桜散るじゃなくて、桜散れバージョン待ってます
高校の入学式。その頃の私のクリープハイプブームは、SHE IS FINEと援助交際だった。どこでも私はクリープハイプだけは手放せなかったので、(現在進行形)初めての電車通学では音漏れだけを心配していた。
発表されたクラスに行き、自分の席についた。まわりを見渡すと、みんな自分の名前を名乗り合い、手探りで友好関係を築こうとしている。ダラダラと過ごせていた春休みが終わり、まだ気持ちがどうにも追いついていない私は、友達を作ろうという気分にもなれず、ぼーっと窓の外を眺めていた。桜は満開。一生懸命花を咲かせて、何をそんなに歓迎しているのか。無性に腹が立っていた。早く散れよ。
春休みで得た昼夜逆転の生活を急に手放したせいでの目つきの悪さ。イラつき。あの時の気分も顔も最悪だった。本当に。
入学式ということもあり、沢山の配布物が前から回ってくる。「ありがとう」そう言って前の席の男の子の顔を見る。
いわゆる一目惚れ。相手はマスクをしていたのに何が一目惚れだ、そう言われるかもしれないけれど、あれは私にとっては一目惚れだった。ああ、この子だと思った。好き。仲良くなりたい。話したい。知りたい。こんな感情がわけば、「一目惚れ」は過言ではないだろう。
それから猛烈に(勝手に)距離を詰め、お互い仲の良いグループができるまで一緒にいた。ギターが弾けて、クリープハイプが好きな子だった。尾崎さんの「私語と」を買い、2人で沢山読んで話した。
ここってこんな漢字なんだね、何でだろうね、俺クリープハイプなら蜂蜜と風呂場が好きだな、私ラブホテルだよ、ああ俺エロも好き、
大好きなクリープハイプを好きな彼が好きだった。ひとつの机を挟んで座り、歌詞を眺めて音楽を聴く時間が愛しかった。
私がクリープハイプのライブに行ったあとはいつも「どうだった!?」とニコニコ感想を聞いてくれた彼以外に、誰にもクリープハイプを共有しなかった。
自然と距離はできて、話すこともなくなったけれど、「私語と」の、蜂蜜と風呂場のページについた爪の跡でいつも彼を思い出す。歯医者でバカみたいに口を開けても思い出す。
挙句の果てに桜を見ても思い出すもんだから、やっぱりあんなもの早く散って欲しい。
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