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【読書記録】〝犬がいた季節〟伊吹有喜 著

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル・ヨムノスキーです。

 突然ですが、あなたは単行本派ですか、それとも文庫本派ですか?
 私は基本文庫本派です。しかも古書中心。
 なぜなら、単行本はまず大きくて、携帯するのに不便だし、本棚に置くと存在感はあるけれど、文庫本に比べるとスペースをとる。何よりも価格が高い。安月給の貧乏会社員としては、なるべくコストを抑えて、その分たくさんの本に出会いたいというところ。

 …しかし、よく考えてみると、単行本の全てが文庫化するわけではないし、文庫化する目安の一つとして単行本の売れ行きというのもあるだろうし…。
 話題になっている本、好きな作家さんの本はできるだけ早く読みたいし…。
 でもやっぱり1冊2千円前後というのはかなり痛いし…。

 などと考えながら結局図書館を利用するか、文庫化を待つというスタイルに落ち着いては居たのですが、一冊の本に出会い、その考えはガラッと180度とまではいかなかったけれど、大きく変わったのです。

 前置きが長くなりましたが、私のスタンスを変えるきっかけになった本とは、

犬がいた季節/伊吹有喜 著
1988年夏の終わりのある日、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。「コーシロー」と名付けられ、以来、生徒とともに学校生活を送ってゆく。初年度に卒業していった、ある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら…。昭和から平成、そして令和へと続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた18歳の逡巡や決意を、瑞々しく描く青春小説の傑作。
版元ドットコム 商品ページより

 まず、この書影に懐かしさを感じませんか?
 最近いわゆる学ランの高校って、とんと見かけなくなりましたからね。学生時代応援団に所属していた私としては、高校生といったらやっぱり学ランのイメージなんですね(もちろん長ラン&ドカンなのだけれど)。

 ある日高校に迷い込んだ犬が見つめ続けた12年間。その12年を昭和63年度、平成3年度、平成6年度、平成9年度、平成11年度の卒業生たちがリレー形式で綴る物語は、18歳という多感な時期の期待や不安、そして持って行き場のない有り余るエネルギーと得体の知れないモヤモヤ感が、その当時の出来事と、流行したファッション、テレビ番組やヒット曲を散りばめながら語られていきます。
 世代的にどストライクなこの物語は、まさに私の青春そのもので、ページを捲るたびに「懐かしい!」を連発。
 最後の令和元年なんてもう、グッときます。

 …で、この本には、読了した時の温かく優しい気持ちを倍増させる見事な仕掛けがあるんです。
 一時期話題になっていたみたいなので、知っている人はみんな知っている話ではあるのですが、もしご存じない方のために。

 読み終えたら、本のカバーを外してみてください。

 あえて画像は掲載しませんが、どうです?
 読んでいる最中のあのなんとも言えない甘酸っぱさが蘇ってきませんか?

 これって、単行本ならではの仕掛けだと思うんです。
 文庫化されたときにどうなるかはわからないけれど、この仕掛けがなくても物語は十分楽しめるわけですし、デザインがある程度決まっている文庫本では省略されてもおかしくない仕掛け。でも私はこの仕掛けが大好きなんです。この仕掛けのことを知って、遅蒔きながら単行本の魅力に気づいてしまったのです。

 こんな仕掛けができる単行本ってすごい!
 こんな仕掛けを思いつくブックデザイナーさんってすごい!!
 だから読書はやめられません。
 この本に出会って、できるだけ単行本を買って読もうと考えを改めたのでした。
 そのためにはまず、お小遣いの大部分を占めるお酒をなんとかしなくちゃ。

最後に、
「読書って、いいよね」


【この記事で取り上げた本】
タイトル:犬がいた季節
著者:伊吹有喜
出版社:双葉社
ページ数:352

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