新書館のBL小説ならこれを読んで!
新書館さんが60周年の大型フェアをやるってよ!60周年おめでとうございます!
新書館のBL小説レーベル、Dear+(ディアプラス)文庫は商業BL小説初心者の人にも読みやすい作品が豊富なので、これをきっかけに読んでほしいなという話です。ひとはそれをダイレクトマーケティングという。
レーベル全体で特におすすめなのはお仕事ものや学生もの。センシティブな物語が読みたいならディアプラス文庫を掘ればいいと思う。
あと、近々の話題作「スモールワールズ」(講談社)で直木賞候補になった一穂ミチ先生が現時点でメインで書いているのもディアプラス文庫なので、BLも読んで通ぶればいいと思う。とっくのとうに一穂ミチ先生は有名なのよって。まだ間に合うよ…!(間に合うのか?)
そんな前置きをしつつ、友人がこの機会におすすめ作品を買ってくれるかもしれないということで、今回フェア対象になっている新書館おすすめBL小説をあげていきます。(以降敬称略)
月村奎「秋霖高校第二寮」「秋霖高校第二寮 リターンズ」シリーズ(イラスト:二宮悦巳)
最初に紹介する「秋霖高校第二寮」シリーズは私のBL青春時代の思い出の作品である。読み初めの頃に出逢った特別な作品。
ちょっと意地悪な、でも本当は孤独な高校生作家の先輩攻めと、世話焼き体質なのがコンプレックスで、でもやめられない後輩受け。そんな二人が同じ秋霖高校第二寮という寮という名の一軒家に住むところからはじまるラブコメ。
作家の秘書紛いのことをさせられたり、パシリにさせられたり、攻めの思わせぶりな態度に振り回されたり……くっつきそうでくっつかないという甘酸っぱさ、じれったさがお腹いっぱいになるまで堪能できます。エロ度も低い(というかほぼない)ので、その点においても初心者にはおすすめ。
「秋霖高校第二寮 リターンズ」まで含めると、シリーズ合計6冊で、多少のスピンオフというか、同じ第二寮の寮生の話を挟んだりはするものの、ほぼほぼこのふたりのお話です。
たぶん「花より男子」の道明寺とつくしの関係性が好きな人にははまると思う。
月村奎「もうひとつのドア」(イラスト:黒江ノリコ)
月村奎作品のなかで、私が一番好きなのが「もうひとつのドア」という作品。
冷たく見える攻めなんですが、実際には不器用(というか無表情?)なだけで誠実で。不憫な生活をしていた受けが、そんな攻めと彼が育てる女の子(攻めの姪)と一緒に過ごしていくうちに…というお話。この姪と受けのほうが先に仲良くなるのですが、このふたりのやりとりも可愛い。野良猫が家猫になっていくように、最後は受けが幸せになれて本当によかったな…とホロリとくるはず。
月村奎初期作品はこの手の不憫な生活をしている(親がいなくて天涯孤独かつ貧乏など…)受けが多いので、可哀想受け・不憫受けあたりにピンとくる方は初期作品を掘ってみるのもいいかも。
月村奎「それは運命の恋だから」(イラスト:橋本あおい)
最近の月村奎作品のなかからもおすすめをと思ったのですが、奥付を見たら2018年の作品だった。いつ3年経ちました!?はやくない!?
お話の内容としては、従弟の付き添いでゲイの恋活パーティーに参加した攻めと、クールの仮面をかぶっているが実はロマンチストな天然の受けがマッチングして付き合い始めて…!?というもの。こちらもラブコメです。
攻めはゲイではないのに恋活パーティーに参加して、まさか選ばれないだろうと受けの数字を書いたものの、受けは一目惚れだったのでマッチングしたという流れ。その事実を隠したまま攻めは受けと付き合っていくのですが(中盤くらいまで)それがバレたあとの受けの行動が切ない…!ロマンス小説とかが大好きなのに…!という切なさ。もちろん無事和解するし、以降はラブラブもラブラブなバカップルになるので安心してほしい。
同時収録のスピンオフ(攻めの従弟の話)はちょっと辛いシーンがありますが(モブレ未遂があるが、ちゃんと間に合う)これはこれで甘酸っぱいお話なので、ぜひ。好きバレからの籠城の流れが経緯は切ないものの、結果として可愛いです。
一穂ミチ「イエスかノーか半分か」シリーズ(イラスト:竹美家らら)
言わずもがな大ヒット中のテレビ業界を舞台にしたシリーズである。
そして作者の一穂ミチ先生は別作品「スモールワールズ」で直木賞候補作家となりましたね。おめでとうございます!今からでも間に合う!一穂ミチ作品!
どうでもいいことですが、こちらの作品が映画化したとき革命した云々と煽りがあったのは未だに「なにを革命したんだ…?(作品は面白いけど)」としこりとなって残っている。なにを革命したのか、これじゃない?というものがある方はご一報ください。
「イエスかノーか半分か」ニュース番組のオープニングを作ることになったクリエイター包容力攻めと、心の中では他人を「愚民」とか思っている外面のいい人気アナウンサー受け。
「恋敵と虹彩」人当たりがよくて根明な1作目受けの後輩アナウンサー攻めと、元々はバラエティー番組ADだったツンデレ関西弁受け。
「つないで」プロデューサーでオトナな包容力年上攻めと、野良猫みたいなディレクター受け。
この3カップルが現状動いています。
私は3カップルめ「ふさいで」の二人が推しです。仕事内容もこの二人は完全に裏方なので、面白い。
一穂ミチ作品はちょっと口が悪い受けの話のほうが面白いと思っている。(でも一番好きな作品は「ステノグラフィカ」)
テレビ業界にいた友人の話だと、結構お仕事内容はわかる~って感じらしい。楽しいところもつらいところも読ませてくれるから、このシリーズ(と新聞社シリーズ)はお仕事ものとしても特別です。「OFF AIR」など番外編もたっぷりあるので、楽しいと思います。くっついたその後の話がたくさん読めるので。内容の話、全然してなかったけど、まあみんな読んでいると思うので……。
お願いだから、一穂先生は直木賞とってもBL書き続けてください!!!(必死)
夕映月子「あなたを好きになりたくない」(イラスト:みずかねりょう)
夕映月子先生の山シリーズもおすすめです。なかでも山岳救助隊の話である最新作「あなたを好きになりたくない」がお仕事ものとしても良なので、読んでほしい。民間ヘリ操縦士の外見はチャラいが仕事はできる溺愛攻めと、攻めに一目惚れしたけれど及び腰な健気受け。恋愛もするけど、がっつり仕事もするし、その仕事への各々のプライドも垣間見えるのが良いです。
ちなみに「天国に手が届く」は孤独な登山愛好家攻めと、彼に憧れている健気受け。二人とも登山愛好家で、受けが攻めを登山に誘って冷たく断られたところからはじまります(理由はある)。
「恋している、生きていく」は登山専門店(ガイドとかする)で働く包容力年下攻めと、心臓に難があり手術をするか悩んでいる山のホテルで働く奥手受けとの話。恋愛はこの作品が一番じれったくも優しく甘く進んでいくかも。
「あなたを~」ではこの前2作品のカップルも登場する全員集合な短編が入っていて、彼らは今日も山と関わりながら生きているんだなあと思わされます。山の清涼感や、木々から漏れる日差しの雰囲気までどこか感じ取れるような、瑞々しい文章と思うはず。登った気になれる山BLはまだまだ読みたい。
菅野彰「色悪作家と校正者」シリーズ(イラスト:麻々原絵里依)
「色悪作家と校正者の不貞」からはじまるシリーズ。こちらもがっつりお仕事もの、かつ超ラブコメ。
大人気時代小説作家な傲慢不遜攻めと、ファンだった作家の校正となったど天然受け。二人してああ言えばこう言うので会話劇がまた面白い。作中話題になる作品(実在)も気になって読みたくなるので、教養も深まるはず!
基本、最終的には攻めにやりこめられているような受けですが、恋愛に関しては激ニブかつど天然なので、その点に関しては受けのほうが攻めを振り回していると思う。
スピンオフは宇宙人のような破天荒さをもつ年下作家攻めと、拗らせた孤独を抱えた人気文芸作家受け。受けは天然というか世間知らずというか……。噛み合わなさはスピン元の二人以上だけど、ラブコメ度は比べるとちょっと低い(でもラブコメなので、元のふたりがラブコメ度高いんだと思う)
余談。(このnoteを読んでいる身内に向けて)映画学科卒の受けです。お話も面白いから読んで欲しい。
J・L・ラングレー「狼を狩る法則」シリーズ(訳:冬斗亜紀)
新書館の翻訳BL小説レーベル、モノクロームロマンス文庫からも、おすすめ紹介。
人狼とメイト(運命の相手、魂から惹かれあう)のシリーズ。人狼×人狼。オメガバースでつかわれているアルファとオメガは狼の生態からとっている説があるけれど、このシリーズではその狼の群れとしての意味合いでアルファとオメガが登場します。
私が好きなのは「狼の遠き目覚め」。これだけは前作の「狼を狩る法則」ラストから繋がっているので、2作あわせて読んで欲しい。
辛抱強い包容力攻めと、DV父親に囚われている野良猫のような受けのカップル。ちょっとBDSM要素もある。
受けはずっと攻めを拒み続けているのですが、攻めは支配欲はあるものの(S側)じっと堪えて待ち続ける包容力攻めなのです(手は出すけど)
受けはホモフォビアとか(前作では偏見持ちな嫌なやつとして登場していたし)男社会(消防士だし)とかに縛られつつも、攻めと受けは運命の相手なので安心してください。
「恋する狼」は電子配信のみですが、単品でも読める短編。これも好き。基本はラブコメで恋に一直線!という話。トラブルメーカーでど天然な受けのせいで、状況はなかなかにシリアスなはずなのにラブコメになっている。攻めはそんな受けを可愛く思える度量の広い人です。狼の群れの奪い合いもあるので、終盤はちょっとハラハラするかも。
ジョシュ・ラニヨン「アドリアン・イングリッシュ」シリーズ(訳:冬斗亜紀)
ミステリとか、THE翻訳小説な皮肉ジョークの交わしあい(主に受けからのものですが)を読みたいかたにはおすすめ。カップリング固定派の人は、読むのは5巻目の「瞑き流れ」までにしておいたほうがいい。
こちらもホモフォビアやクローゼットについての話でもある。
攻めは警官でゲイのはずなのに、受けに対してずっと煮え切らない。受けは書店を営みながら所説を書いているトラブルに巻き込まれ体質。しょっちゅう犯罪に巻き込まれ、物語が進んでいく。
最終巻を読んだときには「ああ…よかった…」とひとつ溜息が零れるような、ページをめくる手が止まらないシリーズ。
ということで、整理しきれていない本棚を横目につらつらオススメBL小説を羅列しました。おすすめはまだ山のようにあるのですが、力尽きた……。
新書館作品がセールで50%OFFってなかなかないので、この機会に気になる作品を買ってみてほしい次第🐰
私は未所持だった安西リカ先生、栗城偲先生、渡海奈穂先生を中心に1万円分くらい買いました。爆買い最高!