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チェンクロ課外活動22【黒騎士カトストロフィー6】

年代記研究者Ainによる主人公と黒騎士が辿った旅路を比較するこのシリーズもいよいよ佳境を迎えます。
黒騎士はどんな仲間と出会い何を成せなかったのか。物語はいよいよ決戦の地王都へ。

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 1.最終決戦参加者

 ユグド世界の終焉と新生に結び付く黒の王との最終決戦が始まります。この戦いは過去約500万回繰り返されたもので、その都度集まった仲間の顔触れには誤差が生じます。まずは主人公(本編)、黒騎士、ユーリ(アニメ)の三人が、王都決戦に臨んだ際に聖王国に集った仲間達を見比べて見ましょう。
義勇軍立ち上げメンバー(ピリカ、カイン、マリナ、ミシディア、フィーナ)は共通ですね。
残りの顔触れはかなり異色になります。

1.チェンクロ本編 第1部の場合

本編第1部に出て来た(NPC含む)仲間の内訳を見てみましょう。

・前線
アインスロット、カリファ、シュザ、シルヴァ、セリーヌ、ファラ、ラファーガ
・支援
オルガ、ディルマ、バルドル、ファティマ、メルティオール、ロロ
・後方
アシュリナ、ギルバート、ツル、ユグド、ルイーゼ
(ユグドは途中で前線に参加します)

驚異の18人。え、これだけ!?
と思いませんか。そりゃあ第一部ですからね。
ヴォルクリスもナナイもアリーチェも居ませんよ。
さて「ユリアナ様は?」と気付いたら鋭い。
実はいないのですよね。その辺は後述するとして、次はヘクセイタスの閃(以下アニメ版)はどうだったのでしょう。

2.ヘクセイタスの閃の場合

今回は黒騎士の話との比較なので、アラム君が加わる前の返り討ちに合った時の話になります。

・アニオリのブルクハルトさん。本編では近衛隊長でした。

・聖騎士団
アインスロット、アレス、ウェイン、ブルクハルト、ユリアナ
・魔法兵団
ヴェルナー、カティア、クラウス、ユニ
・迷宮山脈
キキ、バルドル、ロロ
・精霊島
ビエンタ、ラファーガ
・九領
シドウ、シュザ、トウカ、ハルアキ
・不参加
アルボール、ツル、ユグド、リリス
(OPに出番あり)

全部で18人ですかね。いや~副都湖都が居ませんね。(実際はギルドにも甚大な被害が出ている描写があります)アニメ版では『ユグド同盟』という名称が用いられていますが、これはアニオリと思われます。
同盟結成の経緯は不明ですが、アニメと原作でも相違点が色々とあります。詳細は長くなるのでまた別の機会に。

アニメの出撃メンバーは尺や構成の都合上そこまで多くはありません。大体がお馴染みの顔触れですが、ブルクハルトとシドウはちょっと特殊ですよね。
(シドウは第一話には出ません)

3.伝承篇【黒騎士伝】の場合

ここまで本編とアニメ版の出撃メンバーを見てきましたが、黒騎士伝は半端ないですよ。85人ですから。
これに主人公やフィーナ達も加わるので90人以上。
単純計算でも五倍。更に黒騎士の時間軸に出番はあるものの、前線で姿を見かけなかった人達もいるので実際には二倍近い仲間がいたものと思われます。

※()内は王都には行かなかった人達。

・副都
アルドラ、アンジェリカ、ヴィドック、ヴォルグ、エンヴィ、オネット、(ギルバート)、ジグムント、シルヴァ、スルスタン、ツァイス、ナナイ、フェイスレス、ミレイユ、ラティ、リュビア、ロレッタ

・聖都
アインスロット、アデル、アリエッタ、アントン、エリーナ、セルバンテス、ダナディ、トーマス、ベルヴィード、マリス、ユリアナ、ライネル

・賢者の塔
アイザック、イザヤ、ヴェルナー、カティア、クラウス、シューレ、ファティマ、フェブリア、メルティオール、ユニ

・迷宮山脈
エイダル、エルダ、オネット、オルガ、キキ、クリオラ、ジャンダル、チワ、トーガ、トト、パポラ、バルドル、ピピ、フリージア、ロッソ=ロッソ、ロロ

・湖都
アシュリナ、カディル、カリファ、ジャファール、ムスタファ、ラヒーム、ロクサーナ

・精霊島
アギーラ、エイラ、オルオレータ、(カルネロ)、パロマ、ビエンタ、(ユグド)、ラファーガ

・九領
イブキ、インドウ、サコン、サナ、シュレン、ズイハ、ソーニャ、チヨメ、ツル、トウカ、ハヤテ、ハルアキ、バルキ、フーコ、ボクデン、(ミシマ)、ヨイチ、ヨシカゲ、ヨシツグ

 正直多いですよね。仲間の数は主人公が集めた仲間に引けを取らない顔ぶれ。これだけの仲間がいながら何故負けてしまったのでしょう?

最も大きな理由は【円卓会議】が開かれていないからでしょうね。

「いやいやユグド連合軍(ユグド同盟)が集結したではないか。これは円卓会議が開かれた証左では?」
と思われるかもしれませんが開かれていません。
次の項で円卓会議の経緯と影響について解説します。

2.円卓会議

精霊島でシュザに囚われたフィーナはユグド大陸を救う方法をクロニクルに記された円卓会議に見出だします。円卓会議の結果は全会一致での王都総攻撃。
(詳細は黒騎士カトストロフィー3~5を参照)
ここまでは一見相違なさそうですが、黒騎士伝やアニメでは実行されなかった作戦が幾つかあります。

1.二つの師団

黒騎士時代とアニメ版ではユグドの各勢力はそれぞれの部隊を率いて王都に総攻撃を行い、その間を縫うように義勇軍が王城にいる黒の王を目指します。
本編では総攻撃こそ共通ですが、部隊は大きく二つに分けられています。
一つは王都を北から目指す九領軍、傭兵部隊(副都軍)、土・火妖精を率いるシュザ師団。もう一つは王都を南から目指す騎士団(聖王国軍)、湖都軍、魔法兵団、森妖精を率いるアインスロット師団。
(義勇軍はセリーヌの別動隊と共に中央突破)
混成部隊を二つに分ける方式は歴史上初の試みと思われます。

2.地下トンネル

先行した土妖精と火妖精が共同で王城南にある城塞に掘った奇襲用の地下トンネル。黒の軍勢の待ち伏せが無かったので過去に類例はないのでしょう。
この一件が呼び水となり、火妖精ロロは土妖精との関係を再構築します。

3.賢者の塔ビーム

メルティオールの必殺技でもお馴染みのアレ。
試作品自体は魔法兵団設立前から既に完成はしていました。(魔法兵団学生伝参照)
しかし試作品では黒の軍勢を消し去るには出力不足。
或いは一発撃ったら爆発していたかもしれません。
その為黒騎士伝でのメルティオールはゴーレム軍団を率いて魔法兵団と共に前線に赴きます。
念のため付け足すと、賢者の塔ビームの実用化に舵を切るきっかけも円卓会議だったりします。

3.光を掴む!

円卓会議が開かれたことでユグド連合軍は所属に縛れない形で混成部隊を組み、地下トンネルと賢者の塔ビームによって黒の軍勢を徐々に追い込みました。しかしこれだけの戦果を重ねても未だ黒の王の脅威は健在なのです。(黒騎士伝ですが)黒の王は語ります。

黒の王
「足りぬ。それでは足りぬ」
「黒の力の深淵は、こんなものではない」
「こんな光では闇を貫くことはできん」
後半部分は省略しますが、要は心技体いずれが不足しても黒の根源は滅せないということなのでしょう。

・黒の王の背後に蠢く怪しい影

 ここで賢者バルタザーリの言葉も振り返って見ましょう。(迷宮外伝参照)
バルタザーリ
「主人公(仮)は運命を狂わせるなにかを持っておるようじゃ」
(中略)
「主人公(仮)自身に、なにか不可思議な力があるのかもしれん」

どういう力なのでしょうね。この辺は主人公の出生に絡むのかもしれませんが、別れ際にこう伝えます。

バルタザーリ
「主人公(仮)よ、お主はかけがえのない仲間達といくたの苦難を乗り越えた」
「それがお主を世界の真理へ近づける」
「ゆめゆめ忘れるな。
お主の仲間は誰ひとり欠けてはならん
この言葉が額面通りなら義勇軍の仲間は決して失う訳にはいかないのです。

黒の王を倒すには義勇軍の仲間が一人でも倒れてはいけない。そして絶対的な光が必要なのです。
しかし黒の軍勢と戦い続けてきた主人公は僅かばかりとは云え黒化してしまっています。
(フィーナがクロニクルで結界を張ってくれるのは記憶を取り戻した後以降)
これって既に詰んでいる状態なのですよね。

シュザとアインスロットが黒化病に罹患しているのはご存知ですよね。
シュザは第3部で世界根源に操られかけましたし、アインスロットも第4部で自身が抱え込む闇を幻獣に操られました。要は黒化している主人公に黒の王は討てないし、よしんば倒せたとしても黒の根源に敗れることになります。でもそうはならなかった。なぜか?
フィーナの姉リヴェラと時の鑢の力だけでは黒の根源には敵いません。主人公に必要なものは唯一無二の絶対的な光。それを可能にしたのが黒騎士になります。

王都で黒騎士と相対した主人公ですが、黒騎士はフィーナとピリカを自身のクロニクルに閉じ込めてしまいます。主人公は事態を察して駆け付けたユグドに導かれ黒騎士との戦いに挑むこととなります。
この時主人公を蝕む黒の因子が黒騎士に吸収され、逆に黒騎士に僅かに残された良心が光となって主人公に吸収されました。これが唯一無二の絶対的な光を纏った主人公になります。即ち黒騎士の絶望的な末路があるからこそ、現行世界は救われたというのが私の結論となります。

4.二人の旅路

主人公と黒騎士は概ね同じ道のりを辿りましたが、それでも二人の旅路には幾つもの差違が生じたことはこれまで述べた通りですね。しかしまだまだ細かい差違については説明しきれていません。
伝承篇【魔法兵団学生伝】にてバルタザーリはゼロ(ユニ)とベルゲン教授を輪廻世界におけるイレギュラーな存在として注視していた描写があります。
二人は時に世界を救うことに尽力し、時に敵として滅亡を加速させました。
ここからは、そうした世界が再生される毎に起こる差違を(アニメ版含めて)検証したいと思います。

1.裏木戸の盾

『黒騎士カトストロフィー1』でも触れましたが、主人公と黒騎士の最大の差違と呼べるのが裏木戸の盾になります。裏木戸の盾が世界を救ったとまではいえませんが、数回(※)主人公の危機を救ってはいます。

・服の色が違い、背中には盾を携え剣は腰に差しています。
・黒の王に敗れたアニメ版。盾はなく顔にキズがあります。

(※)盾の用途。魔神タラブ【副都 外伝】と真理の少女リンの【私は生きる】で身を守ってくれています。

2.ユリアナの有無

聖王国の王女ユリアナは黒騎士伝とアニメ版では義勇軍と共に王宮へ突入しますが、本編では何処にいたのでしょう? 実は謎なのですよね。
少なくとも円卓会議には参加していません。
唯一ユリアナの姿が確認できるのが『年代記の少女フィーナ』のキャラクエ『続く未来』になります。
この話は本編のアナザーストーリー。もう一つの黒の王との決戦が描かれます。
ここに集まるのはチェインストーリーの仲間達12人。

・本来ここにいなかった面々が集結しています。

黒のクロニクルの中ではチェインストーリーの物語は発生していないことになっていますが、黒騎士の時間軸ではアルヴェルト、アデル、ユリアナ、リリス、キキ、ハサン、バリエナ、ロレッタの8人のチェインストーリーは履修状態(※)であることが窺えます。(それでも絆の力には不十分だったようですけど)

(※)例・テレサとリリスが親友になっている。

3.騎士団の立ち位置

 本編では円卓会議を通じて支障がなかった騎士団とギルドの連携も黒騎士伝ではそうもいきません。
聖騎士団は王都奪還戦に敗れた際に(結果的に)副都を盾にする形で聖都に撤退しました。これが一部のギルドや商人達から反感を買っています。
ユリアナは魔物排除とは云え、武装した騎士団を副都に送ることを躊躇して義勇軍に魔物退治を依頼しました。

他にもユリアナと行動を共にするベルヴィード(叔父様)が義勇軍と出会うのは踏破【王都の白百合】なので、この時点では聖都にすらいません。

4.黒化傭兵

本編では円卓会議が終了したタイミングに黒の軍勢が黒化傭兵(※)を投入してきました。
カリファやシュザの協力もありフィーナが生け捕りにするよう説得しましたが、黒騎士伝、アニメ版では黒化傭兵が出てくることはありませんでした。

(※)王都奪還戦等で行方不明になっていた傭兵達。
黒の軍勢の捕虜にされて黒化させられていました。

5.大海の渡り手

海風の森妖精の中でも海洋生物の加護を受けた者達を総称して『大海の渡り手』と呼びます。(ペイシェやルーラ、バラクーダにオルカなんかがそうですね)
主人公が彼女らと出会うのは第2部。外海に船出するための航海士を探していた時です。
ところが黒騎士の時間軸ではルーラ、トゥバラオが仲間にいるのですよね。
何時出会ったのかは定かではありませんが、精霊島に渡る時に偶然知り合ったのかもしれません。

6.森妖精の長達

先程大海の渡り手に言及しましたが、族長達も立ち位置が異なります。
黒騎士伝では年代記管理者のユグドは精霊島を離れません。一方本編では島の守りに注力した海風の女王オルオレータはラファーガと共に聖王国に向かいます。

細かい所ではカルネロがユグドの側にいるので、チェンスト【征服王の野望】は発動していない可能性が高いです。

7.鬼達の動向

九領の鬼達にも大きな差違があります。特に躊躇なのがトウカ、ハルアキの兄妹とズイハでしょうか。
兄妹が和解した一件とズイハとの初顔合わせは九領外伝【魔鬼動乱篇】になります。
この戦いが発生した時期は割と明確で、王都の戦いを終えて外海に出るまでの期間と推測出来ます。

・黒の王との戦いが終わっていることが分かります。

一方黒騎士の時間軸ではズイハは既に第三領を掌握。
トウカ、ハルアキ兄妹も和解が済んでいます。
ヨシツグもインドウ、バリキ、サコンに加え、本編での絡みが(当時)少ないヨシカゲまでいます。

細かい所ではボクデン翁もそうですかね。
ツル姫に請われて客員として第九領に留まったのも外伝の時ですが、黒騎士の時間軸では既に客員として迎え入れられています。他にもアニメ版ではトウカ、ハルアキがシュザの元にいる上に何故かシドウ(※)まで臣下にいます。

(※)本編では先代筆頭ゲンリュウサイ配下。

8.健在アリーチェの両親

 黒騎士伝にはアリーチェの両親が出てきます。
黒の王討伐から黒の根源が消滅するまでの間にアリーチェの住む村が壊滅した可能性も否定出来ませんが、その期間は長くて一年程度。そんな短期間にアリーチェがエステラと出会い親友になって事故が発生する。
というのは流石に慌ただしいですね。そもそも無知な少女を一端の魔法使いに仕立てる研究が一朝一夕に仕上がること自体無理があります。

以上の点から本編におけるアリーチェの両親が亡くなった時期は黒騎士伝の時間軸より前であることが推察されます。

9.兎耳族長トリリカ

黒騎士とは接点のないケ者の大陸にも差違があります。兎耳族の長ラヴィヴィサが黒の軍勢に怯えて大陸を飛び出した点は共通なのですが、黒騎士の時間軸ではトリリカが既に族長に就任しています。

一方本編では魔神スクロロンの一件で山を降りてきた虎牙族長ズィガガとトリリカが顔合わせをしていません。族長誰も新族長の話題を出していないことから、彼女が新族長に就任したのは黒の根源消滅より後であることが推察されます。

10.リヴェラの仲間達

黒騎士の時間軸ではリヴェラ、ガラクスィアス(以下ガラク)、シーターの3人が年代記の大陸にいます。
リヴェラ伝準拠であれば王都の戦いの時点でシェキナを除く仲間達(※)と行動を共にしている筈なのですが、作中に出番がないので途中で置いてきたのかもしれません。

(※)リヴェラの仲間達
イシュチェル、ガラク、ギュネス、グール=ヴール、クライド、シーター、シェキナ、フィシ、ペレキュデス、ミンミ、レンレ。三部以降は骸骨組やセレン等も加わる。

11.ヘリオス達の村

シュレーミアのキャラクエによればヘリオス達の故郷が壊滅したのは黒の根源が倒れた前後になりますが、本来は義勇軍が黒の王に敗れた前後に壊滅する筈なのですよね。あまりに時期が遅れたせいで気になる点もありますが、それはいずれ機会があれば解説します。

5.まとめ

 以上が黒騎士が歩んだ旅路との差違になります。
更に細かい点を列挙すれば、魔神の動向が不明。
コラボキャラはユグドを訪れていない。海風の方舟は竣工したのか? なんてのもあります。

黒騎士の世界は確かに滅びました。
二つの世界の運命を左右した大きな要因は賢者の塔での決断に始まり、円卓会議が決め手となりました。
ここまで触れた全てが直接的に影響したとは言えませんが、少なくともピリカ、フィーナがいなければ黒の王に勝利することは困難でしたし、黒騎士、リヴェラ、ガラクがいなければ黒の根源を消滅させることは出来ませんでした。

世界の敵にならなかったユニ、アリーチェの両親やヘリオスの村が襲われた時期、アニメでは魔神化したブルクハルト等、それぞれの世界線で助かった人がいる一方、別の世界線では救われない人もいる事実。
全ての人々を救うことは事実上不可能なのでしょう。
そういう意味ではチェンクロで集まる仲間達は世界に選別され選ばれた精鋭なのかもしれませんね。

黒騎士の世界はクロニクルと共に消滅しましたが、黒騎士もエイレヌスもまだ残留思念らしきものが残っています(※)。
白の預言者が時間を巻き戻した(別の世界線に飛んだ?)ことで未来の可能性も常に不可分とは限らなくなりました。アニメ版の世界線も必ずしも本編に合流するとは限りません。世界は常に変化を繰り返しています。

私はここまで黒騎士と主人公の歴史的差違を検証してきましたが、ひょっとすると本編で発生する展開の矛盾もチェンクラーの知らぬ間に世界線が書き換えられているからかもしれません。

(※)第2部でエイレヌスが消滅するシーンがありますが、あれは黒騎士のクロニクルに記された過去世界のエイレヌスになります。


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