9月末短篇
「ソーシャルゲームを"くん"付けで呼ぶのはやめなさい」
「自分を生き物だと勘違いしたソーシャルゲームに神が憑いてしまうからね」
「じゃあ今日もシャニマスさまに祟られないうちに寝るんだよ」
2024年10月、私はとある都合で京都駅から2時間かけて田舎の集落、「シャニ村」に来ていた。1日に来て今日で12日目、今日のためにこの村へ来たのだ。
他の宿にはちらほら人がいるみたいだが私の泊まる宿には私しかいないようだ。少し古くて暗いからだろうか。
この村には言い伝えがあり、村人はそれを厳格に守っている。
昔、これを破った者が電波を「テンプルランさま」に奪われてからというもの破った者には厳しい罰も下されるようになった。
守ることで主要産業である回線爆速業を成り立たせているのだ。
「今日もシャニマスさまに祟られないうちに寝るんだよ」
そう言い女将は戸を閉める。まだ昼なのに。これも来てから毎日だ。
しかし今日は「とある都合」のために一睡もしないつもりだ。
15時になる。ソーシャルゲームを開き高速で進めていく。今日のためにずっとこの村に泊まり込んで練習してきたのだ。
「7:24!」
シャニ村の回線爆速業は伊達じゃない。村民の手によって丁寧に鞣された有線LANは国内で2位に大差をつけた回線速度を発揮する。
23時。
回線速度が少し落ちた気がした。と思ったのも束の間、エラーを吐いてしまった。
「シャニ村くんさぁ……」
思わず口にしたその言葉はもう声門に戻せなかった。
「シャニマスさま……?」
「kana_hanaiwa顔面派」と言わないと演出が一個も進まなくなる祟りを受けた私は「とある都合」期間中一日数千件も女性声優の顔を称えるツイートをしフォロワーのほとんどにミュートされることとなった。