嫌な奴
連休だけど
こちとら農家
天候と苗の成長具合を見て
田植えをしなければいけない。
仕方ないと思っていても
どこかで遊びに行ける人を妬ましく思っているのだろう、
ひょっくり「怖い話」を思い出し、それを書こうと思った。
ミステリーを紹介する本の中にあったお話(かなりうろ覚え)。
主人公は、旅の途中の男性。
ホテルである夫婦と知り合う。
夫は昔、手品か何かで舞台に立っていたという。
主人公はどこか陰のある夫人に惹かれた。
何度か会ううち彼は夫人から
「私と一緒に逃げて」
と言われる。
夫婦仲がうまく行っていないらしい。
主人公は承知するが
それを察したらしい夫から
夜、自分たちの部屋に来るように言われる。
言われた通り夫妻の部屋に行くと
なぜかひどく暗い。小さな灯りが部屋の隅についているだけだった。
夫妻は一つのソファにぴったりと寄り添って座り
あの話は悪ふざけだったと言う。
夫人は夫の言葉を頷きながら聞き
主人公に向かって
「出ていって」
と言う。
呆然と部屋を出る主人公。
一晩苦しみ、翌朝早く出立しようと決める。
しかし翌朝、ある事実を知って疑いを持つ。
あの部屋は暗すぎて、二人の表情がわからなかった…
彼はもう一度夫妻の部屋へ向かう。
ここから怖いネタバレ。
夫は腹話術師だった。
主人公が入ったとき
夫は自殺していた。
ソファにはきちんと座った夫人の死体。
死体の背中から首の肉がえぐり取られていた。
夫は妻を殺してソファに座らせ
自分の手を後ろから突っ込み
首を動かし、妻の声で喋っていたのだった…
せっかくの連休に
こんな話を書く
本当に嫌な私である。