衛星
前文
ひとつ、何かを取り戻すように、何を得たのか数えるようにこの物語は進んでいく。正確には、物語と呼ぶには終わりがないのだけれど。
ひとつ、この物語に端的さやある種の明確な意図は存在していない。
ひとつ、最も大きな目的、この物語は私のために綴られている。だから、この物語がとりとめもなく、右往左往し続けてしまうことを許してほしい。
衛星
2021年8月の夜。水面の水紋をたどりながら、少し蒸し暑い夏を自分なりに楽しんでいる。トロピカーナのオレンジジュースを片手に、コンクリートに寝そべっていた日。
「楽しんでいる」とは、きっと絶対的な指標ではない。正直に述べると、退屈な日々に比較した相対的な表現に過ぎない。どこかが明確に足りない日々だが、何が足りていないのか自分はうまく説明することはできない。
満月の夜。光り輝く月をみて、そんな自分に足りない養分を得ているようで。マイアンセムのGreen Lightを流しながら、かつての有名な宣言を思い出した。
「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。/今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である。」
そうは思えなかった。
より正確に言えば、他に依ってでもあれほどに美しく光り輝くことができるのであれば、月になりたかった。他の光に照らされて、やすやすと生きられることを望んでいる。
この言葉の本意とは違うと分かってもちろんいるけれど、少なからずここから見える衛星は、その光源が遠い場所にあるとしても、自分よりもずっと輝いていた。
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