「歌声合成ソフトの総称」について、個人的な答えが出た。
では発表します。私流「ニコニコ動画とかで"ボカロ(広義)"と呼ばれるものの総称」はこちら。
ソフトウェアシンガー
【解説】
1.ニコニコの「VOCALOID」タグ
「VOCALOIDやUTAU、CeVIOといった歌声合成ソフトをまとめて言うにはどうしたらいいか?」という問題についてはこれまでも散々議論されてきた。現状は「ボカロ(広義)」になっている感じがする。
「ボカロ」の何が便利かって「わかりやすくてゴロがいい」ところ。「VOCALOID」の名前を考えた人は完全なる天才だし「歌うアンドロイド」を想起できる名前でありながら略しやすくていい名前なんだけど、「VOCALOIDとかとか」を束ねるのに超絶便利でしっくりくる反面「商標」なのが最大のネックになる。
「VOCALOID」は「YAMAHAの歌声合成VOCALOID」周辺のモノを具体的に指すものであって、厳密に言えばUTAUやCeVIOを含まないし、YAMAHAさんも「VOCALOID/ボカロが歌声合成の総称だと思われるような使い方は控えて」的なことを言っているので、残念ながら総称には採用できない。
2.バーチャルシンガー
とてもいい。実体のある=リアルな歌手や歌い手と対になる形で使えて的を射ている。しかも商標じゃない。ただ、残念なのは「VOCALOIDとかとかと、歌うVTuberを分離しにくい」という点。
最近だと、歌うVTuberも「バーチャルシンガー」を名乗るようになった。情報収集をしていると「何かいいネタないかな~おっ! 『新しいバーチャルシンガー』だって? 新製品来た? と思ったら歌うVTuberだったズコー」みたいなことが最近多い。
歌うVTuber別に嫌いじゃないけど、どっちなのかわからないのは純粋に困る。
3.VSinger
バーチャルシンガーの亜種。歌うVTuberの中にもこの表記を使う場合があるが、これも商標なので総称には使いにくい。
4.Singeroid
VOCALOIDと同じ発想の造語。Singer+AndroidでSingeroid(シンガロイド)。悪くないはずなんだけど、これも商標。そして、割と多くの人が「しんげろいど」って読む。読み方のブレはないほうが総称としては都合がいい。
5.キャラクター歌声合成
「キャラクター子供服」と同じ発想の造語。めっちゃ説明口調なのでわかりやすいし、商標じゃないけど、「キャラクターのない歌声合成ソフトを含むか含まないか論争」に巻き込まれやすい。
例えば「f1jp」みたいな名前で、ビジュアルやキャラクターが一切なく、声にも個性のない音声ライブラリがあったとして、それを「キャラクター歌声合成」と総称するのが適切かというあたりは意見が分かれそう。
6.ソフトウェアシンガー
とりあえず商標ではなかった。キャラクターがあるかどうかは明言していないので、VOCALOIDのVY1も特に問題なく含まれてくれるだろう。ボカロほどのゴロの良さはないので流行ったり浸透する気はあまりしてないが、的は外していないはず。スマートじゃないけど。
私個人としては、VOCALOIDのVY1も、設定の多いアノンカノンも、Sinsyのf00005jもLaLaSongのお兄さんもソフトウェアシンガーに入るが、MIDIの「ChorusAh」は入らない認識。ここはちゃんと詰めないといけない。
個人的にこの表記のいいところは、歌うVTuberを分離できるところ。VTuberを「ソフトウェア」と言い切るのはちょっと苦しいと思うのだ。とはいえ「歌うソフトウェア」ではなくて「ソフトウェアな歌手」なので、ただの機械ではないというニュアンスを表現したつもり。
この場合、リアルの歌手や歌うVTuberはこんな感じで表現できると思う。
リアルの歌手=ハードウェアシンガー
VOCALOIDとかとか=ソフトウェアシンガー
歌うVTuber=セミハードシンガー
ソフトウェアシンガーの対極なので、リアルの歌手は「ハードウェア」。リアルの魂とデジタルな身体を持つ歌うVTuberは「セミハード」。
ちなみにYAMAHAの「PLG-100SG」をどう考えるかは結構難しい。歌声が合成できるハードウェアなので、ハードウェアシンガーと分離しにくいのでは? 確かに(私には答えが出せない)。
【ソフトウェアシンガーの定義】
これは超絶めんどくさいのでできれば触れたくない。ざっくりいうと「歌声が合成できるプログラム」なんだが、
・VOICEROIDは本体機能だけでも歌声が合成できるプログラムだけど、ソフトウェアシンガーではなくて「キャラクターTTS」では?
・「歌声」を定義できないと楽器音を作るシンセサイザーを分離できない
・MIDIの「ChorusAh」はソフトウェアシンガーに入るのか
・「猫の鳴き声を合成するシンセ」が実は分離しにくい
などなど問題が発生する。皆さんのご意見をお待ちしております。
【追記】
この記事への反応を少し集めました。
・ボーカルシンセ
結構初期から使われているワード。ボーカルを合成できるシンセサイザー(楽器)という意味なので、ソフトウェアシンガーと比べると無機物寄り。「シンセボーカル」と呼ぶとソフトウェアシンガーに近くなる。
歌うVTuberと分離でき、キャラクターの完全にない音源を内包する。
・バーチャルボイス
漢字で書くなら「仮想音声」。ボイスなので歌声に限らず使えるワード。ゆっくりやVOICEROID、CeVIO TALKも含めた「合成音声」の柔らかい言い方としてアリ。
・アクトボイス/ボイスアクター
ボイスアクターは「声優」なので無機物だけを指すには使いにくいが「演技する声」だと、人間が主体というよりも音声が主体な感じがして、肉体を持たなくてもよさそうなニュアンスがちょっとある。
これも「合成音声」の柔らかい言い方になる。
・歌声合成ソフト
総称というか事実。「歌声合成ソフトの総称を決めよう」といわれると「歌声合成ソフトって今言わなかった?」ってよく思う。このワードは私もよく使うし、おそらくもっとも冷静で正しいワードだと思う。
キャラクター性の議論を挟まない呼び方で、人間や歌うVTuberとは完全に分離できる。
個人的にはキャラクターの話をしない、もしくはキャラクターがあるものもないものも含めて言いたいときは「歌声合成ソフト」、キャラクター性の話をするときや、キャラがある歌声合成ソフトの話をするときは「ソフトウェアシンガー」って呼ぶ。
・VocalAgent
Agentとは「代理人」という意味。「人間の代わりに歌うもの」というニュアンスがある。人間の代わりなので人間ではない。キャラクター性は少しあって、歌うVTuberは分離できなくもない。
「人間の代わりに歌うもの」ということになると、そこそこ勝手に歌ってほしい。ということで、これは最近はやりのAIシンガーと相性の良い呼び方になりそうだ。
・AIシンガー
このごろはやりの「AI技術を活用して、楽譜を渡せば勝手に表現豊かに歌ってくれる歌手」を指す言葉。ソフトウェアシンガーの下位カテゴリー。
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