『毒林檎をあげましょう』著者:9月のワンピース
禁断の果実を食べたのは誰?
毒林檎をあげましょう。
赤く染まる前に。
思い出すことはできるのでしょうか。
その林檎を手にした瞬間、
飛び散った鮮血は拭えないことを。
後になっては遅いのです。
甘くて溶けてしまいそうな魅力に
惑わされ鼻腔が奪われる感覚に従う。
絶望に飽いて踊り狂うその姿は
いつか見た夢の続きではありません。
何を持って毒を制しましょうか。
それは赤林檎です。
いいえ、それは違います。
それは毒林檎なのです。
目には目を、歯には歯を。
そして、毒には毒林檎を。
禁断の果実はどこにあるのでしょう。
心の中にあるのです。
あなたが心と言っているものは
本当は果実なのです。
形なんてありません。
常に変化していますから。
全身を循環する液体は何色ですか。
誰も紫と答えません。
何故でしょうか。
赤林檎を磨いて確かめてご覧なさい。
きっと戦慄するでしょう。
だけど恐れる必要はありません。
綺麗に綺麗になりますから。
ここでひとつ、お聞きしましょう。
どちらかの林檎を差し上げます。
手に取ってみて下さい。
赤林檎を選んだならば、
もう少しお話をしましょう。
赤林檎は初めからありませんでした。
いつの日か、そこにありました。
まるで初めからあったかのように。
種を蒔いた記憶はありません。
でも食べるしかなかったのです。
理由は分かりませんが。
よく観察しましたか?
木の幹がどこから生えているのか。
辿ってもなかなか見つかりません。
本当にあるのでしょうか。
はい、あります。
辿った先には私がいました。
私が赤林檎?
それはあり得ないと思います。
赤林檎は目の前にありましたから。
では、赤林檎とは一体なんでしょう。
確かに赤林檎は美しいのです。
まるで森の精霊からの贈りもの。
有難く受け取ります。
落とさないよう気をつけますね。
傷つけたくありませんから。
食べる時は洗ってはいけません。
そのまま食べましょう。
昔、誰かに教えて貰いました。
誰ですかなんて聞かないでください。
重要ではありませんから。
食べるだけでいいのです。
遠慮する必要はありません。
さあ、一緒に食べましょう。
赤く染まっているうちに。
毒は惡を知りません。
惡は赤林檎を知っています。
私は赤林檎です。
私は惡林檎です。
間違えました、私は毒林檎です。
そんなに怖がることはありません。
貴方のなかにも眠っていますから。
無視しないであげてくださいね。
赤林檎は風化していたようです。
表面が剥がれかけていました。
不思議と目を奪われました。
視線を逸らしたくありません。
赤林檎をじっと見ていると
何故だか疑問が湧いてきました。
赤林檎は赤なのか?
剥がれかけていた場所は赤ではなく
紫のようでした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
という漠然とした目標を持ちながら生きています。
頑張って作ったという感覚は無く、「作らせてもらった」という方がなんだかしっくりきます。
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それでは。
※まる
※自然