週刊ユグド通信Vol.82『二人の姫の運命の分岐点』
チェンクロ第4部ifの世界はユグド世界と似て非なるユグド大陸が舞台となりました。その中でも鬼達の住む『炎の九領』を統べる筆頭はユグド世界では末席の領主に過ぎなかったツル姫になります。今回は全く異なる運命を辿った二人の運命の分岐点を考察したいと思います。
1.二人のツル姫
二人のツル姫は筆頭と第九領主という立場以外にも多くの差異があります。(ここからは便宜上ifツル姫をif姫と呼びます)if姫はツル姫より少し大人で剣術に関しては雲泥の差、更に性格も情け容赦なく高圧的ながら家臣や領民に対する気遣いは双方共通しています。if姫にシュザのような野心はないものの下克上を狙う輩や敵討ちは跡を絶ちません。
2.太宰御前試合と筆頭奪取
if世界の九領にもかつてはシュザ、ヨシツグといった名うての鬼達が君臨していました。しかし彼等は太宰御前試合(※)に敗れ亡くなります。これは幾多の輪廻を繰り返したユグド世界でもかなり特異な展開。同じif世界でも九領以外の世界線出身者は一様に筆頭はシュザだと明言しています。では何故にif世界の筆頭はツル姫となったのでしょうか?
(※)太宰御前試合とは?
第一領の火山『単』の噴火を合図に実施される筆頭争奪戦。第四領(if世界では現在第五領)にある火中の祠に領主達の軍勢が集結しトーナメント方式で覇を競い優勝した領主が新たな筆頭と第一領主を襲名。(他の領主は家格が一段下がる)大将の首を取ること自体は必須ではありませんが油断すれば領主と言えど例外なく討ち取られます。
3.奪われたものを奪い返す
if本編では筆頭になった経緯についてはあまり多くを語りませんが、if姫のキャラクエではそこら辺の経緯が回想で振り返られます。当時まだ10歳前後だったであろうif姫の母チドリは病を押して戦場に立ちシュザの軍勢に敗れました。if姫にとってシュザを討つことは母の敵討ちでもあったのです。
とまあこれだけの経緯ならウチが考察する余地なんて皆無なんですが、ことはそこまで単純ではないのですよ。それを次項から解説します。
4.ツル姫の両親との思い出
ツル姫は母チドリのことを何処まで覚えているでしょうか? 作中ではかなり幼い頃に亡くなったそうなのでチドリの姿を見てもピンとは来ず『剣士殿』と呼んでいました(このチドリは亡くなる十年くらい前の姿(※1)なので無理もありませんけど)。かといって全く記憶にない訳でもないようでチドリやリフレットのキャラクエでは母の思い出話を語っています。
(※1)全盛期のチドリ
縁の魔神ラザニルよって黒の因子に魂を吸着させる形で甦ったチドリ。結婚前で病も患っておらず第一領の連合軍を退けた当時の姿を再現しています。
では父親はどうでしょう。ツル姫の父親である先代第九領主も病で亡くなっています。時期は明言されていませんが第一部時点でツル姫は領主としての地位を確立していることから黒の軍勢がユグドに侵攻を開始した前後に亡くなったものと思われます。(それ以上前だとさすがに姫が幼すぎます)少なくとも亡くなる数年前までは彼女を肩車するくらいには元気だったようなので急激に病状が悪化したのでしょうね。
一方でif姫の両親はどうだったのでしょうか。
if姫のキャラクエで父親は彼女が幼い頃に亡くなりチドリが領主代行(※2)を務めている描写があります。そして剣の稽古もつけてくれた母チドリは彼女が十歳前後の頃に戦で討ち死にしてしまいました。すなわちツル姫は母をif姫は父を早くに亡くしています。これが二人の運命を分けるターニングポイントだと考えています。
(※2)姫と呼ばれても領主代行
チドリの家柄についての言及は作中ありませんが結婚前から『第九領の鬼姫』と呼ばれていることから領主の遠縁に当たる家系であることが窺えます。結婚前は第九領の侍大将を務めた経験もあることから他領からの輿入れの可能性も低そうです。
5.第九領の窮地
元々第九領は決して裕福な土地ではありませんでしたがツル姫が領主になった頃は正にどん底。領民は日々の食事にも事欠く有り様。更に野盗やら野武士やら魔物やらの襲撃も後をたたない。逆に言えば領主級が戦を仕掛けて得られるものはないのですよね(※)。
一方のif第九領は病に伏せるとはいえチドリの手腕もあり経済状態はそこまで悪くない印象。シュザが第九領を狙う経済的メリットはあるでしょう。しかしチドリを討った後に第九領の占領に動いていないようなので目的はチドリ一人だったのかもしれません。では何故シュザは病で余命僅かなチドリを討ったのか? これがif姫の運命を決定付けたのではないでしょうか。
(※)隣国は九領を狙わない?
当時の第三領は内乱状態。第四領は鎖国。第八領は中立。わざわざ貧困状態の第九領を狙いません。逆に「弱い第九領なら乗っ取れる」と天下取りを狙う野武士や地侍にとっては格好の獲物だったでしょうけど。
6.勝たなければならなかった
シュザがチドリに執着した理由は一先ず置いておいて母を失ったif姫は隠れ家で剣術を磨き雌伏の時を待ちました。その成果が太宰御前試合で結実しますが、シュザが第九領の占領に執着しない(その気があれば密偵、忍びを用いてif姫の暗殺も可能であったにも関わらず放置した)のならif姫が隠れたのは警戒過剰だったのでしょうか? そんなことはないでしょう。シュザ自身は気にも止めなかったかもしれませんが、領主代行のチドリが亡くなった混乱に乗じて次期当主を亡きものにしようとする輩は領外から湧いてくるでしょう。だからif姫にとっては敵討ちは勿論のこと自身と民を守る為にも強くならねばなりませんでした。
一方ユグド世界のツル姫は母から剣術を学べなかった代わりに父や側近から領主としての心得を学んだのでしょうね。それでも先代が亡くなったことでの軍事力の衰退は止められなかったと思われます。
ここまで弱いと戦を仕掛ることも恥と見なされそうですが、あまりに弱すぎて野武士や野盗には狙われていました。それと平時に図に乗って第九領相手に大軍を動かせばシュザやヨシツグに国を盗られるかもしれません。
7.シュザがチドリに執着した理由
シュザが何を思ってチドリを討ったのか実際の何処は定かではありませんが理由は幾つか考えられます。
1.唯一ゲンリュウサイを破った鬼
シュザが筆頭として君臨するまで数十年の間『炎の九領』を支配した歴代でも指折りの実力者だったゲンリュウサイを一度とはいえ完膚なきまでに叩きのめした第九領の鬼姫チドリを討つことで名実共に最強の称号が欲しかったかもしれません。
2.最初にして最後の機会
九領最強を誇ったゲンリュウサイを破った唯一の鬼とはいえ、シュザが筆頭の座を得た頃には病で余命幾ばくもないチドリ。最強を超える者と戦う機会は今しかないと判断した可能性。
3.最強を屠る機会は見逃せない
チドリは不治の病に侵されてはいましたが、シュザにとっては数少ない脅威を屠るまたとない機会と判断した。すなわち倒せる脅威は倒せる内に倒す好機と見た可能性。
以上三点がシュザがチドリを討った理由として考えられます。結果としてシュザの目論見すら凌駕する鬼姫を超える筆頭が誕生する運びとなりましたけど。
8.まとめ
if世界では父親の代わりに母チドリが成長を見守った結果、チドリはシュザに狙われ命を落としif姫は母の敵討ちと有象無象から身を守るべく母の残した技を磨き雌伏の時を過ごすこととなります。その末に仇であるシュザを討ち倒し筆頭の座に君臨してしまったが故にかつて母が望み自身が目指した理想郷作りは形を変えざるを得なくなりました。後悔はないと彼女は言うでしょうけど自身が辿り着けなかったもう一人の未来を少し眩しく感じているかもしれませんね。
今回は以上となります。
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