「幻視探偵 -笹嘉神島の殺人-」小ネタ(Kiramune Presents READING LIVE 2024)
タイトルロゴ
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「殺人」の部分だけシャドウで文字が二重になっており、2個所(陽ノ神域と月ノ神域)で殺人が行われている事を示唆している。
キャラクターのネーミング
前作「密室の中の亡霊」の登場人物の命名には規則性があったが、前作と比較して全面には出ていないものの、本作にも含みを持たせた命名が視られる。
上名木(かみなぎ)
巫女は「かんなぎ」とも読み、神意を招請するという意味の「神招(かみまね)ぎ」が語源であるとされている。上名木陽奈子(かみなぎ・ひなこ)
宮座の四家のひとつ「上名木(かみなぎ)」に生まれた双子の巫女の一人。双子のもう一人は「月子(つきこ)」(兄妹か姉弟かは語られていない)。
海難事故を装い笹嘉神島から本土に移住した際に「木梨旭(きなし・あきら)」に改名している。
笹嘉神島伝承の巫女の名前から「陽奈子」、「月子」と名付けられているが、「陽奈子」は改名後も朝日を示す「旭」を名乗っている。
苗字に関しては「上名木→上の名(=苗字)を失くす→木無し(木梨)」の連想ではないかと思われる。
人物相関図
「(龍之介は)ワシらに似ずにすんだ男前」
笹倉流清のセリフ。
単なる世間話のように聞こえるが、悍ましい真実が明らかになった後では「笹倉浪清と龍之介は似ていない=実の父親が別にいる(性的集団暴行の末に生まれた子)」という意味にもとれる。
斗真藍莉が月ノ神域の訪問を許された理由
忌籠もり直前の訪問を許されたのは理由
葦原天水が、斗真藍莉=上名木月子の真偽を自身の目で確認するため。
本島ではなく神域に移動した後のタイミングになったのは、湧水が手をまわしたと考えるのが妥当か。
月ノ神域に連れ出した理由
忌籠もり参加者全員と会っている証人にするため(=上名木旭の参加を秘匿するため)の湧水の策略。
および、因習を白日の元に晒すための探偵役も期待してのことか。
「月ノ神域」を「陽ノ神域」と偽った理由
これには不明瞭な点が多い。
まず(単に「神域」と言えば良いところを)わざわざ「陽ノ神域」と説明したのが笹倉流清であること。
彼は上名木旭本人が自白するまで、「上名木家の人間である事」、「忌籠もりに参加している事」、「連続殺人を企てている事」のいずれも知らない。「連れて行ったのが「月ノ神域」である事」は、参加者の顔触れから分かっている(=湧水に欺かれて月ノ神域に連れて行かれた訳ではない)。
(「陽ノ神域」に行くと思い込み発言したが、湧水に連れられ神域に着いた後で、顔触れをみて初めて「月ノ神域」であることを理解した、という可能性もゼロではないが、この時点の流清と湧水のパワーバランス(湧水が猫を被っている)で、湧水がそういった作を弄するとは考えにくい。)
島の地理に明るいであろう上名木陽奈子が本人なら、「月ノ神域」を「陽ノ神域」として誘導すれば違和感を覚えるであろうから、本人確認のためにカマをかけた、というところであろうか。
警察官である木梨旭が動きやすいように、殺人の順番を「陽ノ神域」→「月ノ神域」にする必要(夜間に祈祷する「月ノ神域」の方が警官との二重生活を送りやすい)があるため、斗真藍莉が「月ノ神域」に行っている間に「陽ノ神域」では上名木旭が既に殺人を犯していた?そして翌朝以降になんらかの捜査が始まった時には(島外民は神域が2つある事を知らないので)、探偵役(湧水の想定では藍莉、実際は玄十朗)がなんの疑問も持たずに「陽ノ神域」のみを調べることになる?
そこまで深い理由ではないとすれば、神社に「笹葉神社」という名前があるように、神事で訪れる無人小島には「陽ノ神域」という名前がある(それこそ船内の観光パンフレットに載っているくらいの知識)でしかないのかもしれない。
(斗真藍莉が、神域が2つある前提で考えて、初めて「陽ノ神域」に対して「月ノ神域」があってもおかしくない、という考えに至ったので)。
流清も流のに「神域が2個所あり、忌籠もりが同時に行われている事」は知っているので、隠匿すべき酒蔵がある「月ノ神域」の名前を出さないために、「笹嘉神島の聖域=陽ノ神域」として説明したのではないか。
上名木旭の計画と葦原湧水の計画
上名木旭、葦原湧水の元々の計画はおそらく以下の内容
斗真藍莉に探偵役に立て、笹嘉神島の因習を世間に公表
因習の元凶である宮司・葦原天水の殺害(宮座のうち旧時代の考え方を持っているのはおそらく葦原家のみ。笹倉家・東洞家は古い慣習は辞めたいと考えているものの、家の力関係でなすことが出来ない)
上記に加え、上名木旭の計画
連続殺人にすることで残った忌籠もり参加者同志を疑心暗鬼にさせ、上名木月子の不審死の真相を吐かせる
忌籠もり参加者全員の殺害
計画外(不慮の事象)
葦原天水の事故死(これにより上名木旭)
玄十朗から見た事件のあらまし
玄十朗が捜査を開始した段階では、神域が2つあるという事実を知らないため、神域=陽ノ神域と思い込んでいる。
また忌籠もりの参加者"全員に"取材したという斗真藍莉の証言から、観客は「全員=上名木旭を含む五人」というミスリードを誘発している。
警部(殿)
前作のラストで暁玄十朗に「笹嘉神島」の事件を伝えた人物。
本作で警視庁(Metropolitan Police Department(MPD)、東京都の都道府県警察)所属であること、斗真藍莉とも面識があることが判明した。
本作の舞台は架空の有人離島・笹嘉神島だが、警視庁所属の警部の管轄外と語られているため、東京都以外である。岡山弁の方言指導が入っていることから、瀬戸内海に浮かぶ島である可能性が高い。
「平成の名探偵」
暁玄十朗の自称。
"令和"ではなく"平成"な理由は、劇中設定が令和元年であるから。
前作「密室の中の亡霊」の冒頭、摂理が凶弾に倒れた後に「1年後、令和元年」のテロップが入る。
令和元年は2019年5月1日からで、本作「笹賀神島の殺人」の玄十朗初登場シーンが同年10月5日であることから、令和に入ってからの約5ヶ月間は探偵業を休業していたことになる。
顔の分からない人物は幻視にどのように登場するか
暁玄十朗に「遺体の身元がすぐに判明し難い場合などは、幻視では芝居で役者が足りない時に役を兼ねるように、身近な友人や出会ったばかりの人間の姿を拝借する」と発言させることで、メタ的なリーディングライブでの"兼役"と錯覚させ、木梨巡査=上名木旭を結びつけないようにしている。
葦原天水の死体がナイフで刺されていたわけ
転倒し机に頭をぶつけた事による事故死であったが、他殺(ナイフを持った犯人と争った末に倒されて転倒、とどめにナイフを刺された)に見せかけるため。
当初計画通りの、閉鎖空間での連続殺人であると忌籠もり参加者に思い込ませ、上名木月子の不審死について自白を促したり、参加者同士の疑心暗鬼を誘発し共倒れさせることが目的。
「島を離れて本土の家に引き取られたとき、半身を裂かれるような気持ちになった」
双子の上名木陽奈子と上名木月子が生き別れになることと、巫女が悪漢に引き裂かれる伝承を準えた表現。
病で忌籠もりへの参加を取り止めた人間がいた
島民は上名木家のせいで笹神様の祟りが起こったと考えているが、宮座の人間は忌籠もりの実態を知っており、厄介者と謗られようとも、因習を止めたいと行動に移したのが上名木家であったということ。
「探偵には糖分と休息が必要」
Aチーム斗真摂理役・吉野裕行の「妹も言いそう」というアイディアから生まれた。
「探偵には糖分と休息が必要」
→コンビニ袋(あんぱん(ドーナツ))を下げて宿に帰る
→幻視(と藍莉が理解した)の摂理と玄十朗の会話を聞いてしまい渡せず仕舞い
→エピローグで手渡し
「月ノ神域」を「陽ノ神域」と偽った理由
10月2日、笹倉町長と湧水が斗真藍莉を連れて行ったのは「月ノ神域」であったが、笹倉は「あそこが陽ノ神域です」と伝えている。
笹倉町長と湧水はなぜ「月ノ神域」を「陽ノ神域」と偽ったのか。
冒頭の木梨巡査から聴き込みするシーン
初見は尺の短縮のために脚本から削ったシーンなのかと思ったけど、今思うと「犯人が探偵役に話す情報量を意図的に減らしている(龍之介と湊に双子の兄弟がいること)」アンフェアさを朗読劇ならではの演出で隠してたんだな、と。
(ミステリー小説ではこれは出来ないから)
「また、すぐにお会いすることになるでしょう」
玄十朗が湧水に言ったセリフ。
湧水に詰めに行った時、玄十朗が「またすぐにお会いすることになる」って言ったのは、エンディングで「(島に残って)蔵に閉じ込めた(?)人物を探す(調査を継続する)」って言ったのに繋がってる?
それとも今後の作品で別の事件の黒幕としても湧水を出すこと(=続編構想あり)を示唆してる?
「月子さんが生きていたら」
藍莉のセリフ。
藍莉が死者の言葉を語るな!と…激昂した後に、木梨に対して「月子さんが生きていたらこう言うはず」という文脈で説得を試みるからこそ重いのよね
人の亡骸を元にした酒造
一般的な「猿酒」(猿が木の洞に隠した果実が発酵してできる酒)とは別に、「猿酒」(猿女君(さるめのきみ)、女ノ君(めのきみ)とも)という逸話がある。
作中の時系列
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\begin{array}{lll|l|l}\hline
2019年 & (令和元年) & 10月2日(水) & 斗真藍莉が笹嘉神島を訪れる & 劇中テロップ \\ \hline
& & & 笹嘉神島(離島)で殺人事件が発生。暁玄十朗に調査が依頼される & 再演時の追加エピソード \\ \hline
\end{array}
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