アカシックレコード〜夜のボート〜

華やか夜の場所。
私は赤い着物を着てそっと外を眺めている。

満月の日。
この日は彼が来てくれる。
彼を思うと懐かしさと温かさに包まれる。

「優妃(ゆうり)」って優しく囁いてくれる。

身体を重ねる場所だからことを済ませるが目的だったと思っていたが、彼は私に外の世界のことを教えてくれる。

一度で良いから彼と外の世界を歩いてみたい。

そんな思いを懐きながらこの日を待つ。


彼が来た。
今日も外の話をしてくれる。

本当は素直に甘えたい「ずっと会えるの待ってた」って言いたい。

そんな素振りを見せず彼に対応するが、彼は私の心の中を気付いているようで、私の態度や言葉にも笑っている。

そんな生活が何年も続いた。

ある日私は身請けされることが決まった。

彼にもそっとそのことを伝えた。

本当は別れたくない。彼と一緒にどこか遠くに行ってしまいたい。

彼は下を向いて黙っている。

身請けされる前日の夜彼が来てくれた。

姐さんたちが私に白無垢を着せてくれた。

そして、彼と私の絵画を描いてくれた。

「優妃(ゆうり)、来世で必ず一緒になろう。
必ず見つけ出すから」

と言われ私たちは別れた。

実は私には子どもがいた。
堕胎することには抵抗はないが、どうしてもこの子だけは産みたかった。
なぜなら彼の子の可能性が高いから…

身請けが決まり、存在が分かり黙っていたがこの子を静かに産みその場に置いて来た。
鳴き声が産声が、私を呼び止める声に聞えた。

振り切るように私は去っていた。

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