週刊ユグド通信Vol.84『アサシンギルド(前編)』
今回はかつてラザフォードが率いたアサシンギルドの話でもしましょう。長年に渡ってその存在は公然の秘密として語られてきた非合法ギルドの実態と活動内容を研究してみます。
1.アサシンギルドとはなんぞや?
ユグド大陸の聖王国にある商業都市【副都】を統括する行政機構【ギルド同盟議会】非加入の非合法ギルド。副都の裏社会を牛耳る地下組織として諜報、暗殺、強奪、破壊工作、情報操作、闇市、闇賭博といった活動を行っている。表向きには存在すら秘匿されているがある程度の地位、立場にある人間にとっては公然の秘密として認知されている。かつては商人議会からの諜報依頼も受け付けていたが、王都陥落以降は再編されたギルド同盟と袂を分かち副都の実権を握るべく暗躍していた。いつから存在するのか起源は不明だが暗殺王と呼ばれたラザフォードが個人的目的の為に作ったとされる。
2.アサシンギルドの構成員
アサシンギルドには大きく分けて二種類の構成員がいる。一つは暗殺や強奪を行う実働部隊。もう一つは酒場『跳ね馬亭』等のフロント企業や賭場や闇市の運営に諜報活動、情報操作を行う(仮称)裏方部隊になります。義勇軍に属するアサシンギルド(元含む)メンバーの大半は実働部隊の所属ですがフランツは裏方と見ていいでしょう。
3.義勇軍のアサシンギルド
義勇軍に参加した新旧アサシンギルドのメンバーは以下の十人。と言っても三人は義勇軍が出会った頃にはギルドを離れています。ここでは各人の経歴を振り返ってみましょう。
1.ラザフォード
アサシンギルドの創設者にして謎多き人物。黒の因子を操り魔物を召喚する等、人間でありながらその性質は黒の軍勢に近いが魔神ではない。黒の根源によってユグド世界に顕現されたが前世があるのかは定かではなく亡くなっても何度となく甦っている節がある。(黒の根源は既に消滅しているので今亡くなっても甦ることはない気はします)
自身の運命を縛る黒の根源への復讐の為に世界を救う『鍵』となる存在を探すべく孤児や裏家業の人間を勧誘してアサシンギルドを結成。副都を影から実効支配することで黒の軍勢に対抗しようとユグド大陸全域で暗躍していたが、黒の根源が消滅したことから一部の手駒を残して失踪。現在は更なる危機に見舞われるユグド世界を遠巻きに観測している。(義勇軍では役不足と判断すれば自らが動くことも辞さない模様)
2.ヴィドック
現アサシンギルドの長で何一つ痕跡も残さずに標的を消失させる凄腕の暗殺者。というのは表の顔で裏ではギルド評議会のギルバート議長の密偵をこなす二重スパイでもある。ラザフォードも彼がスパイであることは勘づいていたようだが尻尾を出さないので腕の立つ体の良い手駒として泳がせていた模様。趣味は連絡手段でもある鳩の飼育。(因みに彼がこなした仕事の多くは議長の協力で標的を秘密裏に国外に脱出させていたりするが、それすらも痕跡を残してはいない)
3.アンジェリカ
ラザフォードの愛弟子で彼が仕込んだ暗殺者の中でも最も優れた技能を持ち合わせた女性。元々は魔物に滅ぼされた町の生まれながら町の人間からも疎まれる孤児だった所を偶然通りかかったラザフォードに拾われて名前と技能を与えられた。師の教えに従い余裕を演出する嘲笑を心掛けたことからついた異名は『微笑む悪魔』。
元々は義勇軍隊長暗殺の任を受け接触してきたが任務は未遂に終わり、隊長が許可したことから暗殺目的で義勇軍に同行するも任務に疑問を抱くようになりアサシンギルドを脱退する。師のことは純粋に尊敬している反面忠誠心は最早皆無で、挨拶代わりに一撃をお見舞いすることも多く皮肉も込めて年寄り扱いしている。最近では怖いとドン引かれる嘲笑ではない自然な笑みが零れることもあり、本人がその意外な一面に最も驚いていたりする。
4.スルスタン
自らを顧みない無鉄砲で自暴自棄な暗殺者。ラザフォードの弟子の一人でアンジェリカよりは後輩の孤児。仲間の裏切りで行き倒れていた所を義勇軍に拾われ以後行動を共にする。一度や二度ではない裏切りで抱えたトラウマは根深く近づく者全てを威嚇する姿は路地裏の野良犬の如く。それでも義理堅い性格をしており貸しを残したくないと無茶をする度に貸しを作っては文句を言うツンデレでもある。
5.ニーナ
義勇軍隊長を暗殺に来たアサシン達と行動を共にしていた少女。マスター(ラザフォードではない)の命令に忠実な殺人機械として育成されていたこともあり感情表現が苦手で口下手。自身を使い捨ての道具程度にしか考えていなかったが義勇軍との交流を通じて徐々に感情を開花させる。王都防衛戦にも参加していたようなのでそこで前のマスターを失なったと思われる。
初代マスターはラザフォードですが、暗殺術を伝授した別のマスターがいた模様。
6.フェイスレス
誰も知らぬ間に義勇軍に居着いて馴染んでいた道化師姿の暗殺者。ギルドのメンバーですら素顔を見たことも声を聞いたこともないと言われていた。隊長に対する信頼の証として仮面が半分になり本名も明かしてくれましたが、未だに声を聞いたものはいないと言われている。
故郷の村を魔物に焼かれて愛犬メリーと共に森を彷徨っていた所をアサシンギルドに保護されたらしい。顔に火傷を負ったのが仮面を付けていた理由のようだが何の目的で義勇軍に近付いたのかは不明。一説には隊長の暗殺を狙って近付いたものの一目惚れしたのでは? とも言われているが実際の所は分かっていない。言葉が喋れない訳でもないようだがシャイなのか無口で意思疎通は基本的にジェスチャーで行う。
7.ツァイス
奇術にタネと仕掛けがあるように、人の世にも表と裏がある。そんな世の裏側を知りたいという好奇心だけでアサシンギルド入りを果たした奇特な奇術師。普段は街角で一般人相手に奇術を披露してタネを見破れば報酬を払うと触れる大道芸人。だが裏の顔は奇術を駆使して標的を暗殺するアサシン。因みにタネを見破る相手を探しているのは彼がギルドの勧誘員も兼ねているから。(動体視力と洞察力に優れた人間を募集中)
8.ルクレチア
おおよそアサシンに似つかわしくない派手なドレス姿から『極彩色の悪魔』と呼び恐れられた凄腕の狙撃手。狙った獲物は例え姿を認知されようと確実に仕留めるというポリシーを有言実行するギルドの弓使いの中でもトップクラスの実力者。義勇軍結成の少し前にギルドを脱退して湖都に移住しており現在はフリーの便利屋として活動中。因みに趣味は裁縫で一張羅のドレスもお手製だが木っ恥ずかしいので秘密にしている。あくまでも推測になりますが、任務で訪れたのか輸入品に魅了されたのか湖都の装飾品や生地を求めて移住を決意した模様。
9.リュビア
蛇腹剣と呼ばれる伸縮自在な武器を振るう千河の氏族出身の森妖精。副都にきた経緯は不明だが精霊島に居づらくなって流れてきた模様。汚れ仕事に嫌気が差して王都陥落の少し前にギルドを脱退して戦士ギルドに移籍した。元殺し屋という経歴から疎むものも少なくないが本人は至って気にしていない。因みにif世界のリュビアはギルドを脱退しなかったことからアサシンギルド造反事件の際、議会側に付く為にギルド長に就任している。結果アサシンギルドはギルド同盟の正規会員として残るもギルド主流派は地下に潜ってしまいました。
10.フランツ
元盗賊の情報屋でアサシンギルドの密偵。正体を隠して議会とも接触していたが、義勇軍隊長の人柄に惚れ込みギルドと袂を分かつ。軟派なお調子者ながら情報収集力と人並み外れた身体能力は本物である。
長くなりそうなので今回はここまで。次回はラザフォードとアサシンギルドが過去に何をやらかしてきたのかを検証したいと思います。