竹書房怪談文庫怪談マンスリーコンテスト12月度
佳作受賞

「20歳くらいの時、事故か何かで生死を彷徨ったことはありませんか?」
手相を見てもらった際に占い師に言われた。
20歳どころか今まで事故とも病気とも無縁な生活を送ってきた。そのことを占い師に伝えると、驚いた表情をしている。
「いや、貴方の生命線は20歳くらいで切れてるんですよね。」
そうは言われても本人は健康体で生きている。手相占いなんて当てにならないなとAさんは帰宅した。

それからしばらくしてAさんは彼女の付き添いで、別の占い師の元を訪れた。その占い師は未来が見えると有名な方で、Aさんの彼女は仕事のことを中心に質問して、その度に占い師は熱心にアドバイスをしていた。
「私たちは結婚できますか?」
仕事についての占いが一通り終わった後、彼女が占い師に質問した。自分に関係する質問だったのでドキッとはしたが、Aさんも彼女との結婚を考えていたので結果が気になった。
占い師はAさんの顔をしばらく眺めたあと、気まずそうとも申し訳なさそうとも言えない苦い表情をしながら口を開いた。
「申し訳ありませんが、全く見えません。」
「相性が悪いとかですか?」
彼女が声を荒げた。
「いえ、そういう訳ではないんです。大変失礼ですが、Aさんの未来が真っ暗で全く見えないんです。」
いきなり未来が見えないと言われたAさんは驚き、彼女と顔を見合わせた。
「僕がもうすぐ死んじゃうとかですかね?」
「いえ、20代の時に亡くなってます。」
「え、でも僕は今生きてますよ。」
「ええ、そうなんですよ、私も不思議でしょうがないのですが、どんなに占ってみても20歳半ばで亡くなっているんですよね…。」

それから何度も有名な占い師や霊能力者に見てもらったが、皆口を揃えて同じことをいう。

「20代の時に亡くなってます。」

このブログで掲載している怪談は1%ノンフィクションです。

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