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YNWAを歌っている「あのバンド」って?

リヴァプールファン、フットボールファンなら一度は耳にしたことがあるYou'll Never Walk Alone。
ではこの曲は誰が歌っているのでしょうか?

彼らは地元マージーサイド出身のジェリーとフレディのマースデン兄弟を中心に結成された、
Gerry and The Pacemakers です。
気になって調べたことがある人もいるかと思います。

60年代前半、ジェリー・マースデンの優しく爽やかな歌声をマージービートに乗せたクラシックなロックンロールでイギリス全土を席巻したバンドです。デビュー曲の"How Do You Do It ?"は全英1位を3週連続で獲得しただけでなく、プロデューサーがジョージ・マーティンという事もあり、あのThe Beatlesもこの曲をカバーしています。。。いや、厳密に言うとこの曲は元々The Beatles向けにプロデュースされた曲でしたがメンバー(ほぼほぼジョン・レノン)がリリースを拒否したため、ジェリーたちのもとに渡ったというわけです。
というのもこの二つのバンド、リヴァプールの繁華街であるマシュー・ストリートにあるキャバーンクラブでしのぎを削った仲で、のちにジェリーはこう語っています。
「The Beatlesと僕たちはステージ上ではライバルだったけど、ステージ外では最高の仲間だったよ。ジョン・レノンは私の最高の友人のひとりだった。でも一緒に曲を書いたことはなかったね。よくジョンに『(作曲を)手伝ってほしいかい?手伝うよ』と申し出ていたよ。するとジョンはいつも決まった言葉で『その必要はないよ。You'll never walk alone, ジェリー。』ジョークの好きなジョンは我々のヒット曲にちなんでよくこんな風に答えていたよ。」

The Beatlesと並ぶジェリーたち。その隣には"Oh Pretty Woman"でお馴染みのロイ・オービソンの姿も。


3rdシングルであるYou’ll Never Walk Alone も全英1位を4週連続で獲得。元々ブロードウェイミュージカル「回転木馬」の劇中曲でありましたが、後にフランク・シナトラやエルヴィス・プレスリーなどもカバーしています。
ちなみに邦題は「人生ひとりではない」なんだとか。

ここでひとつ興味深いエピソードをご紹介。
1963年、バンドのフロントマンであるジェリーは当時のリヴァプールFCの監督であったある人物にこのYou'll Never Walk Aloneを贈ったそうです。一種のプロモーションとでも言いましょうか。
数年後、Desert Island Discsというラジオ番組にその監督はゲストとして出演。無人島にレコードを持っていくなら?という問いに対して、
「You'll Never Walk Aloneのレコード」と答えたそうです。
リヴァプールFCの本拠地であるアンフィールドに構える大きな門の名称は、その偉大な人物に肖ったものとなっています。

リヴァプールファンを迎えいれるシャンクリーゲート。


この曲の大ヒットを受けて、地元のフットボールクラブ、リヴァプールFCのサポーターは次第にスタジアムでも"非公式の応援歌"として合唱するようになります。
労働者階級の名残が色濃かった当時のリヴァプールという港町では、日々の不安やストレス、葛藤や怒りを週末のフットボールにぶつける。情熱を降り注ぐ。そしてまた次の週末まで汗を流して働く…そんな生活を送る人々が多くいました。
そんな彼らにとって、You'll Never Walk Aloneの歌詞にはその孤独な精神性に寄り添う優しさがありました。
それまでアンフィールドでは試合前はその当時の流行りの曲を流す、というのが通例であったそうですが次第に試合前に同曲が流れるようになったんだとか。

このように地元に愛されたGerry and The Pacemakersは惜しくも1966年に解散。また、ジェリーは2003年、ヒルズボロで起きた惨劇の犠牲者を支援した功績によりMBE勲章を授与され、2009年にはリヴァプール市の自由勲章を授与されています。
彼らの残した名曲の数々は色褪せることなく遺り続けることでしょう。
皆さんもこれを機に彼らの作品を聴いてみてはいかがでしょうか?

【オススメの曲】
How Do You Do It ?
I Like It
Ferry Cross The Mersey
I'm The One
It's Gonna Be Alright

今回も最後まで目を通していただきありがとうございました。

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