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ラブシーンの“リアル”とは 需要が高まる「インティマシー・コーディネーター」

ネットフリックス日本の映画「彼女」
女性同士の恋愛を「赤裸々」に描いたとして話題ですよね。(私は未見です)

 この映画をめぐる報道でよく取り上げられたのは、「インティマシー・コーディネーター」という職業です。

 セックスやキスといった性的な行為の撮影現場で、役者たちの人権と安全に配慮し、心理的なケアもしつつ、監督やカメラマンの意図するシーンをより芸術的に撮れように現場で助言するプロです。
 性暴力の被害防止にも一役買っています。
                        (写真はIDCのHPより)



 そもそもインティマシーって聞き慣れない言葉ですよね

Intimacy とは
1;親密さ、親しい関係
2;〔長い間慣れ親しんだことによる〕深い知識、造詣
3;〔静かな〕人目のない場所
4;なれなれしい言葉[行為]
5; 愛情行為◆セックスの遠回しな言い回し

出典;アルク英辞郎  https://eow.alc.co.jp/search?q=intimacy

●経緯 
ハリウッドにおける長年にわたる性暴力を告発した#MeToo運動後に、映像業界では、性暴力の根絶や性差別をなくす具体的な動きがいくつもありました。
 インティマシー・コーディネーターはそういった声に押されて、2018年にHBO Maxがドラマシリーズ「DEUCE/ポルノストリート in NY」で導入したのが本格的な始まりとなりました。1970年代のニューヨークの歓楽街を舞台にしたドラマです。

この業界の先駆けであるAlicia Rodis さんのインタビューが掲載されています。

Rodisさんらが立ち上げた団体が IDC 「Intimacy Directors and Coordinators 

今や、HBOだけでなく、Netflixなど様々な映像制作会社が撮影現場でインティマシー・コーディネーターを導入しています。

さらに全米俳優映画組合(SAG-AFTRA)やニューメキシコ州のフィルムコミッショナーなども独自のプログラムを設けて、養成を始めています。
 演劇などドラマや映画以外の分野でも導入が広がっています。北米だけでなく、英国、インドや韓国などにも

IDCやIPA(後述)の関係者のインタビューをチェックしたところ、今や全米で100人ほどのコーディネーターがいるとか。
 コロナ禍の収束に向けて、様々なところが再開している中、インティマシー・コーディネーターの需要が今後、まずまず高まることは間違いなし!

IDCのサイトを見ると、ワークショップはどれも売り切れ・・・
 対面ワークショップが再開したら、私も受けてみたいです。

ちなみに団体は2つあります。
 先駆けとなったIDC、そしてIPA(Intimacy Professional Association)。日本で活躍しているICの方は、IPAに所属されています(※5月21日修正いたしました)
 IPA創立者である Amanda Blumenthal さんは母親がHBOの幹部だったそうで、映像現場に慣れ親しんでいたそうです。こちらでもオンラインワークショップを開催しています

では、撮影現場の反応は…
ユアン・マクレガーはよかったと絶賛してしています。

しかし、反対意見があるのも事実です。
「迫真の演技をしてこそ、芸術性が高くなり、観客の心を動かす」

そんな大義名分のもと、これまでどれだけ多くの女性たちの人権と心が、映画やドラマで踏み躙られてきたでしょう。監督やカメラマン、プロデューサーといった「意思決定権」がある人々は、長らく異性愛者の男性(ハリウッドでいうとさらに白人)で占められてきました。

 男性目線という偏りに無自覚な人たちの「リアル」が追求される中で、騙し打ちのように性的行為を強制された人もいます。

シャロン・ストーンがインタビューで語っていたように、「名場面」の背景にも性的な搾取がありました。

多くの人が撮影現場での性暴力・性的搾取に傷つき、そのことが原因で業界を去った人たちもいます。

 殺人行為の撮影シーンで、実際に人を殺すでしょうか?
 「セックスシーンは本当に行為しなければダメだ」と考える監督がいるならば、それは自分たちの演出力のなさを告白しているに等しいです。

 「彼女だってその撮影に同意していた」
雇う側雇われる側という圧倒的に立場の差がある中で、本当の意味での同意だったんでしょうか。それはイエスといった側が責められるべきなのでしょうか?

 そもそも私は、日本の映画やドラマにおける性行為シーン、濡れ場と言われるものに対する違和感がずっとありました。

え? 拒絶しているよね
嫌よ嫌よも好きのうち???

No  Means  No!!

いきなり人を殴ったら犯罪なのに、性暴力を振るっても「彼女は喜んでいた」となるのはなぜ?

 それは女性=「従順、性に受け身であるべし、求められた時にのみ応える」という偏見では? 

 そういえば、昭和時代の某名作とされるドラマでも、好きだという気持ちをうまく伝えられない男(柴田K兵)が、想いを寄せる田中Y子を追い回し、自宅アパートに押しかけて、抵抗している彼女を押さえて無理矢理行為に及び、なぜかそのご2人はつきあう・・・みたいな謎すぎる展開がありました。

今見たらレイプ、いえいえ、当時だってレイプ、性暴力です・・・・

ICの導入が広がり、性的行為やヌードの演出手法だけでなく、ぜひ性的行為シーンのあり方(描かれ方)についてまで議論が深まるといいなとおもっています。

現在、ロサンゼルスでインティマシー・コーディネーターの取材を進めています。
 実際に現役の米国人コーディネーターの方にインタビューし、近々、まとめた記事を某ウェブメディアで出す予定です。
 掲載されたらここでも告知したいと思います。