鏡よ鏡❗
鏡よ鏡‼️
私はある王宮に置いてある鏡!
一見すると何の変哲もないただの鏡!
しかし、ただの鏡と思ったとしたら、大きな勘違(かんちが)いである。
たしかに、私が鏡としてこの王宮に来た時は、何の力もなかった。
だが、年月というものは、人間を成長させるだけでなく、鏡としての私を成長させたのだ!
鏡としての私の寿命は私が壊れるまではない。
なので、私を呼び寄せた王よりも私の方が長生きなのである。
私を呼んだ王が亡くなり、その子供、孫・・・何世代も世代が代わり、どのくらいの年月が経ったのだろうか、人間の世界でいう500年という年月が流れ、私は長い年月を費やす事である特殊な能力を得る事が出来るようになった。
その能力は二つある。
世界で一番美しい人間を人間の言葉で伝える能力である。
そして、もう一つは、世界で一番美しい人間は誰か?を聞いた人間の未来を見る事のできる能力なのである。
二つ目の能力は、私にだけ見る事のできる能力で、その未来がどうであるか?その人間に伝える事が出来ない!
仮にその人間にこの先どんな事が待ち受けていようとも・・・である。
最近、王と結婚した女が今私がいる部屋の中へとやってきた。
その女の名前は知らないが、王以外からはお妃様と呼ばれている。
お妃様と呼ばれる女は私の前の椅子に腰掛け、私を見ながら、化粧を始め、私をにらむような目でジッと見つめ、私に対してこう聞いてきた
『鏡よ!鏡!世界で一番美しいのはだーれ?』
私は、自らの能力を使い、世界中の美しい美人と呼ばれている人たちの中で誰が美しいかを探しだした。
そね答えは目の前に座っているお妃様と呼ばれている女だとわかり、私はこう答えた。
『世界で一番美しいのはお妃様です!』
そう答えるとお妃様と呼ばれる女は先ほどまでの険しい表情を和らげ、物すごい嬉しそうなニコヤカな顔で
『私〜!私が!私が、世界で一番美しい^o^』
と喜び、お妃様の家来に私を綺麗に磨くように命令した。
私は、長い年月生きてきたが、私のこの能力に気づき、私の能力を評価し、私を綺麗にしてくれるように命令したお妃様のことが、私は一瞬で好きになりました。
そして、お妃様は毎日ではないのですが、何か嫌なことがお妃様の身にふりかかった時、私の目の前に現れ、私にこう聞いてきました。
『鏡よ!鏡!世界で一番美しいのはだーれ?』
と!
そうこうしているうちに、王様とお妃様の間に、ある女の姫が誕生しました。
その姫の名前は『白雪姫』
『白雪姫』彼女が、この先お妃様にとって、お妃様をおびやかす存在になるという事は知らずに・・・
それから、月日は流れ、白雪姫が生まれてから10数年が経った。
そんな、ある日の事だった。
お妃様が、私の部屋のドアを乱暴に開け、私の部屋に涙を流しながら入ってきた。
そして、テーブルの上に飾りつけてあったラベンダーが入った花瓶を右手で思い切り、なぎ倒し、うわっ〜‼️っと叫び、私のところに涙を浮かべてやってきて、私に向かって、こう話しかけてきた。
『ふっふっ!ふっふっ〜!
あ〜っはっは!はっは〜!
ねぇ!ねぇ!鏡さん!
私!私よ!
私って何なの⁉️
私にとって‼️王からの愛を受ける‼️
私にとっては、王からの愛!
これだけ‼️これだけが全てで、私は常日頃から綺麗で美しく!そして、どんなドレスも着飾れるように体型も維持してきた!
王からの愛‼️
王からの愛を受けるために‼️
いやっ!でも、そうは言っても殿方であるのだから、浮気したりもする‼️
そんな事は重々承知‼️
重々承知している‼️
でも、あの相手だけ!
あの相手‼️だけは許せない‼️
私の遺伝子を受け継いでいる‼️
あの『白雪姫』
雪のように美しい肌をしていて、私の若く輝きに満ち溢れていた‼️
私が一番輝いていたあの時代!
そう!あの時代の私と瓜二つなの!
あの女は‼️
あの‼️美しさに満ち溢れていた私を彷彿(ほうふつ)させる!
そう‼️あの『白雪姫』だけは‼️
ゆ・る・せ・な・い・・・
許せない!許せない!許せない!
そうよね!
鏡さんも、そう思うわよね!
しかし、長年かけて作られた私の能力は、私の意識とはうらはらに、世界中の美女という美女を私の意識の中に読み取り、私はお妃様に対して、こう答えた。
『世界中で一番美しいのは白雪姫です』
それを聞いたお妃様は、髪の毛を一心不乱にかき乱し、声にもならない声を出し、泣きながら、涙で顔が悔しがる表情をしながら、一人で叫ぶようにこう言った!
『ねぇ!ねぇ!ねぇ!
言って!言って!嘘だと言って!
そんな事はない!
間違い!って言って!
わたしは・・わたしは・・・
鏡だけが頼りなのよ‼️
そんなわたしの希望を、たった一つだけの希望を見捨てないで!
もう一度聞くね!
鏡よ!鏡!世界で一番美しいのはだーれ?』
私は今までの優しく、美しく気品に溢れたお妃様を傷つけたくはなかったが、鏡の宿命てして、本当の事を言うよりほかはなかった。
『世界で一番美しいのは白雪姫です』
お妃様はその言葉を聞くとともに、ショックのあまり、気を失ってしまった。
お妃様を傷つけたくはなかったが、わたしの能力のためにお妃様を傷つけてしまった。
そう思った。その瞬間の事だった。
私のもう一つの能力である世界で一番美しい人の未来を見る能力が発動したのである。
私の体にある映像が駆け抜けたのだった。
その映像は、お妃様が魔女に変装し、毒リンゴを持って白雪姫の所へと向かっていく映像である。
その毒リンゴの作戦は一見成功したように見えて失敗に終わる。
私には失敗がわかるため、お妃様にその事を伝えたい!
しかし、私の思いや、私の声はお妃様には届かない‼️
そして、そう思っていると、お妃様は何事もなかったかのようにムックリと起き上がり、無表情のまま、先程、お妃様自身がなぎ倒した花瓶を右手に持ち、大きく振りかぶって私を粉々に破壊した。
私はお妃様に壊される事に対しては、どう思う事もない!
ただ、お妃様‼️
私はあなたの為に、あなたに教えてあげたいあなたの未来の姿を・・・・
鏡は、悲しさや寂しさはなかった。
ただ、お妃様に伝えたかった未来が伝えられなかった後悔だけがあった。
その最後の映像!
この鏡の、最後の瞬間に写っていた鏡の破片に写っていた姿が、あなたが目にしているその姿なのです。