は強くなかった。
…ここまで見て、この家には背が高めの少し目の悪い、趣味がヴァイオリンと読者であろう男性の姿が思い浮かんでくる。
最後に横に長い古風なタンス。タンスの少し上には窓があり、赤いカーテンがかけられている。カーテンを開ければ外の景色がいつでも見れるであろう。
(おお?)
タンスの上には何やらいろんな写真が飾られている。パッとみ、全て家族写真であろうものということはわかった。
(どれどれ…少し見てみよう。)
高身長の男性と、気品であふれる髪の少し長い女性。女性のほうはこの男性の妻であろう。
(これは結婚写真かな?)
少し謎解きっぽくて面白くなってきた。
もっとこの家の男性について知れるような写真はないのかどんどん見ていこう。
次の写真には、髪がサラサラの色素の薄いの子どもが1人。これはこの男性の息子であろう。
そして母と一緒にケーキを食べている先ほどの少年、誕生日なのであろう。
バースデーケーキのチョコには、11.26Happybirthdayと書かれている。
そして次の写真。先ほどの少年と、その母。そして、母に抱っこされるもう1人の子ども。
(もう1人子どもがいるのかな?)
先ほどから数年たったであろう写真。
そりゃ新しい子どもができていてもおかしくかいか。
少年と、先ほど母に抱っこされていた子どものツーショット。2人とも成長している。
片方の少年はお土産で買ったのか、摩訶不思議な形のサングラスみ頭の上にかけて、キメ顔をしている。
そして、もう1人の少年は片手に飛行機の形のぬいぐるみを抱き、こちらに向かって満面に笑みでピースをしている。
多分この家族は相当仲がいいのであろう。
だが、この家にそれほどの家族が住めるスペースはない。
(この男性は家族と別居しているか、単身赴任しているかなのか?)
次で最後の写真だ。
ど真ん中に置かれているため、お楽しみとして、最後までみないようにとっておいたのだ。
真叶)どれどれ…
そうして写真を覗きこんだ。
…
…
目を見開いた。
とても驚いた。その写真は俺が嫌というほど眼に入れてきたもの。
椅子に大きく座り込んだ父、父の後ろに無愛想な顔をした兄、兄の隣に綺麗な顔で笑う母、そして、母の前にポツリと佇む″俺″
全てを悟った。ここは俺の父の家なのだ。
さっきまで見ていた写真も映っていたのは父と母と、兄と俺。
一気に寒気がした。その場も凍り付くような雰囲気になっている。暖炉の火は消え、古時計からはゴーンゴーンと鳴っている。
俺は今すぐこの家から出ようとしたが、その途端後ろから声がした。
守*てや、れ■*てごめ■な
気がつくと俺は真っ暗暗闇の中にいた。
今はただただ呆然としている。
??)ねえ、真叶。タルトをつくったの。
良かったら、一緒に食べない?
??)真叶、明日水族館に行こう。
母さんと兄さんのの声だ…
俺は呼ばれるがまま2人のほうに行こうとしたが何故か体が動かない。
(なんで…)
そんなことを思っている間に話は続いて行く。
真叶の母)ねえ貴方!!またマキが満点とったらしいわ。
真叶の父)ああ、それは凄いな
真叶)ねえ貴方、最近マキの点数があまり良くないの。
真叶の父)そうか…そのことは、俺から言っておくよ。
真叶の父)なあ真希…こんなこと言いたくはないが、医者になりたいなら、もう少し勉強を頑張らないとダメなんじゃないか?
真叶の兄)…え?俺別に医者になんてなりたくないよ…?
…
…
真叶)ねえねえ兄さん、遊ぼうよ
真叶の兄)…ごめんな、真叶。俺ちょっと勉強しなくちゃいけないんだ…
真叶)そっかぁ…
真叶の兄)ごめんな。ほら、小遣いやるからなにか好きなもの買っておいで。
真叶)えー!!ありがとう!!
真叶の兄)…遊べないかわりに玄関まで送ってあげるよ
…
…
真叶の父)おい真奈美!!!話と違うじゃないか!!!
真叶の母)違うもなにも、あの子は医者にならないといけないのよ!!!
真叶の父)真希の人生なんだから真希の好きなように生きさせるべきだろう!!!
真叶の兄)…なあ真叶、俺、頑張るから、お前が苦労しないように。
(ただただ呆然と立ち尽くすことしかできない。今後ろでなにが起こっているんだ?)
真叶の父)ごめんな、真希、真叶。俺はもう真奈美を、あの女をどうすることもできない…
真叶の兄)ごめん真叶、ダメだった、本当にごめん
(え、なに、なんなの)
咄嗟に後ろを振り返った
真叶の母)真叶、
振り返ったところには母の手は俺の頬に触れ
口を開いた
/真>叶…貴方*だけ,は:私をº裏切らない*でね▲
_____________________________________________
真叶)!!!!
俺は布団からガバッと身を起こした。
上手く息が吸えない、頭が痛い、目もとがよく見えない
アキ)あ、ロイトさん!!真叶さん起きましたよ!!
ロイト)お、ほんとに?!
ロイトが真叶の近くまで早歩きで移動する。
真叶)ゲホッ、ゴホッゴホッ
アキ)あ、あぁ、だっ、大丈夫ですか!?
アキはそう言い俺の背中をさすってくれた。
ロイト)まな、ってこれは、思ったよりひどいね…
真叶)カヒッ、カハッ…ご、ごめん
ロイト)ちょっと僕、水をとってくるよ。アキちゃんちょっとだけ真叶をよろしく。
アキ)はい!!
…
…
…
それから数分、俺がいない間アキが背中をさすすってくれ、ロイトが水を用意してくれた。
ロイト)大丈夫かい?
真叶)うん、水飲んだらけっこう落ち着いたよ。
ロイト)それなら良かった。
真叶、ひどくうなされてたんだよ。
真叶)そ、そうだったんだ。
ロイト)なにか悪い夢でも見たの?
真叶)夢…
何故だろう。とても悪い夢を見たはずだ。
けれどなにも覚えていない。
心地悪さだけが、体に残っている。
真叶)夢、見た筈なんだけどなんも覚えてない…
ロイト)はあ、なにそれ。
真叶)ご、ごめん
ロイト)…、
気まずい空気になってしまった。
覚えていないから謝ることしかできない。
少しでも思いだそうと頭を悩ませたが、思いだせない、いや、思いだそうとしたくない。
真叶)…
アキ)…はあ、どうせ真叶さんのことだから、カボチャタルトに溺れて死ぬ夢~とか、そういうの見てたんじゃないですか?
ロイト)ちょ、アキ!!
アキ)それか、小説の読みすぎで、カボチャタルトが犯人のお話で、大好きなカボチャタルトに崖まで追い詰められて、「お、お前!!俺を…裏切るのか!?」みたいな展開になってタルトに崖から落とされる夢とか。
ロイト)ア、!
真叶)アッハハ!!なにそれ!!笑笑笑
ロイト)ま、真叶、
真叶)かもしれない!!笑
いやぁ~嫌だなあ!!大好きなタルトに殺される夢なんて!!!
アキ)きっと、じゃ〇りこに浮気したからですよ。
真叶)えぇぇ??
ロイト)ハハッそうかもね。きっとそうに違いない。それじゃあ真叶、このじゃがりこは没収だ。
アキ)あとスマホも。
真叶)う、うそお!!
ロイト)ハハッ、それで真叶、晩ご飯は食べれそうかい?
真叶)余裕で食べれるよ!!!
ロイト)それじゃあ今日はもう晩ご飯食べて寝よう。真叶の好きなカボチャの煮物もつくったし。
真叶)ええ~!!やった~!!2人ともありがとう!!
夢の内容どんなんだっけ、
まあ、もういいや。悪い夢だったはずだし。
そう思いながらできたてのカボチャの煮物を食べるのであった。