生と死と、その境界【創界神イザナギ&イザナミ】3
お久しぶりです。くノ一ジョロウです。
ちょっと病気したりとかしてました。ヒノカグツチ出産後のイザナミほどじゃないのでもう大丈夫です!!
前回はイザイザの「神産み」についてお話しました。色んな神様が生まれて、人の営みの土壌が固まりましたね。
しかし、イザナミはヒノカグツチを産んで大火傷。その後亡くなってしまいます。イザナギは怒ってヒノカグツチを殺害。
悲しみと怒りの末にイザナギがとった行動とは……。
◆黄泉国訪問
イザナミを喪ったイザナギは、もう一度イザナミに会いたい気持ちが募るあまり、イザナミがいる死者の国「黄泉国(よもつくに、とも)」へ向かう決心をします。
ちなみに、なぜ「黄泉」という漢字を「よみ」と読むかというと、元々古代中国で死者の世界を「地下の泉」という意味で「黄泉」と呼んでいました。これに、古代日本で死者の世界を表す言葉であった「よみ」を当てたものになります。
この「よみ」の由来は、「よみ」が坂の上にあるとされていたので「山」から転じて「よみ」と言われるようになったようです。
「地下の泉にある」というイメージと「坂の上の山にある」という、高低差がいまいち噛み合わなさそうなイメージが一つになるということは、「坂の上の山中にある、水が湧く洞窟」が、古事記を作った人にとっての死者の世界のイメージだったのかもしれません。
イザナギは黄泉国の御殿へ着くと、イザナミへ扉越しに「まだ吾々の国は完成してないんだ。戻ってきてくれ」と頼みました。
しかしイザナミは「もう遅いのです。私はもう黄泉国の食べ物を食べてしまいました。帰ることはできません」と拒否します。
黄泉国のものを食べると死者の世界の住人になり、現世に帰ることはできなくなってしまいます。これを「黄泉戸喫(よもつへぐり、とも)」といいます。
一度は拒否したイザナミですが、「愛しいあなたが会いに来てくれたので、私も帰りたいです。黄泉国の神に相談をしに行くので、絶対に中を覗かないでくださいね」と御殿の奥へ談判しに行きます。
来てくれて嬉しかったんですかね(*´ω`*)
……でも、待てども待てども、イザナミは談判から戻ってきませんでした。しびれを切らしたイザナギは、御殿の中へ様子を見に行ってしまいます。
御殿の中は真っ暗で何も見えません。イザナギは髪につけていた櫛の歯を折って灯をともし、奥へと進みました。
───そこにいたのは、腐乱死体と化したイザナミでした。ウジがたかり、雷神が身体から生まれてゴロゴロと音を立てています。
この雷神たちが、八雷神です。「やくさ」は、漢字にすると「八種」で、8種類という意味です。
頭にはオホイカヅチ(雷の威力)
胸にはホノイカヅチ(雷が起こす炎)
腹にはクロイカヅチ(雷が起こる際に天地が暗くなる事)
陰部にはサキイカヅチ(雷がものを引き裂く姿)
左手にはワカイカヅチ(雷の後の清々しさや芽吹く命)
右手にはツチイカヅチ(雷が地上に落ちる姿)
左足にはナリイカヅチ(鳴り響く雷鳴)
右足にはフシイカヅチ(雲に潜伏するように走る雷)
がそれぞれ誕生していました。
カッコ内に記しましたが、これらの神々は雷の姿やそれが起こす状況を表しています。
落雷は天災ですが、「稲と雷が交わることで稲穂が実る」と古代日本では考えられていたこともあり、豊穣の象徴でもありました。だから「稲妻(稲の妻)」という別名があるんですね。
雷の持つ威力や霊力を、昔の人々は恐れつつも大事にしていたようです。
なぜかバトスピではホノイカヅチだけフィーチャーされています。おそらく「ホノイカヅチ」だけでこの「八雷神」全体を指すこともあるからでしょう。代表格です。
蛇をまとっているのは、『万葉集』や『日本霊異記』という書物に残されている伝承で、雷神が龍や蛇と結び付けられているからだと思われます。落雷は、大きな蛇か龍が地上へ降りてきたようにも見えますよね。
◆黄泉国逃走
さて、イザナギは覗かないでと言われたにもかかわらず御殿へ入ってしまい、イザナミのショッキングな姿を見てしまいました。
イザナギは恐れをなしてめっちゃ逃げました。一方イザナミは、愛する人に恥をかかされたとめっちゃ怒りました。そりゃそうだ。
そこでイザナミは、ヨモツシコメに命じてイザナギを追わせました。
「シコメ」は「醜女」と書き、そのまま「醜い女」という意味です。
でも黄泉の世界の醜女だからヤバい力を持っています。なんと一飛びで千里(約4000km)走れます。速すぎる。鬼女怖い。地球一周が約40000kmなので、十飛びすれば周れちゃいます。
イザナギは、走って逃げるだけでは追いつかれてしまうと考え、頭につけていた蔓草製の髪飾りをヨモツシコメの方へ投げました。
するとその髪飾りから山葡萄の実が生え、その山葡萄をヨモツシコメが食べ始めました。
ちょっとは足止めできましたが、ヨモツシコメは山葡萄を食べ終わるやいなやまた追いかけてきたので、イザナギは櫛の歯を折ってヨモツシコメへ投げました。
今度はタケノコが生えてきました。ヨモツシコメはまた食べ始めました。二度も引っかかるな。
そうしてなんとかヨモツシコメから逃れたイザナギでしたが、イザナミは諦めません。
さらに八雷神と黄泉軍にイザナギを追わせました。
黄泉軍とは黄泉国の軍勢であり、鬼たちで構成されています。総数はなんと1500。なかなかの大所帯です。
イザナギは軍勢に対して十拳剣(ヒノカグツチを殺害したときの剣)を振るいながら逃げ、やっと地上と黄泉国との境目である黄泉比良坂の坂の下へ辿り着きました。
そこには桃の実がなっていたので、イザナギはそれを3つ軍勢へ投げました。すると、鬼たちは逃げ帰って行きました。悪霊退散です。
イザナギは自分を助けてくれた桃に「これからも、人々が困っているときに助けてくれ」と言い、その桃をオホカムズミノミコトと名付けました。
最後に、イザナミ本人が追いかけてきました。イザナギは千人がかりでないと動かないような大岩で黄泉比良坂を塞ぎ、黄泉の者が外へ出ないようにしました。
岩越しにイザナミは「私はこれから毎日、一日に千人ずつ殺しますよ」と言い、イザナギはそれに「なら吾は、人が滅びぬよう一日に千五百人生ませよう」と返しました。人の生死はここから始まったとされています。
バトスピにおいて、イザナギの軍勢が「神産」で、イザナミの軍勢が「黄泉」なのは、こういった話から来ています。イザナミは殺して死者を増やす側、イザナギは生命を生み出す側の立場となったのですね。
◆まとめ
イザイザ夫婦の顛末、いかがでしたでしょうか。日本の基盤を創ってくれた、まさに創界神です。
この二柱によって生み出され、生者の世界でイザナギを支える神産の軍勢。イザナミが死後新たに得た協力者であり、死者の世界で彼女を支える黄泉の軍勢。どちらも強力な助っ人です。
かつて黄泉比良坂で袂を分かった二柱ですが、バトスピ世界ではまた共に歩めているようで安心しました(*´ω`*)ホッ シメられたりはしてるけどね。
大学時代に研究したのが日本神話だった故に大好きなデッキなので、ついついながーーーーーーくなってしまいましたが、イザイザを好きになってもらえたらとても嬉しいです。
今後、イザナミと別れたあとでイザナギが禊をしたときに生まれた三貴神(さんきしん、とも)についても書きたいなと思っております。アマテラス・スサノオ・ツクヨミファンはぜひフォローして待っててください!
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!