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見えたら流して下さい

【attention】
 このお話は「ネタにしてもよい体験談」として頂いた話を小説化したものです。ネタ提供者様より添付して頂いた写真も掲載しております。
 この小説を読んだ後に怪奇現象に遭遇したとのご報告を多数いただいております。中には吐き気や頭痛に襲われた、車のブレーキが利かなくなったなどもございます。
 対処方法に関しては小説内に記載してありますが、不安に思われる方は読まないことをお薦めいたします。
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 見えたら流して下さい。
 短いメッセージとともに添付された一枚の写真。

 それが流行ったのは高校三年生の秋だった。
 誰がはじめたのかは分からない。流行りなんて得てしてそんなものだろう。
 この写真の流行はかなり限定的な地域でのものだった。
 恐らく私が通っていた高校と、それとほぼ隣接する距離にある工業高校。一つ離れた駅にある私立の女子高。そのあたりでしか流行っていなかったのではなかろうか。少なくとも最初のころはそうだった。

 写真は学校のそばにある「子育て地蔵尊」のものだった。
 地蔵尊と地蔵はべつものだ。地蔵尊は地蔵菩薩を祀ったものであり、地蔵は民間信仰であるらしい。
 さておき、その地蔵尊はなかなかに立派なものだった。子育ての地蔵尊である故なのか、道端にある地蔵よりもふくよかな石像が祀られている。屋根もあり、中には仏花が捧げられ、千羽鶴がいくつも下げられている。
 その地蔵尊を撮った写真がSNSを通じて回ってくる。

 見えたら流して下さい。

 たったそれだけの文章だというのに、まるで意味が分からない。
 それが生徒たちの心を引き付けることになったのだろう。
 一体なにが見えるのだろうか。写真にはただ地蔵尊が映っているだけで、他に奇妙なものは見当たらない。だがもしかして、これは心霊写真でよく見るとなにか「映ってはいけない筈のもの」が映り込んでいるのだろうか。
 生徒たちは画面を拡大し隅々まで眺めては、何も見つけられずに首をひねる。
 ならばこれはガセネタで何の価値もない画像なのだ。
 そう断じて無視してしまえばいいのだが、少しずつ角度を変えたり、違う時間にとられた写真がまた新しく回ってくる。
 新しい写真が回ってくると、隅々までじっくり見ないと気がすまない。
 そうして、何かが見えた訳ではないくせに、友人やクラスメイトに写真とメッセージを送り付ける。
 それは私たちにとって日課のようになっていた。
 今度こそ何かが見えるのではないか。そんな期待を抱いていたのだろう。

 勤勉で知られる宮野さんが「きゃッ」と小さな悲鳴をあげて、スマホを落としたのはある休み時間のことだった。
 宮野さんは噂話に乗るタイプではなかったので、きっと友人がふざけて写真を見せたのだろう。その反応は予想外のものだった。宮野さんは口を抑えて蒼白になり、遠目で見て分かるほどに震えていた。
 友人があわてて宥めようとした手を振り払い、教室から走って出ていってしまったのだ。
 どう見ても、ただ写真を見ただけの反応ではない。
 だとすれば宮野さんには何か奇妙なものが見えたのだろうか。
 今までも何かを見たという生徒は何人もいたのだが、いささか信用度が低かった。噂の中心になりたがるタイプの生徒ばかりで、目立ちたいがゆえの嘘だと思われていたからだ。
 しかし宮野さんなら別だった。
 彼女は決して目立ちたがり屋ではなかったし、クラスに1人はいるような「霊感少女」を自称するタイプでもなかったのだ。
 しばらくして戻ってきた宮野さんに、皆が寄ってたかって何が見えたのかと詰めかけた。
 宮野さんはひどく戸惑った顔だった。
 はじめのうちは話すことを嫌がっていたものの、生徒たちの好奇心は貪欲だ。休み時間になるたびに数人が机を取り囲み、学校帰りも駅まで付き纏ってひたすらに話を聞きたがる。
 諦めた宮野さんが語ったのは、こんな話だったという。

 見えたというよりも動いていた。
 地蔵尊の後ろに誰かがいて、それが顔を出したり引っ込めたりしていたのだ、と。
 宮野さんはそれが写真ではなく動画なのかと思ったそうだ。

 宮野さんの話は、今まで目立ちたがり屋の生徒たちがしてきた話とは毛色の違うものだった。
 彼らの話は、子供が座っていただの、地蔵尊の目が開いているだの、いかにも心霊写真めいたものだった。
 だが宮野さんの話では、写真が動いていたという。
 私たちはまた躍起になって写真を凝視するようになり、長い間じっと見詰めては少しでも動かないかと期待した。
 一部の生徒たちは自分も写真が動くのを見たと騒いだが、果たして本当だったのか分からない。
 そもそも私自身が宮野さんの発言に半信半疑だったのだ。
 彼女はきっと難関校に挑むのだろうから、ストレスが溜まっているだろう。だから画面が動いて見えたのか、あるいはちょっと魔がさして目立ってみたいなんて思ったのか、そんな風に思っていた。
 私自身が、写真が動くのを見るまでは。




 見えたら流して下さい。

 新しく回ってきた画像は随分と日が傾いた時間に撮られたもののようだった。
 地蔵尊の前を通れば、きゃあきゃあと騒ぎながら写真を撮っている学生の姿を目にすることが多かった。最近では、中学生や、社会人、あるいは年齢不詳の人たちまで写真を撮っていることがある。
 少しずつ噂の輪が広まっているのかと考えると、なんだか奇妙で薄気味悪い光景だ。
 そんな風に色んな人が写真を撮ってSNSに回すものだから、新しい写真が毎日のように回ってくる。
 学生たちの流行りなんて、すぐに廃れるものだった。だが今回の写真に関しては流行りはじめて二か月以上が経った今も、毎日のように誰かが話題にあげている。
 いやむしろ、最初のころはせいぜい数日に一度くらいの割合で新しい写真が回ってきたが、最近では毎日毎日、新しい写真が回ってくる。むしろ流行りは加速しているようだった。
 いい加減、飽きてきた。
 そう思うのに新しい画像が来るたびに、ついつい凝視してしまう。
 西日を浴びた地蔵尊は片面がオレンジ色を帯ており、もう片面はすっかり真っ黒になっている。
 風呂上りの私はベッドに寝転がりながらぼんやりと写真を眺めていた。
 どうせ何も見えない。わざと期待していないことを思考の前面に押し出して、見えなかった時の失望を和らげようだなんて考える。
 私は期待していませんよ。だから傷ついたりなんてしませんよ。
 いつからだか様々な事に関して、そんな風に冷笑して構えるようになってきた。
 見えない。
 どうせ見えない。
 そう思ってろくに焦点もあわせずに眺めていた。
 けれどふいに、確かに何かが動いたのだ。
 気のせいだろうか。瞬きをして見詰めてみれば、また地蔵尊の影の部分がかすかに動いたように見える。
 ベッドから起き上がって改めて写真を凝視する。
 ドクドクと、少しずつ心音が早くなる。
 見える訳がない。私がそっち側の、特別な人間の側になれる訳がない。
 でも、だけれども、もしかしたら。
 じっと写真を見詰めていた私は確かに影が動くのに「あッ」と小さく声をあげた。
 動いた。
 確かに影が動いている。
 やった! ついにやったのだ!
 私は特別の側に選ばれた。
 けれど、喜びもつかの間にすぐに現実が押し寄せる。
 見えたことを証明する術がない。
 この写真を回してきたのは、そこそこに仲の良いクラスメイトの洋子だった。もし洋子も見えていたなら、その事を大喜びで語るだろう。つまり彼女には動いて見えたりはしなかった。
 ここで私が「写真が動いて見えた」のだと語ったら、誰が信じてくれるだろう。
 そんな事を言ってみても、結局私は「目立ちたがり屋の嘘つき」の1人に分類されるだけなのだ。
 途端に熱が冷めていく。
 さっきまではあんなに嬉しかったのに、今はかえって損をした気分になっていた。
 折角特別になれたのに、それを知っているのは私一人だけなのだ。それじゃあ何の意味もない。
 私はため息を吐き出すと、スマホの画面を閉じようとしておかしな事に気が付いた。
 画面が真っ黒になっている。無意識のうちに電源を落としていたのだろうか。
 いや、ちがう。画面の上下には写真の情報を示すアイコンがいくつも表示されている。
 なんだろうか。
 首を傾げて画面を見詰めていた私は、次の瞬間、すぐ間近で見開かれた瞳と目があった。
 真っ黒じゃない。
 それが画面に接近していたから真っ黒に見えていただけだった。
 そしてそれは、画面いっぱいに表示されこちらをじっと見詰めている。
 私は慌てて電源を切ると、スマホを床に投げ出した。




 一体全体あれは何だったのだろう。
 あの後、しばらくはスマホを開くのが怖かった。翌朝になって恐る恐るもう一度画像を確認したが、そこにあるのは何の変哲もない写真だけで、影が動いたりはしなかった。
 それでもまた動いたらと思うと恐ろしくて、画像はさっさと削除した。
 私は幻覚を見たのだろうか。
 ベッドに横たわってうとうとしながら見ていたせいで、実は寝ていたのではなかろうか。
 そんな風に思えるほど、日常は何も変わらない。そう、思っていた。
 何かがおかしいと気が付いたのは授業が終わって帰り支度をしていた時だ。教室にはもうほとんど生徒が残っていなかった。私も鞄に教科書をつめこんでさっさと席から立ち上がる。
 その時、ドアから覗く顔が見えた。
 いや、正確には、何かが覗いていた気がしたのだ。
 それははっきりと見えなかった。黒い影が視界のはしにちらりと見えて、そうしてすぐに引っ込んだ。
 なんだろうか。
 私はじっとドアを見詰めて、ふと既視感を覚えたのだ。
 この感覚。画面をじっと凝視していたあの時にも感じたものと同じだった。
 背筋がぞわぞわと寒くなる。何かの気配を本能で感じ取り、警告を発しているような。
 私が見詰めている間に、ドアにはもう一度黒い影があらわれた。
 頭だけをにゅっと覗かせて、こちらの様子を伺っている。
 背は低い。きっと小学生程度だろう。だからこそ高校の教室には絶対にありえないものだった。
 私はドアを見詰めたまま、その場から動けなくなっていた。視線が一か所の固定され、顔を背けようとしても叶わない。誰かに助けを求めようにも、声もうまく出なかった。
 黒い影は何度もちらちらと顔を出し、こちらの様子を伺っている。
 まるでかくれんぼをしているような仕草に見える。
 でも違う。あれはそんな無邪気な存在ではないはずだ。気付いちゃ駄目だ。分かっているのにどうしてか目を反らせない。
 どうしよう。どうすればいい。
 私が悩んでいる間にも、影は何度も顔を出しじっとこちらを見詰めてくる。
 駄目だ、駄目。
 あれは目をあわせては駄目なものだ。
 私はぐっと目を閉じる。それ以外、出来ることがなかったのだ。だが、目を閉じたあとにそれが大間違いだと気が付いた。
 寄ってきた。
 あれが目の前までやってきた。
 昨日の夜もそうだった。あれは私がじっと画面を見ていた時にはこそこそと様子を伺っていただけだった。
 でもあの時、私が目を反らしたから。その隙に近づいてきたのだった。
 今はもうすぐ目の前に気配がある。見えてないのに息が触れるほど近い位置にいるのだという事を感じとる。

 「佐久間さん?」

 ふいの声に凍っていた空気が和らいだ。
 恐る恐る目をあければ、そばに立っていたのは件の宮野さんだった。
 あれの姿は見当たらない。
 私は安堵感とともに、思わずその場にずるずるとしゃがみ込んでしまったのだ。




 それからも、それはたびたび私の視界のはしに現れた。
 影が動き、こちらの様子を伺っている。何度も何度も顔を出しては、気が付いてくれるのを待っている。
 私はとにかくずっと知らないふりをした。
 見えていない。気付いていない。目の端で何かが動いても知らんぷりをし続ける。
 ただひたすらに無視を続ければそれに近づかれることはない。一見、ひどく簡単な方法だったが、私はじわじわと疲弊した。
 これは一体いつまで続くのか。もしかしたらこの先もずっとずっと続くなら、とてもじゃないけれど耐えられない。
 教室や屋外にいるときに現れるならばまだ良かった。
 そこに見知らぬ何かが顔を出しても別のことに気を散らして、気が付かないふりをしていられる。
 問題は家に現れた時だった。
 食事をしている最中に玄関につながるドアから顔を出した時。帰宅直後に廊下の奥にある洗面所から顔を出していたこともあった。自室ではさすがに隠れる場所がないかと思っていたが、カーテンの後ろからそっと顔を出した時にはさすがに悲鳴をあげかけた。
 そんな風にそれはありとあらゆる場所に現れた。
 自分の部屋の中でさえ、そいつの侵入を拒めない。
 私はいつでも緊張し、ベッドに入っている時ですらそれの影に怯えていた。
 友達に相談しようかとも思ったが、嘘だと思われるのが怖かった。
 地蔵尊の画像は皆が面白がって眺めていた。だけれども、何かが見えると言い出す人にはやけに冷淡だったのだ。
 みんな自分が特別になりたいだけで、誰かが特別になったことにはさして興味がなかったのだ。最初に見えたという宮野さんを除いては、それ以降ほとんど相手にされていなかった。
 思い返せば隣のクラスでも見えたと言い出した子がいたらしい。その子は必死になって訴えたが、皆から軽くあしらわれ、そのうち学校に出て来なくなったのだと聞いている。
 もしかしたら、その子は本当に見てしまったのではなかろうか。
 だとしたら、今はどうしているのだろう。
 ただ一つ私に分かることがあるとするならば、私自身が見えたと訴えてみたところで同じ結果になるだろうということだ。
 だから私は耐え続けた。
 授業中に不自然に目をそらして先生に怒られた時もある。体育の時間でもボールを取りそこなったこともある。
 それでも私に出来ることは、ただ耐えることだった。




 「見えちゃったんでしょ?」

 宮野さんが話し掛けてきたのは放課後の下駄箱でのことだった。

 「え?」
 「違ったならごめんなさい。でももしかして、あの写真で影が動くのを見ちゃったんじゃないかって」

 私はしばし宮野さんの顔を凝視した。
 絵に描いたような黒縁眼鏡の優等生。こうして間近で向かいあったこともなかったし、顔をはっきり見たのも初めてかもしれなかった。
 肌、綺麗だな。
 私はまるっきり場違いなことを考えた。
 それからふいに緊張の糸が途切れたのかボロっと涙が溢れ出す。

 「……信じてくれる?」

 涙声で尋ねると宮野さんは少し困った顔をしながらも頷いた。

 「このところ何かから目線を反らそうとしてるように見えたからそうじゃないかって思って」
 「うん、私、どうしていいか分からなくて」

 そういえば宮野さんは写真が動くのを見たけれど、その後も普通に学校に通っている。私のように怯えた様子もなかったし、今も視線を彷徨わせているそぶりもない。

 「宮野さんにはもう見えてないの?」

 私が恐る恐る尋ねると宮野さんは頷いた。

 「私はもう大丈夫。もしかして、流してないの?」
 「流す?」

 不思議そうに問い返すと、宮野さんは小さく頷いた。

 「見えたら流して下さいって、そう書いてあったでしょ?」
 「え?」
 「あれはそのままの意味だったの。何かが見えてしまったら、他の誰かに画像を流して下さいって」

 私はしばらく言葉を飲み込むのに苦労した。
 そのまま。
 そのままの意味。
 考えてみればひどく単純なことだった。
 「見えたら流して下さい」
 つまりは、見えなかった人はそこで止めて良かったのだ。だというのに、生徒たちは意味不明さを面白がってスパムのように拡散した。その意味を何も考えずに左から右へと流したのだ。
 私も彼らと同じだった。
 文字の意味に首を傾げはしたものの、深く考えもしなかった。

 「流せば見えなくなるの?」
 「少なくとも私はそうだった」
 「あ、でも、どうしよう。私、あの画像、怖くて捨てちゃった」

 私が青くなると宮野さんは「大丈夫」と優しく声をなげかけた。

 「撮りにいけばいいの。自分で写真を撮って同じメッセージを添えて流せば大丈夫だから」

 安堵感でわんわんと泣き出しそうな気持ちだった。
 でもすぐに新たな問題に気が付いて、私は暗い顔になる。

 「……宮野さん、あの、お願いがあるんだけど」
 「地蔵尊まで一緒に行って欲しいんでしょ? いいよ。でも夕方から塾があるから急いでね」

 流石は優等生、私の考えなんてお見通しだ。
 いや、違う。私はすぐさま考えなおした。
 勉強が出来たって人の心の機微にはまったく無頓着な人もいる。宮野さんが私の気持ちに気が付いたのは、彼女が優しいからだろう。

 「ありがとう」

 私の言葉に宮野さんは「いいよ」と首を振る。
 その顔が少しばかり照れているようで、私もなんだか少し嬉しい気持ちになった。




 「なんで地蔵尊にあんな怖いものが出るんだろう」

 並んで歩きながら私が漏らした呟きに、宮野さんは肩をすくめるながら話はじめた。

 「地蔵尊の真向いにお婆さんが経営している小さいタバコ屋さんがあるでしょ? あそこで聞いてみたの。古くからあるだろうから、何か知ってるんじゃないかって」
 「そう言えば、町の小さいタバコ屋さんって戦争未亡人がやってるんだっけ?」
 「それはちょっと違う。タバコは税金の徴収に都合がいいから専売制度があるの。この専売が母子家庭や身体障碍者に対して優遇されていたっていうのが正解みたい」
 「そうなんだ」

 私は相槌しかうてなかった。私の周りにいた友人達はこんな話をしないから、どうして良いのかが分からない。

 「お婆さんは昔からあの場所でタバコ屋をしていた。お婆さん曰く、地蔵尊からあれが出て来る訳じゃない。あれが出るから地蔵尊を建てたって言ってた」
 「あれが、出るから」

 意外だった。
 てっきり地蔵尊が呪われているのかと思っていた。
 だが実際にはあの土地が何かおかしくて、それ故に地蔵尊を建てたのだという。考えてみればその方がよほど合点がいく。

 「あそこで何があったの?」
 「詳しいことは分からない。防空壕があって、そこで沢山の人が亡くなったんだって。きっとそういう場所は他にも沢山あるんだろうけど、ここはどうしてかずっと残ってしまったみたい。
 私が気になって調べた範囲だと動く影が見える人や手足が見える人がいるみたい。最近だと影だけじゃなく顔が見える人もいるらしいから、これからはもっとはっきりと見えるようになるのかもね」

 これからはもっとはっきりと。
 その理由を私は分かっている。私たちが拡散したからだ。何も考えず、特別になりたがって面白半分に何度も何度も拡散した。
 今、地蔵尊の前に来てみれば先客が写真を撮っている。
 最近ではこの光景は日常で、写真が流れてくる回数も前よりも多くなっている。恐らく、この近辺の学校以外にもどんどん広まっているのだろう。
 私たちはあれが何をしたいのか知りもせずに何度も呼び出してしまっている。
 写真を撮っていたサラリーマンがいなくなり、私の番が回ってきた。地蔵尊には以前よりもたくさんの仏花が供えられて、たくさんの人たちがここに来ていることが伺える。
 スマートフォンのカメラアプリを立ち上げて画面を見ずに写真をとる。
 何かが動いた気がしたが、あえて確かめはしなかった。
 だって私にはそれ以外にできないから。





 見えたら流して下さい。

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