ぼくには未来を予知する力がある。
ぼくには未来を予知する力がある。
なんていうとちょっと大げさだけど、よく勘が当たるというか、第六感が鋭いというか、少し先の未来がぼんやりと見えてくることがある。
弟が中型バイクの免許を取ったとき、バイクのカタログを見ながらにこにこしている弟を見て、ぼくの頭には彼が事故を起こすイメージが湧いてきた。どんな事故を起こすのかまでは分からなかったんだけど、怪我をして、手術を受けるイメージが浮かんだんだ。
最初にそのイメージが浮かんでから3ヶ月くらいたったころだったかしら。雪が降っているなか、校則違反だけど、隠れてバイクで学校に行った弟が、単独事故を起こした。すべって転んだってわけだ。
弟はどっちだったか、足の骨を折り、手術をすることになった。
他にも、誰かは分からないけど「誰かが入院する」というイメージが浮かんできたこともあった。そのイメージは日に日に強くなっていって、ぼくはそのイメージのせいで眠れなくなった。
すると、父が倒れたのだ。風邪をこじらせて起こった筋膜炎ということで、一時的に集中治療室に入ったらしい。
誰かが死んでしまうイメージ、というのも、浮かんできたことがあった。誰かが死んでしまうというのに、そのイメージはあんまり強くはなかった。その数週間後だったか、うちで飼っていた猫が死んだ。
ぼくの「イメージ」は現実になりやすい。
では、ぼく自身に対するイメージはどうだろう。
どんなにふんばっても、自分が働いている姿を想像することができない。自分が他人と心から笑いあっている姿も、ひとりでどこか遠くへお出かけをしている姿も、想像することができない。
ぼくの頭の中にある自分のイメージは、骨と皮だけ、という具合にやせ細り、糸のような白髪がぼさぼさになっていて、むすっと、怒っているような、ふてくされているような表情をしたまま、地べたにあぐらをかいている姿だ。
作り話のように感じるかもしれないけど、本当に、毎朝、毎晩、ふとしたときにこのイメージが頭の中いっぱいに広がるんだ。
ぼくはじじいになっても死ねないらしい。