「幻視探偵 -笹嘉神島の殺人-」用語集(Kiramune Presents READING LIVE 2024)


クローズド・サークル

何らかの事情で外界との往来・通信が途絶された状況を指すミステリー用語。
後述する「そして誰もいなくなった」(And Then There Were None)も、クローズド・サークルミステリーの代表として知られる。
起源は諸説あるが、日本では「月光ゲーム」(有栖川有栖・作、1989年)の中で使われたことが普及のきっかけとされる。

見立て殺人

伝承や童謡など特定のものに見立てて、死体や発見現場を犯人によって装飾されている殺人事件のこと。
本作では笹嘉神島の鬼(笹鬼)の伝承や、人型に準えた瓶子を被害者に見立てて順番に破壊していく連続殺人が発生する。

酒呑童子

大江山(丹波国と丹後国の境、現在の京都府内)に住んでいたとされる鬼の頭領または盗賊の頭目。
酒好きなことで知られるため手下から酒呑童子と呼ばれていた。
伝承では源頼光とその配下、渡辺綱により太刀で首を切断され退治されたとされる。

実醪(みむろ)

醸造してまだ粕を漉していない状態の酒を醪(もろみ)と呼ぶ。
奈良県桜井市・三輪は日本書紀に"酒造り発祥の地"と綴られており、三輪にある日本最古の神社・大神(おおみわ)神社は本殿を持たず、三輪山(みわやま)をご神体として祀っている。
この三輪山が古来から「三諸山(みむろやま)」と呼ばれていること、 三輪山の「杉」には神様が宿るとされていることから、酒の神様として信仰する中で「酒のもと」が「実醪(みむろ)」と呼ばれるようになった。
三輪で唯一現存する酒蔵、「今西酒造」では「三諸杉(みむろすぎ)」(奈良県内のみで流通する創業時からの銘柄)、「みむろ杉」(日本各地や海外で販売される銘柄)などを代表銘柄している。

また「御室(みむろ、おむろ)」が「御諸(みもろ)」(神が降臨して依り付くところ。鏡をかけて神をまつる神座や、木・山・神社など)を指すこともあることから、本作の「ミムロビト」は神域での忌籠もりの対象者(御室人)を、「ミムロイリ」は忌籠もりの開始(御室入り)を意味していると思われる。

忌籠もり(いご-)

神事の前に、けがれに触れないように家に籠ること。「斎籠もり(いごもり)」、「いみごもり」とも。

宮司(ぐうじ)

神職や巫女をまとめる神社の責任者の役職。

神域(しんいき)

神が降臨して依り付くところ(依り代)。
沖ノ鳥島が社(やしろ)だけでなく、森を含む島全体が神域で禁足地となっていることが有名。

宮座(みやざ)

神社祭礼の執行を、地域の特権的な家の者が独占的に行うこと。
頭屋(とうや)制とも呼ぶ。
「宮座」の呼称は主に西日本、特に近畿地方で使われており、対して東日本では特定の「総本家」が主宰する事例が多い。

本作では、島の4つの家が宮座として島を統治している。

  • 葦原家

  • 笹倉家

  • 東洞家

  • 上名木家

鏡開きの儀

「鏡」は円満を、「開く」は末広がりを意味し、行事始めの儀式の一つ。
酒樽の上蓋を鏡と呼んでいたことから、酒樽の蓋を開く神事を「鏡開き」を呼ぶようになった。
神事を営む際の神饌(しんせん)に日本酒を御神酒としてお供えするが、御神酒が樽で供えられた際には、祈願のあとに樽の蓋(鏡)を開いて酒を振舞う。
神饌には神様が宿るところと考えられており、鏡を開くことで神様をお送りし、霊の宿った御神酒をいただくことでご利益があるとされている。

正月に年神様(元旦に家々に訪れ、一年の守護を統べる来訪神)に供えた鏡餅を、1月11日に割って食べる風習も「鏡開き」と呼ばれる。

御神酒(おみき)

神社や神棚でお供えする神饌(しんせん、神前に供えるお酒や食べ物)の一つ。
神事の際、神前にお供えするときは「ごしんしゅ」、その後に参列者に振舞われるときは「おみき」と呼ぶ説もある。

ミムロビト

笹嘉神島の神事・忌籠もりの参加者。
宮司(巫女や禰宜(ねぎ)を含む神職(しんしょく)を統括する役職)と巫女(神事に奉仕して神職を補佐する女性)が対象だが、上名木月子の死後(8年前)から巫女は不在のため、現在は宮司のみが参加している。

杜氏(とうじ)

日本酒の醸造工程を行う職人・集団の最高責任者。とじ、とも。

蔵人(くらびと)

杜氏の指示のもと、酒造りに携わる職人。

警部

警察署の各課長、県警察本部の課長補佐にあたる。警察官全体の人数比約6%。
「相棒」の杉下右京、「ルパン三世」の銭形幸一、「名探偵コナン」の目暮十三の役職。

瓶子(へいじ)

御神酒を入れる器、徳利(とっくり)。

生活反応

生きている人間、動物の身体組織のみに発生する変化。
本作では、葦原天水の死体の損傷(ナイフによる刺し傷)が生存中のものかどうかを確認した(死後に刺されたものと判断)。

「そして誰もいなくなった」(And Then There Were None)

アガサ・クリスティーが1939年に発表した長編推理小説。
「絶海の孤島」を舞台にした「クローズド・サークル」の代表作であり、「見立て殺人」の代表作でもある。
世界中で1億冊以上出版されており、ミステリー作品で最も販売冊数が多い。
孤島を舞台に10人の登場人物が、部屋に飾られていた童謡「十人の小さな兵隊さん」(Ten Little Soldier Boys)の詩になぞらえて殺されていき、10人全員が死亡することで題名通り「そして誰もいなくなった」という事態に陥る。

明治26年10月14日

実際の気象記録でも、明治26年(1893年)10月10日~16日にかけて、九州、中国、四国から北陸にかけての広い範囲で台風2号の被害があったとされている。

「今晩俺は自分の部屋で寝させてもらうぞ。寝首をかかれるのはゴメンだ。」

死亡フラグ(Marked For Death (MFD))の一種。
クローズド・サークルミステリーで「こんなところにいられるか、俺は部屋に戻る」と言えば、翌朝に次の犠牲者として発見される…というのがお約束である。

網元(あみもと)

漁網や漁船を所有する漁業経営者のこと。