クリスマスのお話のようなそうでないようなお話

16歳の秋だった。冬制服なので秋だった気がする。
確か女子高生名物・女子トイレでの噂話大会により「あの女は授業中にハナクソを舐めている」という園児レベルのデマを流されたおかげで生徒用トイレに行きづらくなり、職員用トイレを勝手に使ってもいいという特権を得ていた頃なので10〜11月の気がする。
ちなみにこの話は運動部の練習試合を通して他校に広がり、全然知らんサッカー部にゲーセンで音ゲーやってるところを盗撮されてそいつらがゲーセン出禁になったという珍事件に発展するのだがそれはまた別のお話。

ある時体育の授業で物置と化した教室に行ってなんかを探した。なんかとは授業で使う旗のようななんかなのだが、これは2クラス分の女子では過剰戦力なほどの量だったので意識の低い我々(そもそも身体能力壊滅的タイプ・できるけどマジだりータイプ)は意識の高い運動部に丸投げしてその辺でのんびりしていた。
そこで1本のモールを見つけた。お菓子とかを束ねているモコモコでキラキラの針金である。私は暇だったのでこれをハート型に曲げてその辺にほったらかした。

物置から自分達の教室に帰る時、デマを流した主犯格の女が私の作ったハート型モールを持って帰っているのを見た。周りの女数名がなにそれー可愛いーと言っているのを聞いた。
こいつらは普段私が触ったものを絶対に触ろうとしない。汚物でも触るかのように顔をしかめて嫌々手を伸ばして直前で引っ込めるような連中だ。見たもん。目の前で。

嬉しかった。

私は与える喜びを知った。無償で匿名の優しさを与えることを知った。名指しで目の前で礼を言われるよりも、「誰だか分からないけどありがとう」の方が嬉しいし自分好みだと知った。
自分達が陰口叩いてるとはバレていないと思い込みながら汚いトイレで汚い話をし続けている連中とは真逆の位置に立った。
それきりどこで何を言われようが気にならなくなった。

その年からクリスマスプレゼントは貰えなくなった。
別によかった。
とてもじゃないけど進学できるような余裕のある家ではないというのは分かっていたし、私もうサンタさんなんて歳じゃないですし?みたいな態度を取っても違和感ないお年頃だったのがほんの少しだけ救いだった。

ハッピーホリデーという言葉が好きだ。
メリークリスマスという言葉は要するにキリスト様のお誕生日を明るく楽しくお祝いしましょうという話なので、ハッピーホリデーは色んな理由でキリストの名を出せない人でもこの日を祝うことが出来る言葉だ。
この概念が好きだ。クリスマスを楽しんではいけない人などいないのだ。
僻んでいる場合ではない。
私にとってクリスマスを蔑ろにすることは、3月11日が誕生日の人に向かって誕生日パーティは不謹慎だからやめろと言うのと同じなのだ。
大切な何かをなくしていても、心身のどこかに不調があっても、独りでも、仕事でも、誰かに酷いことを言われていようとも、何かに不安があっても、この良きホリデーシーズンは楽しんでいい。クリスマスは許してくれるから。
そして、その幸せは誰にも奪われていいものではない。
叶わない夢ばかり見て生きてきた。どれだけ努力を重ねても絶対に手が届かない物もあると、ずっと前から知っていた。
だから、誰かの手の中にある幸せなものは奪ってはいけない。邪魔しちゃいけない。絶対に。
それが、何も叶えられない人間なりの矜恃だと思っている。

ハッピーホリデー!!!!!!!!!!(窓を割る絶叫)
あっそうそう、クランイベントでTennobaum中になんかやる予定でしたが、PS5にお引越ししたくてプラチナをガッツリ使い切ったので時期によっちゃあ中止します。
多分プライムアクセスするんで大丈夫だとは思いますが……


いいなと思ったら応援しよう!