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『パターンB』 著者:9月のワンピース


A=A、B=B
故に
A=B



今までの人生でやり直したいと思った瞬間はあるだろうか。今の貴方の人生をAとした時、パターンBはどのような人生なのでしょう。例えば、貴方が今までの人生の中で別の選択肢を選んだとしよう。すると、今の貴方は何者なのか。そして別の選択肢を選んだ貴方は、果たして貴方なのでしょうか。現時点で貴方が立っている地点は、もしかしたらパターンBなのかもしれない。


【パターンA】
幼いころから体が弱かった。少し外を走っただけでとても息が苦しくなる。真っ白で透き通っていると言われる私の唯一の自慢である肌も太陽のように真っ赤に染まる。周りの人たちは楽しそうに外を駆けている。疲れを知らないのか、いつまで経っても室内に戻ってこない。時折、みんなが永遠に帰ってこないのではないかと不安を抱く。そして今、私は建物の屋上に一人、立っている。真下を見てみると、今日もみんなが笑顔で走り回っている。だけどこれからみんなの笑顔が戦慄の表情に変わるだろう。その表情を見られないことが唯一の後悔である。でも、大丈夫。きっと来世は誰よりも強くいられるよね。

【パターンB】
幼いころから体が弱かった。少し外を走っただけでとても息が苦しくなる。真っ白で透き通っていると言われる私の唯一の自慢である肌も太陽のように真っ赤に染まる。周りの人たちは楽しそうに外を駆けている。疲れを知らないのか、いつまで経っても室内に戻ってこない。時折、みんなが永遠に帰ってこないのではないかと不安を抱く。眠くなってきたから昼寝して待っていよう。眠ることは好きだ。夢の中ではみんなと一緒に外で遊ぶことができる。今日はみんなと鬼ごっこをした。鬼になったのでみんなを追いかける。みんな足が速いのでなかなか捕まえることができない。追いかけている途中で急に目が覚めた。みんなが外から帰ってきたようだ。

【パターンA】
景色が上下反対になっている。あれ、空に向かって飛んでいるのか。よく分からない。短い人生だったけど、今までの記憶が全て走馬灯のように駆け巡る。とても温かい。まるで全てに包まれているような心地よさだ。おそらく次の瞬間、私は雲になる。ああ、このために私は生まれてきたのかな。そう言えば、お母さんが私を初めて見た時、雲のような柔らかさでしっかりと包み込んでくれたな。教えてくれてたんだね、お母さん。

【パターンB】
みんながこちらに駆け寄ってくる。何故だか知らないが、両手を後ろで組んでいる。私の目の前に着いた時、みんなが両手を前に出した。みんなの手には美しい花が佇んでいた。それは様々な色や形をしており、言葉で形容するにはもったいないほどの優しい姿だった。今、この瞬間、私とみんなの間には雲のような柔らかい空気で満たされている。とても心地よい。まるで雲が両手の形を形成し、私を包み込んでくれるようだ。みんなはいつも私に無条件の優しさを与えてくれる。

【パターンA】
なんだかとても眩しい。まるで初めて目を開くような気分だ。目を開けると、お母さんの涙が私の頬に一滴落ちてきた。涙ってこんなに温かかったっけ。そう思った途端、まるで急に水の中に入ったように視界全体がぼやけた。それは私の目から零れ落ちる大粒の涙だった。ああ、私は泣いているんだ。強く実感した。嬉し涙でもなく、悲し涙でもない、何とも言えない涙だ。しかし、このような言葉が自然と口からか細く発せられた。お母さん、ごめんね。本当にごめんなさい。

【パターンB】
優しさは私の心に花を咲かせるばかりではなく、時に一輪の花を持たせる。その花の名前は確か、薔薇だったかな。とても綺麗だと思っていたものが実際には棘だらけだった。こういうこともあるよね。ありのままの姿として鑑賞すれば良いだけのものを時折、掴みたくなる。掴むと痛みを感じる。痛みはさらなる痛みを提供してくる。もしかしたら私は痛みを求めているのかもしれない。痛みは生を実感できる。今まで薔薇は真っ赤だと思っていたけど、本当は真っ白なんだ。薔薇を真っ赤に染めているのは自分自身だ。

【パターンA】
痛かった。みんなが楽しそうにしている中、私は一人だった。悲しかった。自分の状況を受け入れまいと必死になっていた。幸せだと言いたかった。本当は幸せだったけど、求めるがあまり見失っていた。ああ、そうだったのか。私は幸せだったのか。悔みたいけど、もう遅いかもしれない。いたたまれない気持ちで満たされていたが、私のなかから声が聞こえてきた。

「まだ遅くないよ」

そうだった。私にはまだ向かうべき場所がある。

【パターンB】
「ねえ、聞こえる?」
「ねえって!」

ふと我に返った。あれ、どこにいたんだっけ。そうだ、薔薇を持っていたんだ。薔薇から目を上げると目の前に人が立っていた。

「なんで薔薇を持っているの?」
「持ちたいからだよ」
「本当に持ちたいと思ってる?」
「本当だよ」
「もう嘘はつかないで」
「何言ってるの?」
「持たなくていい。静かに見つめるだけでいいんだよ」
「怖いんだ、持たないと落としてしまいそうだから」
「大丈夫、信じて」
「本当?」
「うん」
「でも、何も持たないのは怖い」
「これを渡しに来たんだよ」
「これは?」
「ブローディア」



最後まで読んでいただきありがとうございました。
人生は選択の連続なのか、はじめから全て決まっているのか。どちらにしても、今ここにいるということには変わりありませんね。

話は変わりますが、私には夢があります。

自分の本を出版する

ことです。
ただ本が好きなだけな私ですが、本を出したい理由なんて、それだけでいいと思っています。
noteをはじめ、Instagram、X、Tiktokにも書いた本を載せているので、気になる方がいれば是非ご覧ください。



※初めて書いた本


※「時間って何?」と思った時に読める本

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